法人の税務顧問・引継ぎ
税理士を変更するとき、法人は何を引き継ぐ?
決算・申告資料とfreeeの確認事項
顧問税理士を変更するとき、最初に決めたいのは「いつ契約を終えるか」だけではありません。次の申告・納付を誰が担当し、どこまで記帳が終わっているかを先に確認します。そのうえで、会社が持つ資料、前の税理士から受け取る資料、会計ソフトの権限を分けて引き継ぐと、作業の抜けを見つけやすくなります。
この記事は法人の税務顧問を変更する際の一般的な確認順です。契約の解約条件、資料の保管場所、申告状況は会社ごとに異なります。
交代を決める前に現在の説明や税務判断を整理したい方は、法人のセカンドオピニオンで確認したいこともご覧ください。
最初に決める3点:期限・担当・記帳の区切り
| 確認すること | 具体的に見る内容 |
|---|---|
| 次の期限 | 法人税・消費税・地方税の申告と納付、源泉所得税など、近い期限と進行中の届出 |
| 誰が担当するか | 決算・申告、年末調整、法定調書などの未完了作業を、前の税理士・新しい税理士・会社の誰が進めるか |
| 記帳の区切り | 何月分まで入力・確認済みか、未処理の取引や残高の照合がどこまで終わっているか |
決算直後は区切りを付けやすい一方、期中でも変更は可能です。決算直前や申告作業中は、担当と作業範囲を特に明確にします。「決算後まで待てば必ずよい」と一律には決めず、現契約の解約通知期間と直近の期限を並べて、新しい税理士へ早めに相談してください。
引き継ぐ資料を3つに分ける
以下は相談時のチェックリストです。年数や提出形式を一律に決めず、新しい税理士に必要な範囲を確認します。会社の手元にあるものと、前の税理士へ依頼するものを区別しておくと、依頼が具体的になります。
1. 申告・届出の資料
- 直近の法人税・地方法人税・消費税・地方税の申告書控え、決算書、勘定科目内訳明細書
- 電子申告の受付結果・納付状況が分かる控え、進行中の申告・届出の一覧
- 課税方式や届出の適用状況を確認できる書類、繰越欠損金など翌期以降に引き継ぐ事項が分かる資料
申告書の数字だけでなく、提出済みか、納付済みか、翌期へ引き継ぐ判断があるかを確認します。消費税の課税方式や届出の有無は、新しい担当者が最初に把握したい情報です。
2. 会計・経理の資料
- 総勘定元帳、仕訳帳、月次試算表、期首残高と直近の残高が分かる会計データ
- 売掛金・買掛金・借入金などの内訳、固定資産台帳、減価償却の明細
- 請求書・領収書・契約書などの証憑の保管場所、未処理・未照合の取引一覧
帳簿と証憑が会社のクラウド上にある場合は、ファイルだけを渡すのか、権限を付与して継続して見るのかも決めます。資料の所在と、入力・確認が終わった月を一緒に伝えてください。
3. 会社の運用と未完了の仕事
- 給与計算・源泉徴収・年末調整・法定調書を誰が担当しているか
- 会計ソフト、請求書・経費精算、銀行口座連携の利用状況
- 税務調査への対応中か、前の税理士に相談して未決定の事項があるか
この一覧を最初からすべて揃える必要はありません。ない資料と取得を依頼中の資料を明示すれば、新しい税理士が着手範囲と優先順位を判断しやすくなります。
freeeを使っている会社は「データ」と「権限」を分けて確認する
freee会計の具体的な切替順は、税理士変更時のfreee引継ぎチェックリストにまとめました。事業所作成者、未承認仕訳、帳簿の控えを旧担当者の権限を外す前に確認してください。
freee会計を使い続ける場合、会社側で事業所の管理者を確認し、新しい担当者に必要な権限を付与できる状態かを見ます。税理士に会社の共通IDとパスワードを渡す方法ではなく、メンバーとして招待し、業務に必要な権限を設定します。freee公式ヘルプでは、メンバーの招待・権限変更・削除は管理者権限を持つメンバーが行うと案内しています。
引継ぎ時は、次の順に確認すると整理しやすくなります。
- 会社側の管理者と、現在招待されているメンバー・権限を確認する。
- 新しい税理士と、閲覧・入力・決算に必要な範囲を決め、招待後に対象年度とデータを一緒に確認する。
- 前の税理士の未完了作業と契約終了日を確認し、不要になった権限を会社側で見直す。
- 変更時点の試算表・総勘定元帳などを、必要に応じて会社側でも出力・保管する。
freee会計では、試算表や総勘定元帳をCSV・PDF形式などで出力できます。メニューや利用できる権限・機能は契約プランや設定で変わるため、実際の画面で確認してください。なお、メンバーを削除しても、その人が登録した取引自体が削除されるわけではありません。
出典:freee「freee会計のメンバー招待・権限」、freee「試算表を確認する」、freee「総勘定元帳を確認する」。
税務代理と通知の受領先も確認する
税理士が税務代理を行う場合は、税務代理権限証書で税目・期間などの委任範囲を示します。委任が終了した場合の通知手続も国税庁が案内しています。変更時には、前の税理士の委任がどの税目・期間で終わり、新しい税理士がどこから受任するかを確認してください。e-Taxで通知を代理受領していた場合は、その対象も確認します。
税務代理権限証書の提出と委任終了の通知を誰が行うかは、契約と実際の申告・通知の状況に応じて整理します。会計ソフトのメンバー変更だけで、税務代理や通知の受領先まで切り替わったと考えないでください。
根拠:税理士法第30条・国税庁「税務代理の権限の明示」、国税庁「税務代理の委任が終了した旨の通知書」。
相談するときは、揃っていない資料も伝える
新しい税理士への初回相談では、会社の決算月、次の申告・納付期限、現在の会計ソフト、記帳済みの月、前の税理士との契約終了予定日を分かる範囲で伝えてください。「申告書はあるが元帳がない」「freeeの管理者が誰か分からない」といった不足も、そのまま知らせていただいて構いません。
当事務所では、会社の資料と作業状況を確認し、記帳・月次確認から決算・申告までの分担と支援範囲を事前にご案内します。freeeを利用中の会社もご相談いただけます。着手前に対応範囲と料金をお伝えします。
よくある質問
決算の途中でも税理士を変更できますか?
変更は可能です。次の申告・納付期限、記帳が終わった月、現在の契約と未完了作業を確認し、前後の担当を明確にしてください。決算・申告作業が進んでいる場合は、どの作業から新しい税理士が引き受けられるかを個別に確認します。
前の税理士から資料がまだ届いていなくても相談できますか?
相談できます。手元にある申告書・決算書・試算表を確認し、不足資料と取得予定を一覧にしてください。期限が近い場合は、その日付を最初に伝えてください。受任できる範囲と必要な追加資料は、状況を確認してご案内します。
freeeの事業所を作り直す必要がありますか?
税理士が変わることだけを理由に、直ちに事業所を作り直す必要はありません。会社側の管理者、既存データ、招待メンバーと権限を確認し、引継ぎ方法を決めます。旧事務所名義で管理されているなど、会社が必要な権限を持っていない場合は、現状を確認してから進めてください。
執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)。2026年10月13日時点の国税庁・freee公式資料を確認。個別の契約条件、税務代理の範囲、申告・納付期限、会計ソフトの契約・権限は会社ごとに確認が必要です。