法人税務調査の準備調査とは?国税OBが解説する事前分析と企業の備え

税務調査

税務調査官は事前に何を調べる?準備調査と企業の備え|国税OB解説

調査当日より前の分析を知り、資料を整える

執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)

POINT

法人税務調査では、調査官が会社を訪問する前から、申告内容や事業の実態について確認する事項を整理しています。本記事では、このような事前の資料分析や確認を「準備調査」と呼び、国税での私の経験を踏まえて説明します。企業側が調査に備えて資料を用意することとは区別しています。

在職当時の情報管理や着眼点を、現在の全国一律の運用として示すものではありません。手続や質問検査等の範囲については、国税庁の公表資料を併せて紹介します。

調査の連絡を受けた方へ:税務調査対応・料金の案内

国税で経験した準備調査の着眼点

私が法人課税部門に所属していた当時は、申告書や決算書だけでなく、過去の調査からの引継ぎ事項や取引に関する資料を突き合わせ、調査で確かめる点を整理していました。売上除外や架空経費など、不正の端緒を意識する場面もありました。

ただし、分析上の違和感があることと、不正が認定されることは別です。国税庁の事務運営指針でも、疑問のある事項について納税者・税務代理人の説明や主張を聴き、証拠に基づき事実認定する方針が示されています。

国税庁・事務運営指針、第2章3(7)

準備調査で確認する情報と企業側の備え

以下では、情報の確認と企業側の備えを5つの視点から整理します。

申告書・決算書と過去の調査情報

私が在職していた頃は、申告書などを綴った「青表紙」や、過去の調査履歴・引継ぎ事項・資料情報をまとめた「税歴」を参照していました。ここでの呼称や管理方法は当時の経験です。現在のシステム、紙資料の利用状況、税務当局の保管年限を説明するものではありません。

確認の中心となるのは、売上や利益率の変動、特定の費用の増加、過去に指摘された処理の状況などです。企業側では、過年度との相違について、事業環境や契約・取引の変化を資料とともに説明できるようにしておきます。

法人と代表者との資金移動

代表者に関する情報は、法人の取引や資金の動きとの関係で確認対象になることがあります。国税庁FAQは、法人税調査で代表者の個人預金に事業関連性が疑われる場合、通帳の提示・提出を求めることがあると説明しています。私物だから一律に対象外になるわけではありません。

国税庁FAQ・問7

一方、私生活のすべてを無制限に調べられるという説明も適切ではありません。調査は必要性と私的利益の均衡を踏まえて行われるものです。

国税庁・事務運営指針、第1章

実務上は、役員貸付金・役員借入金、個人が立て替えた経費、法人と個人の口座間の入出金について、目的と精算状況を整理しておくことが重要です。

取引先資料や外部の情報

私の経験では、取引先の調査で把握された情報や、登記・公表情報などが、事業内容や取引実態を確認する手掛かりになることがありました。ただし、情報の一部だけで自社の申告内容が誤りと決まるわけではありません。

企業側では、契約、納品・役務提供、請求、入出金のつながりを確認します。ホームページに掲載しているサービスと実際の売上区分が異なる場合なども、その背景を説明できるようにしておきます。

国税当局に寄せられた情報

国税庁は、課税・徴収漏れに関する情報提供を受け付け、税務調査等に活用する場合があると案内しています。寄せられた情報が直ちに事実と認定されるという意味ではありません。

国税庁・情報提供の確認事項

本記事では、提供者の属性や動機を推測するのではなく、具体的な取引情報と帳簿・証憑が整合しているかという視点を重視します。

外観・営業実態の確認

在職当時の実務では、会社や店舗の外観、営業内容を確認し、申告上の事業内容との相違を検討することがありました。場合によっては、客として店舗を利用し、営業実態を確認する、いわゆる内偵が行われることもありました。すべての会社に同じ方法が取られるという説明ではありません。

例えば、飲食店の客単価や座席数、営業状況は売上水準を考える手掛かりになり得ます。ただし、一時点の観察だけで年間売上や人件費の適否を決められるものではありません。繁閑差、休業、値引き、従業員の勤務状況なども含め、帳簿や記録と照らし合わせる必要があります。

事前分析と、実地調査の手続は分けて考える

準備調査を「事前通知が終わってから初めて会社を調べる手順」と捉える必要はありません。事前の資料分析と、納税者に対して質問検査等を行う実地調査の手続は区別して考えます。

実地調査は原則として事前通知がありますが、法定の要件に該当すると通知せずに行われる場合もあります。また、実地調査で質問検査等を行う際には、身分証明書等と質問検査章を提示する扱いです。客としての営業実態の確認と、身分を明示して行う質問検査等を混同しないことが大切です。

国税庁・事務運営指針、第2章2・3(1)

企業側が整えておきたいもの

調査官が何を把握しているかを推測するよりも、自社の取引を資料に基づいて説明できる状態を整えることが、実務上の備えになります。

  • 申告書・決算書と総勘定元帳の対応を確認する。
  • 大きく増減した売上・経費や例外的な取引の理由を整理する。
  • 契約書、請求書、領収書、売上記録、入出金記録の保管場所を確認する。
  • 法人と代表者の資金移動、現金売上、個人立替の精算状況を確認する。
  • 税理士と社内の説明担当者を決め、不明な事項は資料を確認して回答する。

会計データや電子証憑も、内容を確認・提示できるようにしておきます。国税庁FAQは、電磁的記録の画面上での提示や、印刷・データによる提出を案内しています。提出対象・方法は担当者と確認します。

国税庁FAQ・問5(2026年7月改訂)

調査に合わせて事実と異なる説明を作ったり、資料を廃棄・改変したりするのではなく、疑問点や誤りが見つかった場合には、元の記録を保全した上で税理士と対応を検討します。

大阪で法人税務調査の事前準備・立会いをご検討の方へ

準備調査の視点を知ることは、企業側が説明資料を整える際にも役立ちます。ただし、資料を整備すれば調査対象にならない、指摘を受けないと保証するものではありません。

当事務所の支援内容と料金は、税務調査対応の専用ページをご確認ください。受任可否は日程、案件内容、利益相反の有無等を確認してご案内します。

法人税務調査の選定について読む

税務調査の基本的な流れと準備を確認する

更新日:2026年9月9日。一般的な情報提供を目的とした記事です。個別の税務判断は、事実関係・資料・適用法令を確認して行います。

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記事執筆者

岡田 健志

公認会計士・税理士

大阪国税局(国税調査官)勤務、Big4監査法人勤務を経て2024年大阪市福島区で独立開業。JR福島駅徒歩1分の事務所を拠点に、会計・税務のプロフェッショナルとして企業の成長を支援しています 。 「数字に強い経営者になりたい」「資金繰りの相談がしたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

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