経理システムの見直し 01 / 06
経理システムの入れ替えは何から始める?中小企業の進め方と相談先
この記事の内容
会計ソフトが古い。販売管理と会計に同じ数字を入力している。経理担当者から「今のやり方では回らない」と言われている。経理システムの入れ替えを考えるきっかけは、会社によって異なります。
最初に行うのは、困っている業務と、入れ替え後にできるようにしたいことの整理です。 請求・入金・支払・会計・月次報告のどこを変えるかが決まると、必要な機能、相談先、予算を具体化できます。
この記事では、経理を中心とするシステムの見直しについて、検討から運用開始までの順番を説明します。
まずは一つの取引が数字になるまでを確認する
例えば売上取引なら、受注、納品・役務の提供、請求、入金確認、会計への計上という流れがあります。各段階で使うソフトやExcel、入力する人、確認する人を書き出してください。請求の締日と売上計上の時点が異なる場合は、その処理も確認します。
下の表は、相談前の整理例です。すべてを埋めてから相談する必要はありません。
| 確認すること | 書き出す内容の例 |
|---|---|
| どの作業で困っているか | 請求データを会計へ毎月転記している |
| 誰が行っているか | 営業担当が請求し、経理担当が入力・照合している |
| 何を使っているか | 販売管理ソフト、会計ソフト、売掛金管理表 |
| どこで止まるか | 値引きや請求訂正の情報が経理へ届かない |
| どうなればよいか | 訂正履歴を確認し、請求と会計の差額を説明できる |
「経理を効率化したい」から一歩進めて、変えたい作業を具体的にすると、製品の説明を自社の業務に当てはめて聞けます。IPAも、システム構築の前に業務上の問題や目的を明らかにし、解決方法を検討する考え方を示しています。参考:IPAのビジネス分析の解説
入れ替える範囲を三つの選択肢から考える
現状を整理したら、次の選択肢を比べます。
| 選択肢 | 検討する状況 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 今のシステムの設定・運用を見直す | 必要な機能はあるが、手順や担当が決まっていない | 設定、権限、資料の集め方、教育 |
| 一部のシステムを変更・連携する | 請求と会計など、特定の間で転記が発生している | 受け渡すデータ、訂正方法、連携できない処理 |
| 複数のシステムを入れ替える | 現行機能や保守条件が今後の業務に合わない | 移行順序、費用、社内負担、業務継続 |
同時に変える範囲が広いほど、関係者と確認する事項も増えます。例えば、請求書の発行だけ先に変更する場合でも、会計へ渡す情報と売掛金の管理を先に決めておく必要があります。二重入力が中心の悩みであれば、販売管理と会計の連携を見直す記事も参考になります。
製品を選ぶ前に必要な条件を決める
条件は「必須」「あると便利」「今回は対象外」に分けます。営業、経理、経営者が別々に要望を出したままにせず、誰が優先順位を決めるかも明確にしてください。
必須条件には、通常の入力だけでなく、請求の取消し、返品、一部入金、締めた後の訂正など、自社で実際に起きる処理を含めます。部門別・案件別の利益を見たい場合は、集計する区分と費用の付け方も選定条件になります。
デモでは、自社の取引を模したデータで、入力から請求、入金、仕訳、管理資料までを見せてもらいます。実データを提供するときは、提供する項目と共有方法を会社で承認してください。
要件定義とは、こうした必要条件を関係者が確認できる形にして合意する作業です。IPAは、業務や機能が曖昧なまま「今と同じ」と依頼すると、認識が食い違う可能性を説明しています。参考:IPAの要件定義の解説
社内 ベンダー 税理士の役割を決める
役割分担は契約に合わせて決めます。相談先を選ぶ際は、次のように確認すると業務の抜けを見つけやすくなります。
| 関係者 | 確認したい役割 |
|---|---|
| 経営者・社内責任者 | 目的、予算、業務変更の承認、切替判断 |
| 現場・経理担当者 | 現在の処理、例外取引、操作確認、運用手順 |
| システム提供会社・導入会社 | 機能、技術的な連携可否、設定・開発、保守条件 |
| 税理士・公認会計士 | 会計処理、残高照合、税区分、月次決算・管理資料とのつながり |
「データ移行一式」という表現だけでは、誰が元データを整え、誰が移行結果を確かめるか分かりません。作業ごとに担当者と完了条件を決め、未決定の事項を残しておきます。
見積りには移行後の運用まで含める
利用料に加え、初期設定、データの整理・変換、外部連携、操作説明、並行運用、運用開始後の修正対応を確認します。社内担当者が行う作業と、その時間を確保できるかも重要です。
既存の帳票を再現する費用と、標準帳票に合わせて業務を変える場合の費用を比べる方法もあります。見積りの前提が違うと総額だけでは比較できないため、対象期間・利用人数・移行範囲をそろえます。見積比較の確認項目では、比較表の作り方を紹介しています。
切替日は最初の月次決算まで見て決める
切替日から逆算して、データ整理、移行の試行、操作確認、社内説明を配置します。会計については、期首か期中か、前期比較を行うかによって必要なデータが変わります。freeeにも、その条件に応じた移行手順が案内されています。freee導入前の初期設定をご覧ください。
本番移行前には、移行元と移行先の残高、明細、添付資料との対応を確認します。請求、入金、支払、月次締めを実際に一巡させ、問題があった場合の担当と対処方法も決めます。切替を延期する条件や、旧システムで業務を続ける場合のデータの扱いは、事前に導入会社と合意してください。
運用開始後は、未処理件数、二重入力、差額の原因、月次報告にかかる時間を確認します。継続して確認する担当と時期まで決めると、導入後の改善につながります。
相談前に分かる範囲で用意する情報
- 現在使っている会計・販売・請求等のソフト名。
- 困っている作業と、関係する担当者。
- 決算月、希望する切替時期、保守・契約の期限。
- 変更後に見たい帳票や、減らしたい作業。
- ベンダーから受け取った提案・見積りがあれば、その概要。
岡田健志公認会計士・税理士事務所では、経理フローの整理、freeeの導入・移行、月次確認、経営管理に使う資料の設計をご相談いただけます。システム会社へ確認する技術的な事項と、会計・業務面で整理する事項を明確にし、現在の状況に応じた支援範囲と料金をご案内します。
よくある質問
どの製品を使うか決まっていなくても相談できますか?
相談できます。現在の業務、困っている作業、切替時期を整理するところから始められます。製品の詳細な対応可否は提供会社へ確認し、会計・業務の条件と合わせて検討します。
今の顧問税理士を変える必要はありますか?
システム入れ替えを相談することだけで、顧問変更が必要になるわけではありません。現在の顧問税理士が担当する記帳・決算・申告と、導入支援で依頼する作業の分担を確認してください。
会計ソフトだけを先に変更できますか?
販売・請求・給与等とのデータ連携、移行対象、切替前後の処理を確認して判断します。変更後も他システムを使う場合は、受渡形式と照合方法を先に決めておくことが大切です。
執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)。関連資料確認日:2026年10月15日。