税務調査
法人税務調査はどう選ばれる?5つの視点とAI活用|国税OB解説
国税での実務経験と公表資料から、選定の考え方を整理
POINT
「どのような会社が税務調査の対象になるのか」「前回から何年たつと調査が来るのか」。法人税務調査の選定について、経営者が押さえておきたい考え方を整理します。調査対象に選ばれたことだけで、不正があったと決まるわけではありません。
この記事では、私が大阪国税局の法人課税部門で経験した選定の視点と、国税庁・大阪国税局の公表資料を分けて説明します。個別の会社の選定理由や、次に調査が行われる時期を予測するものではありません。
国税OBとしての実務経験と、現在の公表資料
私が法人課税部門に所属していた当時は、調査に着手する前の選定・分析が重要視されていました。追徴税額の大きさだけでなく、売上除外や架空経費など、不正の兆候を見つける観点も重視されていました。これは私の在職当時の経験であり、現在の全国一律の人事評価や選定基準を示すものではありません。
国税庁レポート2026では、申告内容や調査事績などのデータを分析し、調査や簡易な接触を組み合わせる方針が示されています。対象選定は、単一の数値や一つの条件だけで説明できるものではありません。
選定・事前分析で着目する5つの視点
以下は、国税での実務経験を踏まえた着眼点です。公式の選定基準一覧や、該当すると必ず調査が来る条件ではありません。経営者側では、数値や取引の背景を資料に基づいて説明できるかを確認するための視点としてお読みください。
財務数値の比較と、その変動理由
同業他社や過年度と比べた利益率、原価率、販売費及び一般管理費の割合などは、申告内容を分析する手掛かりになります。売上の動きに比べて経費が増えている場合などには、その理由と取引実態の確認が重要です。
ただし、利益率が低いことだけで売上除外や架空経費とは判断できません。値上げ・値下げ、仕入価格、人員構成、一時的な支出など、事業上の理由を契約書や集計資料とともに整理しておきます。
外部から寄せられる具体的な情報
国税庁は課税・徴収漏れに関する情報提供を受け付けており、寄せられた情報を税務調査等に活用する場合があると案内しています。個別の取引や関係者に関する具体的な内容は、確認の手掛かりになり得ます。
情報提供があっただけで調査や不正認定が決まるわけではありません。申告内容や他の資料との整合性を含めて検討されるものであり、提供者の動機や属性を決め付けることはできません。
過去の調査結果
過去の調査で確認された事項は、その後の申告内容を検討する際の手掛かりになります。以前に指摘された処理が是正されているか、同様の取引が現在どのように処理されているかを確認しておくことが大切です。
何年ごとに調査が来るかを、過去の経験だけで予測することはできません。また、後の事業年度の調査と、既に調査した同じ税目・期間の再調査は別です。同じ税目・期間の再調査は、新たに得られた情報に照らして非違があると認める場合という、法令上の要件を踏まえて行われます。
現金取引と売上計上の整合性
私の経験では、現金取引の管理や、売上の計上漏れがないかは重要な確認の視点でした。日々の現金売上に加え、製造業で発生する金属くず等の売却収入など、本業以外の収入も確認対象になり得ます。
現金取引が多い業種だから不正があるという意味ではありません。売上記録、現金出納帳、領収書、入金記録などを突き合わせ、収入の計上に漏れや二重計上がないかを確認します。
取引先の調査等で把握された資料
国税庁は、法定調書や情報照会で収集した情報、他の調査で把握した情報などを調査・行政指導に活用していると公表しています。取引先の資料と自社の申告・帳簿の間に相違があれば、取引内容を確認する手掛かりになります。
取引先が調査を受けたことだけで、自社の調査が必ず行われるわけではありません。契約、納品・役務提供、請求、入出金の対応関係を日頃から整理しておくことが実務上の備えになります。
AIによる選定と、調査官による判断
国税庁レポート2026は、申告漏れの可能性が高い納税者の判定に「予測AI」を活用していると説明しています。判例の検索や業界情報の収集等に用いる「生成AI」とは、用途を区別しています。
大阪国税局の2025年12月公表資料では、AIの予測モデルで調査必要度の高い法人を抽出した後、申告書や資料情報を併せて分析し、調査官が実施の要否を最終的に判断するとされています。AIの判定だけで不正が確定したり、調査が自動決定されたりするという説明ではありません。
企業側で大切なのは、AIに選ばれない数値に合わせることではなく、取引実態と申告・帳簿・証憑の整合性を確かめることです。
まとめ:選定を予測するより、説明できる状態へ
法人税務調査の選定は、財務数値だけでなく、資料情報や過去の調査結果などを踏まえて行われます。本記事の5つの視点に該当することと、不正があることは同義ではありません。
日頃から売上・経費の根拠を整理し、数値の変化を事業の実態に沿って説明できるようにしておきましょう。帳簿を整備していても、調査対象にならないことや指摘が生じないことを保証するものではありません。
大阪で法人税務調査の事前準備・立会いをご検討の方は、当事務所の専用ページで支援内容と料金をご確認ください。受任可否は、日程、案件内容、利益相反の有無等を確認してご案内します。
参考資料
国税庁レポート2026:適正・公平な課税の推進と資料情報の収集(36~39ページ・PDF)
大阪国税局:法人税等の調査事績の概要(2025年12月・4ページ・PDF)
更新日:2026年9月9日。一般的な情報提供を目的とした記事です。個別の税務判断は、事実関係・資料・適用法令を確認して行います。