TAX RETURN GUIDE
領収書がない・帳簿がないとき、確定申告はどう準備する?
「領収書が見当たらない」「売上は入金されているけれど、帳簿をつけていない」。そのようなときも、まず手元の資料を集め、確認できる取引と不足している情報を分けるところから始めましょう。個人事業や副業の申告に向けて、今からできる準備を順番に説明します。
この記事のポイント
収入の資料を先にそろえ、支出は領収書・請求書・明細を照合します。分からない金額や用途は推測で埋めず、不足一覧に残します。資料が一部ないことと、記帳・保存や申告が不要になることは別の問題です。
この記事の内容
1.最初に「何が足りないか」を分ける
まず対象年を決めます。例えば、2027年に提出する2026年分の確定申告なら、原則として2026年1月から12月までの取引に関する資料を探します。年末の取引は翌年の入金・支払記録も確認します。
資料はあるが、整理していない
封筒、メール、通販の購入履歴、会計ソフトなど、資料のある場所を一覧にします。まず月別に分け、なくなっている月や取引を見つけます。
一部の資料をなくした
取引先・時期・決済方法を手掛かりに探します。再発行やダウンロードができるかを確認し、見つからない分を別に管理します。
帳簿そのものがない
収入・支出の資料から取引一覧を作り、帳簿へ整理していきます。集計した合計額だけでなく、元資料に戻れる状態を目指します。
まだ発行されていない
源泉徴収票など、年が終わってから発行される資料もあります。「紛失」と「発行待ち」を分け、取得先と確認予定を残します。
事業所得等を生ずべき業務を行う方は、白色申告でも記帳・帳簿書類の保存が必要です。青色申告の特典にも帳簿や申告期限などの条件があります。今ある資料でどこまで整理できるかと、適用要件を満たすかは、それぞれ確認します。
2.経費の前に、収入の資料を集める
経費の領収書だけを探すと、売上の整理が後回しになりがちです。先に収入を受け取った仕事・取引先・サービスを一覧にし、対象年の資料を集めましょう。
- 発行した請求書、売上台帳、契約書、納品・業務完了の記録
- 銀行の入出金明細、決済サービスや販売サイトの取引・精算明細
- 現金で受け取った収入の記録、手元にある報酬の支払明細
- 給与がある場合の源泉徴収票など
銀行への入金が、そのまま売上と一致するとは限りません。報酬から税金や手数料が差し引かれている場合は、控除前の金額・控除項目・入金額を照合します。自分の口座間の振替や借入金なども、売上の入金と区別します。
また、原則として、収入を計上する年は入金日だけでは決まりません。年末までに収入すべき権利が確定していれば、未入金でもその年の収入となる場合があります。現金主義の特例を利用している場合などは取扱いが異なるため、前年の申告方法や届出も確認します。
副業・夜の接客のお仕事で確認したいこと
給与として受け取る収入か、業務委託等の報酬かによって、確認する資料や所得の計算が変わります。明細の名称だけで決めず、契約や働き方も整理しましょう。夜のお仕事も、まず支払明細と控除内容を確認するところから始められます。
会社員の副業と確定申告、夜のお仕事の給与・報酬と確定申告でも基本を説明しています。
3.領収書がない支出は、取引を確かめる資料を探す
以下は、失くした資料を探し、取引内容を確認するための実務上の整理手順です。挙げた資料が、どの取引でも領収書の代わりとして必ず認められるという意味ではありません。
- 購入先の履歴を確認する。 通販サイトやサービスの管理画面、メールを探し、領収書・請求書を再取得できるか確認します。必要に応じて発行元へ再発行や内容の確認を依頼します。
- 支払記録と突き合わせる。 カード利用明細、銀行振込記録、契約書、注文確認メールなどを組み合わせ、相手・日付・金額・購入内容を確認します。
- 仕事との関係を残す。 何の業務で使ったか、誰との打合せだったかなど、確認できる事実を記録します。私生活との共用があれば、その使用状況も整理します。
- 確認できない点は不足一覧へ。 日付や金額を記憶だけで作らず、「用途未確認」「再発行依頼中」などの状態を残します。
所得税の必要経費では、支出の事実だけでなく、収入を得るための費用・業務上の費用に当たるかを確認します。領収書があっても私生活の支出が自動的に経費になるわけではなく、仕事と私生活に共通する費用は、記録等に基づき業務上必要な部分を区分できるかがポイントです。
出金伝票や自分で作ったメモは、確認した事実を残す補助資料として使います。それだけを作れば経費が認められる、という取扱いではありません。
消費税の確認は別に行います
消費税の仕入税額控除には、原則として帳簿と適格請求書等の保存が必要です。一定の取引等には例外がありますが、所得税で必要経費として扱えることと、消費税を控除できることを同じ判断にしないようにします。
参考:国税庁 No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存
衣装や美容代、電車・タクシー代について迷う場合は、衣装・美容・交通費の必要経費と記録の残し方で、私生活の支出と区分する確認事項をご覧ください。
4.帳簿がない場合は、月ごとに取引を整理する
最初から勘定科目を全部決めようとせず、まず元資料と対応する取引一覧を作ると進めやすくなります。記録する項目は、次を目安にしてください。
- 取引の日付と、入金・支払の日付
- 相手先、取引の内容、金額
- 現金・銀行・カードなどの決済方法
- 仕事との関係、元資料の保存場所
- 確認済みか、何が未確認か
この一覧は準備用です。申告方法に応じた帳簿や決算書を作るには、取引の内容を確認した上で会計ソフト等へ整理します。青色申告で必要になる記帳方法や決算書も、別途確認してください。
同じ支出を2回数えない
カードでの購入と、その後の銀行口座からのカード代金引落しは、別々の経費ではありません。領収書、カード明細、銀行明細が同じ取引を示しているかを確かめ、重複させずに対応付けます。返金・キャンセルや、自分の口座間の移動も確認します。
年末には、未回収の売上、未払いの費用、在庫、仕事用の設備など、単純な入出金集計では整理しきれない項目があります。分からない取引を推測で処理せず、相談する項目として残しましょう。
申告全体の手順は、自分で確定申告をするための準備から提出までにまとめています。資料の不足一覧や確認事項を文章で整理するなら、個人情報を入れずに試せる無料AIの質問例も参考にできます。
5.集めた電子データと紙の原本を残す
メールやWebサイトで受け取った請求書・領収書等は、保存義務の対象となる電子取引データについて、電子データの保存が必要です。確認しやすいからと印刷だけして、元のPDF等を削除しないようにしましょう。
まずは、利用するサービスから取得できるデータを保存し、取引と対応するファイルが分かるように整理します。例えば対象年・月で分け、日付・取引先・金額を確認できる名前や一覧を使う方法があります。
ただし、フォルダを作るだけで全ての保存要件を満たすとは限りません。改ざん防止、画面や書面で確認できる環境、検索などの要件と、適用できる猶予措置・特例を国税庁の案内で確認してください。
紙で受け取った資料も、会計ソフトに入力しただけで捨てないようにします。スキャン後に紙を廃棄する場合には別の保存要件が関係します。青色・白色や書類の種類によって保存期間も異なります。
6.そろわない資料があるときは、状況ごと相談する
全てを完成させてから相談する必要はありません。「どの年の、どの資料が、どのくらい不足しているか」が分かると、次の作業と依頼範囲を相談しやすくなります。
- 対象年と収入の種類: 個人事業、副業、給与など。複数ある場合は全体を伝えます。
- 手元の資料: 請求書、明細、会計データ、前年の申告書・決算書、届出の控えなど。
- 不足している資料: 対象の月・取引、再発行を依頼したか、連絡先が分かるか。
- 申告状況: まだ申告していないか、提出済みか、税務署から連絡が来ているか。
- 相談したい範囲: 資料整理、記帳、申告書の作成、申告内容の確認など。
申告義務がある場合、資料がそろわないことだけで期限が自動的に延びるわけではありません。期限が近い、過去の年分が未申告、売上の確認ができないといった場合は早めに状況を伝えましょう。期限を過ぎている場合も放置せず、対応を確認します。
以前の申告や未申告については、過去の確定申告を確認・見直すときの進め方をご覧ください。
よくあるご質問
領収書が1枚でもないと、確定申告はできませんか?
まず、どの取引の資料が不足しているかを確認し、再取得や他の記録との照合を進めます。一部の紛失だけで申告をあきらめる必要はありませんが、資料がない取引の金額や経費性を推測で確定させないことが大切です。
カード明細や出金伝票があれば、必ず経費になりますか?
必ず経費になるわけではありません。支出内容と業務との関係を確認できる資料をそろえます。自分で作ったメモだけで事実の確認が済むわけではなく、消費税の仕入税額控除についても別途保存要件等を確認します。
帳簿をつけていないので、白色申告にすればよいですか?
白色申告でも、事業所得等を生ずべき業務を行う方には記帳・帳簿書類の保存義務があります。青色申告の承認状況も確認し、手元の資料から取引を整理した上で、申告方法と必要な帳簿を確認してください。
資料が全部そろうまで、税理士への相談は待つべきですか?
不足している状態でも相談できます。対象年、収入の種類、手元にある資料、ない資料、申告済みかどうかをまとめると、準備と依頼の範囲を相談しやすくなります。
収入と資料の状況から、ご相談ください
大阪市福島区の岡田健志公認会計士・税理士事務所では、個人事業・副業などの確定申告について、税理士本人が対応します。資料の整理状況や対象年を伺い、ご依頼の範囲と料金を事前にご案内します。初回相談は無料です。
根拠・参考資料
- 国税庁:個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について
- 国税庁 No.2200 収入金額とその計算
- 国税庁 No.2210 必要経費の知識
- 国税庁 No.2070 青色申告制度
- 国税庁 No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存
- 国税庁:電子取引データの保存方法について(2024年11月)
- 国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
主な根拠:所得税法36条・37条・45条(収入・必要経費等)、消費税法30条(仕入税額控除)、電子帳簿保存法7条(電子取引)。記帳・保存と青色申告については上記国税庁の案内を参照。2026年10月1日に確認した公表資料に基づく一般的な説明です。適用する制度・控除・期限は対象年や個別事情により異なります。