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福島区の国税OB公認会計士・税理士が法人税務調査の実態と対応のポイントを解説~準備調査編~

はじめに

中小企業にとって税務調査は避けて通れない「試練」の一つです。前回の「選定編」では、調査対象企業の選ばれ方について解説しましたが、今回は「準備調査編」です。
対象会社の選定が終わった後、事前通知を行い、対象会社のアポイントが取れれば、税務調査官は対象会社の分析に移ります。実地調査に入るまでに、会社のことを徹底的に調べ上げます。
この記事では、税務調査官がどういった方法で準備調査を行うのか、元税務調査官の視点から解説します。

税務調査官の目線

税務調査官の業績評価は、前回の記事でも記載しましたが、「不正事案割合」となります。そのため、不正の端緒となるようなものがないかを徹底的に調べます。
申告書や決算書などの提出されている資料のみならず、前回調査からの引継ぎ情報、タレコミ情報、一般取引資料せん、登記簿、代表者個人の申告書等様々です。
また、対象会社の外観の確認や、飲食店やサービス業をされている会社の場合は店舗へ客を装って内偵調査も行います。

準備調査で用いる情報源と手法

税務調査官はさまざまな情報源を活用し、準備調査を行います。主なものは以下の通りです

申告書情報

申告書情報はKSKシステム(国税総合管理システム)に入力されています。まだまだ紙面での情報も多いので、紙面ファイルを見ながら情報をエクセルに打ち込んで分析します。

紙面ファイルは「青表紙」と「税歴」という2種類のものを主に用います。(※私が税務署にいた頃の話ですので、今は変わっているかもしれません)

「青表紙」は申告書が7年分綴ってあるファイルです。申告書は7年分しか保管されていませんが、設立届等の資料は永久調書なので、とても古いものが綴られていることがあります。

「税歴」は過去の調査履歴のサマリーや、引継ぎ情報、タレコミ情報、一般取引資料せんが挟まってあるファイルになります。重要な情報は税歴を見ることが多いです。

これの分析をもとにして、申告内容に矛盾や抜け漏れがないかを確認し、売上除外や架空経費の可能性を探ります。

代表者の個人情報

代表者に関する情報では、自宅や乗っている車、銀行口座、家族構成、交友関係、愛人、SNS等について確かめることがあります。

これらを把握することで、不審な金の流れや資金使途がないかを確認します。

外部情報の収集

他の機関や取引先からの情報提供、新聞報道、ネット上の口コミなども調査の材料となります。特に、他企業の調査で得た証拠や取引先情報は、有用なことが多いです。

タレコミ情報の確認

匿名のタレコミがあった場合、その内容を慎重に確認します。信憑性が高いと判断されれば、それに基づいた調査計画を立案します。

外観の偵察や内偵調査

事前に会社の周辺を観察し、申告書等の情報通りの業務を営んでいるかを確認することもあります。例えば、食品販売業としているのに、飲食店を併設している等なことがあれば、その飲食店の売上を除外していないかについて検討します。

また、場合によっては身分を隠し、客のふりをして内偵調査をすることもあります。

例えば飲食店であれば、客単価、座席数、回転率等より大体の売上水準を推定し、申告している売上と大幅に乖離していないかを確認します。また、従業員数を確認し、人件費が過大となっていないかをチェックします。
風俗店の場合は、複数の嬢に指名で何度か通い、実際に調査に入った時に、内偵時の売上が除外されていないかを確認します。また、嬢に対して経営者の人柄や、反社会的勢力との繋がりがないか、などをさりげなく聞き出します。

まとめ

税務調査官の準備調査は、調査全体の方向性を決める非常に重要なプロセスです。多様なデータや手法を駆使し、効率よく不正を見抜くための土台を構築しています。この準備段階を知ることで、企業側も「税務署がどのような点を重視しているのか」を把握することができ、適切な対応につながります。

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税務調査とは

記事執筆者

岡田 健志

公認会計士・税理士

大阪国税局勤務、Big4監査法人勤務を経て2024年大阪市福島区で独立開業。

 

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