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利益を伸ばすか、それとも節税するか?~経営者が持つべき視点~
経営者であれば、会社の利益を伸ばすことが最優先の課題になります。しかし、同時に税金の負担も気になり、節税対策を考えるのは当然のことです。税金は利益に対して課されるため、できるだけ効率的に節税し、手元に資金を残したいと考えるのは自然な流れでしょう。
しかし、「節税ありき」で考えてしまうと、かえって経営判断を誤る可能性があります。大切なのは、「利益を伸ばすこと」と「節税」のバランスを取ることです。本記事では、利益を最大化しつつ、適切な節税対策を講じるための経営者のマインドセットについて解説します。
節税とは経費を増やして利益を圧縮すること
節税とは、経費として認められる支出を活用し、会社の利益を圧縮することで法人税の負担を軽減することです。たとえば、会社の実効税率が30%だとすると、100万円の経費を計上すれば、30万円の税金が減る計算になります。
これは、一見すると非常に魅力的な方法に思えます。特に、決算前になると「このままだと税金をたくさん払わないといけない、何か経費を増やせないか?」と考える経営者も多いでしょう。しかし、ここで重要なのは、経費を使うこと自体が目的になってしまっている点です。
不要な支出を増やすことで節税したとしても、それはあくまで「お金を使って税金を減らしている」だけです。結果的に、手元に残るお金が減ってしまうケースもあります。
コストカットの重要性〜無駄な支出を減らせば利益が増える〜
一方で、利益を増やす方法のひとつとして「コストカット」があります。無駄な作業や不要な仕入れを減らすことで、直接的に利益が増える効果があります。
たとえば、100万円の無駄なコストを削減した場合、税金が30%増えたとしても、(1-30%)の70万円が手元に残ります。つまり、節税を目的に100万円を使うよりも、無駄な100万円を削減したほうが会社にとって有益ということになります。
この考え方は、特に中小企業やスタートアップにとって重要です。キャッシュフローが限られている中で、不必要な支出を増やして節税するよりも、まずは利益を最大化することを意識すべきです。
利益が出ない中小企業の共通点
経営者のマインドセットとして大切なのは、「節税のためにお金を使う」のではなく、「利益を増やしたうえで適切な節税をする」という順序で考えることです。
節税対策としての経費計上は、利益が出た後に考えるべきものです。利益を伸ばせば、事業の成長に必要な資金が確保できますし、投資の選択肢も広がります。
もちろん、適切な節税対策は必要です。例えば、以下のような方法は、利益を伸ばしながら税負担を軽減するのに有効です。
将来の成長に役立つ設備への投資は、利益を増やしながらの節税につながる
優秀な人材を確保することで、長期的に売上を伸ばしつつ、給与は費用となる
新商品開発等の研究開発にかかる支出は費用計上できるだけでなく、一定の要件を満たせば補助金や税額控除の対象となるケースもある
これらの方法は、単なる節税ではなく、将来の利益を生む投資としての意味も持っています。
「節税ありき」ではなく、長期的な成長を見据える
経営において重要なのは、「いかに税金を減らすか」ではなく、「いかに利益を最大化するか」です。節税ばかりに気を取られると、本来必要な投資や成長のチャンスを逃してしまうことになります。
・まずは無駄な支出を減らし、利益をしっかり確保する。
・その上で、将来の成長につながる形で節税対策を考える。
・この順序を意識することが、経営者としての適切な判断につながります。
まとめ
・節税は、経費を増やすことで税負担を減らすが、それ自体が目的になってはいけない
・コストカットによって無駄な支出を減らせば、税金が増えたとしても手元に多くの資金が残る
・利益を増やした上で、適切な節税対策を講じることが経営者にとって重要なマインドセット
短期的な節税に囚われず、長期的な視点で利益を伸ばし、会社を成長させることを意識しましょう。そうすることで、結果的に税負担も最適化され、より強い経営基盤を築くことができます。
岡田 健志
公認会計士・税理士
大阪国税局勤務、Big4監査法人勤務を経て2024年大阪市福島区で独立開業。