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公認会計士と中小企業

はじめに

公認会計士というと、「大企業を相手に会計監査を行う専門家」というイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。また、中小企業にとっては「税務の相談は税理士に任せるもの」と考えられるケースが一般的です。そのため、中小企業の経営者にとって公認会計士は特に縁がないと考えられる方も多いかと思います。
しかし、実際には公認会計士も監査の過程で中小企業と関わることが少なくありません。特に大企業のグループ会社として中小企業が含まれる場合や、確認対象の取引先として関係がある場合があります。この記事では、公認会計士が監査の中で中小企業と関わる具体的なケースを挙げながら解説します。

※監査以外の公認会計士業務でも中小企業と関わるケースがありますが、この記事では公認会計士業務として一般的な監査にフォーカスして記述しています。

公認会計士監査の対象

まず、公認会計士がどのような企業を監査するのか、その対象について説明します。公認会計士による監査は、主に法律や規定に基づいて実施されます。監査証明が求められるケースは多岐に渡りますが、代表的なものは以下です。

金融商品取引法に基づく監査

上場企業など、有価証券報告書の提出義務を負う企業が対象となります。
通常、会社法に基づく監査も同時に求められます。

会社法に基づく監査

資本金が5億円以上、または負債総額が200億円以上の会社は会社法上の大会社となり、対象となります。これらは上場していない企業であっても、会社法上の大会社となれば該当します。

取引所の規定に基づく監査

一例として、IPO(株式上場)を目指す会社は、上場申請の直前々期(N-2期)から監査法人等による準金商法監査の監査証明が必要となります。

公認会計士が中小企業と関わる具体例

子会社往査

監査の対象となる企業の子会社には、中小企業が含まれるケースがあります。

例えば親会社が連結決算を組んでおり、連結決算書に対して監査証明を発行する場合、グループ監査の一環として子会社を監査の対象とすることがあります。

子会社に対する監査としては、フルスコープ監査が求められる場合から、特定の勘定科目の残高に対する監査が求められる場合、リスク評価目的として監査をする場合と様々です。

通常フルスコープ監査の対象となる会社は、その子会社単体で監査を受けているケースが多いので、親会社の監査チームとしては、子会社の監査チームにインストラクションを送付するだけで、直接子会社に数値を見に行くケースは少ないです。

一方特定の勘定科目の残高に対する監査が求められる会社や、リスク評価目的で選定される会社は、公認会計士が「子会社往査」として中小企業である子会社を訪問し、上記の監査目的に加えて、財務諸表のチェックや会計処理の妥当性、現物確認や概況ヒアリング、経理体制や業務フローの適切性まで検証します。

残高確認

残高確認とは、財務諸表に記載されている売掛金や買掛金、借入金などの残高が正確であるかを確認する手続きです。通常、大企業の監査の一環として行われるものですが、取引先に中小企業が含まれる場合があります。

ただ、あくまで確認状を送付して回答を得るだけになりますので、中小企業に深く関わるものではないです。

自己査定監査

自己査定監査とは、金融機関が保有する貸付金などの資産について、その区分判定が適切に行われているかを判断し、債権の評価が妥当であるかを確かめる監査業務です。主に金融機関を担当する監査チームが実施します。

貸付先の中小企業の財務状況や経営成績、ビジネス等さまざまな要素を勘案して、金融機関が判断した債権の評価の妥当性を検証します。

まとめ

公認会計士は大企業の専門家と思われがちですが、子会社往査、自己査定監査を通じて、中小企業と関わるケースも少なからずあります。

中小企業経営者にとって、公認会計士の知識と経験を活用することは、財務の透明性向上や業務改善、経営基盤の強化に直結する大きなメリットです。大企業と比べて経営リソースが限られている中小企業だからこそ、公認会計士のサポートが必要とされる場面は多いです。

中小企業が持続的に成長していくためには、財務の適正化と経営の健全化が不可欠です。公認会計士を積極的に活用し、経営基盤をしっかりと築くことが、成長への第一歩となるでしょう。

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記事執筆者

岡田 健志

公認会計士・税理士

大阪国税局勤務、Big4監査法人勤務を経て2024年大阪市福島区で独立開業。

 

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