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【福島区の税理士が解説】一口馬主の配当は税金がかかる?確定申告の要不要と経費の仕組み

最終更新日:2026年10月8日
岡田健志(公認会計士・税理士)

結論:一般的な匿名組合契約型の一口馬主では、個人会員への利益分配は原則として「雑所得」です。受取額には出資金の返戻が含まれるため、入金額の全額が課税対象になるわけではありません。確定申告の要否は、給与や他の所得も含めて判定します。

源泉徴収税額が年間の所得税額等を上回れば、申告で還付を受けられる場合があります。ただし、雑所得の赤字を給与所得から差し引くことはできません。

年間資料を使った計算例を見る →

「趣味と実益を兼ねて一口馬主を始めてみたい」「配当金が入ったけれど、これって税金はどうなるの?」

一口馬主の税金は、銀行への入金額や、支払った金額だけでは判断できません。クラブの資料で利益分配額や出資金の返戻額を確認することが出発点です。

今回は、一人の競馬ファンであり、税理士でもある私の視点から解説します。以下は、日本国内に居住する個人が、一般的な匿名組合契約型の一口馬主クラブに出資する場合の説明です。法人での出資や、競走馬を直接所有する馬主の税務とは区別してください。

はじめに:私と競馬の出会い

本題に入る前に、少しだけ私の個人的な話をさせてください。 実は私は、昔からの競馬好きです。といっても、馬券は100円単位で細々と買うタイプで、ギャンブラーとしては底辺の部類に入るかもしれません(笑)。

きっかけは、私と同世代の方なら「あるある」かもしれませんが、中学〜高校時代に熱中したゲーム『ダービースタリオン(通称ダビスタ)』です。私が熱中した当時の活躍馬といえば、グラスワンダー、ステイゴールド、スペシャルウィーク、エルコンドルパサーなど(特に好きだったのはステイゴールドでした)。そこから数えると、もう競馬歴は27〜28年になるでしょうか。

当時はゲームの中で「自分の馬を育てる」ことに夢中になり、「将来は本当の馬主になりたい」なんて夢を見たものです。しかし大人になるにつれ、「馬主なんて一握りの大富豪しかなれない」と諦めていました。

そんな私が注目したのが、「一口馬主」という仕組みです。

一口馬主とは?税金との関係

一口馬主は、クラブを通じて競走馬に出資し、賞金などを原資とする分配を受ける仕組みです。一般的な匿名組合契約型では、会員自身が競走馬の所有者として馬主登録をするわけではありません。

愛馬の成長やレースを楽しめる一方、利益分配には税金が関わります。趣味であっても、契約と分配内容に沿って所得を計算し、申告が必要かどうかを確認します。

一口馬主にかかるお金と収入の仕組み

税金を理解するには、まずお金の流れを整理する必要があります。

支出(出ていくお金)

競走馬出資金:競走馬の取得に充てられる出資金です。

維持費等の出資金:飼葉代、厩舎預託料、保険料などに充てる負担です。支払額をそのまま会員個人の必要経費にできるとは限りません。

会費:クラブに支払う月会費などです。

収入(入ってくるお金)

  • 分配金(配当): レースの賞金や出走手当などが、口数に応じて分配されます。
  • 引退時精算金: 馬が引退する際、売却代金や保険金などが分配される場合があります。

「入ってきたお金」と「課税対象の収入」は同じではありません。分配金や引退時の精算金には、出資金を返す部分と利益を分配する部分があります。出資返戻金を利益分配額に含めず、クラブが交付する対象年分の申告資料で、利益分配額と必要経費等を確認します。

銀行への入金額から、その年に支払った出資金や維持費を全部差し引くだけでは、税務上の所得は求められません。

収入の税区分は「雑所得」が基本

匿名組合契約に基づき個人会員が受け取る利益分配は、原則として雑所得です。給与所得者かどうかだけで区分が決まるわけではありません。

所得税基本通達36・37共-21には、重要な業務執行の決定などに関わり、営業者と共同で経営している場合の例外があります。単に出資頭数や利益が多いという理由だけで、事業所得になるとはいえません。

根拠:国税庁・所得税基本通達36・37共-21(匿名組合契約等による利益の分配)

経費になるもの・ならないもの

税金を計算する際、収入から差し引ける「経費」の範囲を知っておくことは重要です。

経費として認められる主なもの

必要経費等は、クラブの契約と対象年分の申告資料に沿って確認します。たとえばキャロットクラブの案内では、一般会費、初年度の入会金、終了損失が挙げられています。

終了損失は、出資馬の運用終了時に残った未回収の出資金に関するもので、単に「その年の入出金が赤字だった額」ではありません。計上額や時期は、クラブの明細で確認してください。

参考:キャロットクラブ・確定申告のご案内

出資金と経費を混同しない

競走馬出資金や維持費出資金は、支払った年に全額を必要経費とするものではありません。クラブ側の損益計算や出資金の精算を経て、会員向けの申告資料に反映されます。

利益分配額の計算で既に反映されている費用を、会員側でも重ねて控除しないように注意します。複数クラブに出資している場合も、各クラブの申告資料を基に集計してください。

年間資料の見方・架空の計算例

振込額・所得・源泉徴収税額を分けて整理する

クラブから届く対象年分の申告資料で、利益分配額、必要経費等、会員本人の源泉徴収税額を確認します。次は、国内居住の個人が匿名組合契約型のクラブに出資する場合を想定した説明例です。

金額はすべて架空・単位は万円。2026年分を想定し、対象取引と計上時期が一致するものとして単純化しています。実在のクラブの書類・会費・運用実績ではありません。

資料から拾う4項目

年間資料の確認メモ(架空)

利益分配額源泉徴収される前の、収入金額
100万円
必要経費等別途控除できると確認した一般会費等
4万円
会員本人の源泉徴収税額必要経費とは別に整理する税額
20.42万円
出資返戻金利益分配額に含めない返戻部分
50万円

この例では、利益分配額100万円に対する源泉徴収税額を、100万円×20.42%=20.42万円と仮定しています。実際の申告では、年間合計に税率を掛け直すだけでなく、クラブの申告資料に記載された会員本人の税額を確認してください。

① 所得を計算する

利益分配額100万円
− 必要経費等4万円
= 所得金額96万円

② 振込額と照合する

利益分配額100万円
+ 出資返戻金50万円
− 源泉徴収税額20.42万円
= 振込額129.58万円

上の振込額は、会費等を別払いとし、相殺・手数料・未払額等がない場合の説明例です。実際にはクラブの計算期間や精算方法を確認し、銀行の年間入金合計から機械的に収入を決めないでください。

源泉徴収税額を、必要経費としてもう一度引かない

所得は100万円−4万円=96万円です。ここから源泉徴収税額20.42万円を差し引いて所得を計算するのではありません。源泉徴収税額は、他の所得や控除も含めて算出する年間の所得税等と精算します。20.42万円がそのまま全額還付されるとは限りません。

申告へ進む前の確認

  • 書類の年分と対象期間:支払調書、所得税申告資料、月次の分配・精算明細をそろえます。対象期間はクラブの案内と照合します。
  • 同じ金額を二重に足していないか:支払調書と申告資料が同じ利益分配を示している場合は、両方を足しません。複数クラブはクラブ別に整理します。
  • 費用と税額を重複控除していないか:利益分配額に既に反映された費用は重ねて引きません。JRA・クラブ法人段階の税額と、会員本人の源泉徴収税額も区別します。

終了損失がある場合は、上の会費等4万円に機械的に足さず、クラブ資料の必要経費等に含まれているかと、計上する年分を確認します。この例の所得96万円だけで最終的な税額・還付額は計算できません。申告の要否は次の第6節で、給与や他の所得と合わせて確認してください。

計算例の確認根拠(2026年10月8日):国税庁・所得税基本通達36・37共-21/国税庁・雑所得の計算/キャロットクラブ・確定申告に関するQ&A/G1サラブレッドクラブ・賞金等の分配方法/国税庁・還付申告

確定申告が必要なケース・不要なケース

では、具体的にどんな時に確定申告が必要なのでしょうか。

所得税の申告が不要になる条件

給与を1か所から受け取り、給与収入が年間2,000万円以下で、源泉徴収・年末調整が済んでいる方は、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が年間20万円以下であれば、原則として所得税の確定申告は不要です。一口馬主だけ、あるいは雑所得だけの金額では判定しません。

この合計が20万円を超える場合は、原則として確定申告が必要です。給与が複数ある方、自営業の方、同族会社の役員で会社から賃料等を受け取る方などは、別の条件も確認します。

20万円以下は「非課税」という意味ではありません。医療費控除や還付などのために確定申告をする場合には、20万円以下の一口馬主の所得も含めて申告します。

また、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要となる場合があります。所得税の確定申告をした場合は、原則として住民税の申告を別に行う必要はありません。

「今年は愛馬がG1を勝って大儲けした!」という年は要注意です。(G1勝利は夢物語ですが。。。)

参考:国税庁・給与所得者で確定申告が必要な人/同Q&A(少額の副収入と還付申告)/大阪市・市民税等のQ&A(申告に関すること)

源泉徴収と還付申告

一般的な一口馬主クラブでは、個人会員への分配のうち、出資返戻金を除いた利益分配額に対して20.42%の所得税・復興特別所得税が源泉徴収されます。受取額の全額に20.42%を掛けるわけではありません。

申告では、会員本人の申告資料に記載された源泉徴収税額を確認します。JRAやクラブ法人の段階で控除・精算された税額とは区別してください。

還付の有無は、他の所得や所得控除・税額控除も含めて年間の税額を計算し、源泉徴収税額等と比べて判断します。入出金が赤字だったことや、本業の税率が低いことだけでは、還付されるとは断定できません。

参考:G1サラブレッドクラブ・賞金のしくみと分配方法/国税庁・還付申告

注意!赤字でも「給与」とは相殺できない

雑所得の計算で損失が生じても、給与所得など他の種類の所得とは損益通算できません。同じ総合課税の雑所得の範囲内では、他の雑所得と合算して計算します。

ただし、申告分離課税となる先物取引等の雑所得とは通算できません。また、出資金の支払で手元資金が減ったことと、税務上の損失が生じたことは別です。

根拠:国税庁・雑所得/国税庁・損益通算

まとめ

一口馬主は、かつての私のように「馬主になりたい」という夢を叶えてくれる素晴らしい趣味です。 利益分配や必要経費を正しく把握し、ご自身の所得全体から申告の要否と税額を確認しましょう。源泉徴収税額等が年間の税額を上回る場合には、還付を受けられることもあります。

  • クラブから届く「精算書」は必ず保管する。
  • 年間トータルでプラスなのかマイナスなのかを把握する。

まずはここから始めてみてください。もし「今年の利益は大きくなりそうだ」「複数のクラブに入っていて計算が複雑だ」という場合は、お近くの税理士に相談することをお勧めします。 税金の不安を解消して、心置きなく愛馬の応援を楽しみましょう!

FAQ

一口馬主の利益は何所得になりますか?

一般的な匿名組合契約型の一口馬主では、個人会員への利益分配は原則として雑所得です。出資頭数や利益が多いだけで事業所得になるわけではありません。出資金の返戻は利益分配と区別します。

確定申告が必要なのは、いくらからですか?

給与1か所・年間給与収入2,000万円以下で源泉徴収・年末調整済みなどの条件を満たす場合、給与所得・退職所得以外の所得合計が20万円を超えると、原則として所得税の確定申告が必要です。医療費控除や還付などのために申告する場合は、20万円以下の一口馬主の所得も含めます。住民税の申告要否は別に確認してください。

一口馬主が赤字でも、申告したほうがよいですか?

入出金が赤字というだけでは判断できません。利益分配額、必要経費等、会員本人の源泉徴収税額を確認し、他の所得や控除も含めて年間の税額を計算します。源泉徴収税額等が年間の税額を上回れば還付を受けられる場合がありますが、雑所得の赤字を給与所得から差し引くことはできません。

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記事執筆者

岡田 健志

公認会計士・税理士

大阪国税局(国税調査官)勤務、Big4監査法人勤務を経て2024年大阪市福島区で独立開業。JR福島駅徒歩1分の事務所を拠点に、会計・税務のプロフェッショナルとして企業の成長を支援しています 。 「数字に強い経営者になりたい」「資金繰りの相談がしたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

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