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なぜ利益が出ない中小企業が多いのか?その理由と解決策

最終更新日:2026年10月5日
執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)

POINT

利益が思うように残らないときは、売上数量・販売単価・原価・固定費を順に確認すると、原因を整理しやすくなります。経営者や従業員の努力不足と決めつけず、まず数字の変化を確かめます。

この記事では、本業の採算を表す営業利益を中心に、確認する資料と改善の進め方を紹介します。

まず、比較する条件をそろえる

前年同月や計画と比べる前に、比較する期間・勘定科目・集計範囲をそろえます。繁忙期と閑散期をそのまま比較したり、部門の範囲が違う数字を並べたりすると、原因を見誤ることがあります。

月次試算表に棚卸・減価償却・未払費用などが反映されているか、一時的な費用が含まれていないかも確認します。まずは同じ条件で、どこが変わったのかを見ます。

売上・原価・販管費を区別する

営業利益は、売上高から売上原価と販売費及び一般管理費を差し引いた金額です。最初に、この区分をそろえます。

売上高

商品・サービスの提供により計上する売上です。同じ商品であれば、販売数量と販売単価に分けて確認します。サービス業では、契約件数・稼働時間・時間単価など、事業に合う単位を使います。

売上原価

売上に対応する仕入原価や製造原価などです。仕入代金の支払額や当月の仕入額とは必ずしも一致しません。商品販売では期首・期末の在庫を調整し、製造業では製造に関わる材料費・労務費・経費などを集計します。

販売費及び一般管理費(販管費)

販売活動や会社の管理にかかる費用です。販売・管理部門の給与、広告宣伝費、事務所の家賃などが該当します。人件費はすべて販管費になるわけではなく、製造に関わる労務費などは製造原価に含めます。業務の実態に応じて区分し、二重計上を避けます。

原価・販管費の区分と、変動費・固定費の区分は別のものです。固定費は一定の期間・操業範囲で売上数量などの増減に直接連動しない費用、変動費は連動する費用として整理します。売上原価をすべて変動費、販管費をすべて固定費と扱うとは限りません。

架空例:何を変えると、営業利益はいくら変わる?

1種類の商品を販売する会社の、1か月分の架空例です。販売数量1,000個、販売単価1万円、1個当たりの変動費6,000円、月の固定費300万円とします。金額はすべて税抜で、売上・費用は同じ月に対応するものとし、在庫の増減はありません。

売上高1,000万円 − 変動費600万円 − 固定費300万円
= 営業利益100万円

売上高から変動費を引いた400万円は、固定費の回収と利益に充てられる「限界利益」です。この例では、営業利益に関わる費用をすべて変動費と固定費に分けています。

次の各行は、基準から1項目だけ変更した場合です。ほかの条件は同じとし、変更を積み重ねていません。

1か月の営業利益の比較(単位:万円)
変更する条件営業利益基準との差
基準1か月の販売数量1,000個100―
販売単価を5%上げる1個1万円 → 1万500円150+50
販売数量を10%増やす1,000個 → 1,100個140+40
1個当たり変動費を5%下げる6,000円 → 5,700円130+30
月の固定費を10%下げる300万円 → 270万円130+30

数量を10%増やした行では、売上高は100万円増えますが、変動費も60万円増えるため、営業利益の増加は40万円です。単価を5%上げた行では、数量と費用が同じなので、売上高の増加50万円がそのまま営業利益の増加になります。

実際には、値上げに伴う数量の減少、数量を増やすための広告費・人員・設備の追加、調達条件の変更なども織り込んで判断します。この表は同じ条件で影響を比べるための試算であり、施策の優劣や実際の効果を保証するものではありません。

変動費・固定費・限界利益の考え方:中小機構 J-Net21「損益分岐点の計算方法と経営改善に向けた活用方法」。金額・条件は当事務所が説明用に設定した架空例です。

原因を確認する5つの視点

次の順番で確認し、変化の大きい項目から掘り下げます。原因は一つとは限らないため、複数の要因を分けて捉えます。

1.売上数量・契約件数

販売数量や契約件数が減っていないかを確認します。商品別・取引先別に分け、失注、解約、来店数の減少、供給できる量の制約など、数量が変わった理由を調べます。

2.販売単価・値引き

同じ商品・サービスの実際の販売単価が下がっていないか、値引き・無償の追加対応が増えていないかを確認します。全社の平均単価だけでは、安価な商品の販売割合が増えた影響と区別できないことがあります。

3.商品・案件ごとの原価

同じ商品・案件の原価を比べ、仕入単価、材料の使用量、外注費、作業時間などの変化を確認します。値上がりの影響と、仕様変更・手戻り・廃棄などの影響を分けて調べます。

4.固定的な費用の負担

家賃や固定給などの固定的な費用が増えていないか、売上が減っても同じ負担が続いていないかを確認します。人員や設備の増強による先行負担は、稼働率や売上計画と合わせて判断します。

5.商品・サービスの売上構成

商品ごとの粗利益率が変わらなくても、粗利益率の低い商品の売上構成比が高まると、全体の粗利益率は下がります。商品・サービス別、部門別の売上構成を確認し、数量・単価の変化と区別します。

確認した原因を改善につなげる

数字で確認した原因に対応する施策を選びます。すべてを一度に変えるのではなく、効果と実行負担を見て優先順位を付けます。

数量に課題がある場合

数量が減っている場合は、新規獲得・継続利用・提供できる量のどこに課題があるかを確認します。営業施策を増やす際も、追加費用と必要な人員・設備を含めて採算を見ます。

単価に課題がある場合

単価に課題がある場合は、値引きの条件や追加作業の料金を見直します。価格改定は、顧客への説明、契約条件、販売数量への影響も考慮して検討します。

原価に課題がある場合

原価が増えた項目を特定し、仕入条件、材料の使用量、工程、外注範囲などを見直します。単に安い調達先へ変えるのではなく、品質・納期・供給の安定性も確認します。

固定費に課題がある場合

固定費の見直しでは、契約の利用状況、解約条件、業務への影響を確認します。人員・設備の先行投資であれば、直ちに削減するのではなく、稼働計画と回収見通しを検証します。

担当者・期限・指標を決める

施策ごとに担当者、実施期限、確認する指標を決めます。翌月以降、数量・単価・粗利益・経費などを同じ条件で比較し、改善が見られなければ原因や施策を見直します。

毎月の数字が揃うのが遅く、改善の確認が後手になる場合は、月次決算を早める業務フローも参考にしてください。

相談時に用意するとよい資料

直近の決算書、月次試算表、商品・取引先別の売上、主な仕入・外注の明細があると、原因を整理しやすくなります。資料がそろっていない場合は、どの数字から確認するかを相談することもできます。

原因の整理からご相談ください

利益が出ない原因を、数量・単価・原価・固定費に分けて確認し、売上構成の変化も見ます。数字の区分と比較条件をそろえ、影響の大きい項目から改善につなげます。

当事務所では、利益が残らない原因の整理や改善策の検討について、顧問契約のない方からのスポット相談も受け付けています。支援内容と料金は事前にご案内します。

月次の数値確認から施策の見直しまで継続して取り組みたい方は、財務顧問の支援内容をご確認ください。

参考:e-Stat「売上原価の定義」

参考:中小機構 J-Net21「損益分岐点の計算と経営改善への活用」

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記事執筆者

岡田 健志

公認会計士・税理士

大阪国税局(国税調査官)勤務、Big4監査法人勤務を経て2024年大阪市福島区で独立開業。JR福島駅徒歩1分の事務所を拠点に、会計・税務のプロフェッショナルとして企業の成長を支援しています 。 「数字に強い経営者になりたい」「資金繰りの相談がしたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

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