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福島区の国税OB公認会計士・税理士が法人税務調査の実態と対応のポイントを解説~選定編~
中小企業の経営者にとって、税務調査は避けては通れない「試練」と言えます。この「試練」がいつ訪れるのか、経営者の皆様は不安を抱えていることでしょう。
一方、税務調査官の立場では「調査は選定で8割が決まる」と言われており、税務署としては選定が最も重きを置いている点となります。そこで今回は、どのような会社が税務調査の選定対象となるのか、その実態を解説します。
税務調査官の目線
税務調査官、特に私が所属していた法人課税部門の調査官は、業績評価に「不正事案割合」が含まれます。多額の税金を追徴することだけでなく、「いかに不正を見つけるか」が重視されます。
そのため、調査官は不正が発生しそうな企業を中心に選定します。特に「売上除外」や「架空経費」の発生が疑われるケースを想定して調査対象を選んでいます。
税務調査の選定対象会社
税務署が調査対象を選定する際、ランダムに抽出しているわけではありません。具体的には以下に該当するような基準をもとに選定されます。この選定は税務署により違いはあるかもしれませんが、主に担当統括官が選定しています。
同業他社と比較して、売上高対利益率が異常に低い、または売上高に対して販売費や一般管理費の割合が異常に高い場合、売上除外や経費の架空計上が疑われます。これらの分析数値は、KSKシステム(国税総合管理システム)から出力されます。
税務署には主に総務課に匿名の電話や文書でタレコミが寄せられることがあります。タレコミがあった法人の管轄する部門では、内容が具体的で、不正の可能性が高いと考えられる場合には調査対象とすることがあります。中にはやっかみ等根拠もなく「不正をやっている」と投稿されているケースもありますが、信ぴょう性のあるタレコミの中には、従業員が良心の呵責に耐えかねて投稿するパターンもあるようです。
以前の調査で不正が発覚した場合、3~5年以内に調査に入るパターンが多いです。不正をしていた会社は、手口を変えて新たな不正を行う可能性が高いと考えるためです。
飲食業や不動産業などのように、現金取引が多い業種や、製造業で、加工により生じた鉄くずなどを買取り業者に現金で販売していることが多い会社などは選定の対象となることがあります。
他企業の調査中に取引先や仕入先の情報が得られることがあります。不審な取引が見つかれば、その関係先も調査対象となることがあります。
近年では、税務行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)化に伴い、システムで抽出されたデータに基づいて調査対象を選定するケースが増えているようです。
法人税務調査の選定は、これが全てではありませんが、主に上記のようなことを考慮して行われます。中には事前に対策が難しいものもありますが、正確に帳簿管理をして、売上の計上を漏らさないこと、経費の適正処理を徹底することで、不正の指摘を防ぐことが可能です。
また、税務調査に関する不安や不明点がある場合は、税理士に相談しながら準備を進めることが大切です。正しい対応と日頃の備えで、税務調査のリスクを最小限に抑えましょう。
岡田 健志
公認会計士・税理士
大阪国税局勤務、Big4監査法人勤務を経て2024年大阪市福島区で独立開業。