経理システムの見直し 05 / 06

会計システムを変えるときに部門別・案件別の利益管理を整えるには

執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)
関連資料確認:2026年10月15日

01判断したいこと
02区分と費用
03入力を試す
04全社と照合
この記事の内容

会社全体では利益が出ていても、どの部門や案件が利益を生んでいるか分からない。毎月、会計データをExcelに移して集計し直している。会計システムの入れ替えは、こうした管理の方法を見直す機会になります。

最初に決めるのは、どの数字を見て、何を判断したいかです。 その後に、集計する単位、売上・費用の付け方、必要な入力項目を決めます。この順番で設計すると、日々の入力と経営判断につながる資料を結びつけやすくなります。

経営判断から必要な集計を決める

例えば、受注価格を見直したい場合と、店舗ごとの人員配置を考えたい場合では、必要な情報が異なります。

判断したいこと 集計する切り口の例 併せて確認する情報
受注価格・案件の採算 案件別の売上、外注費、材料費等 作業時間、追加作業、未請求の内容
店舗・部門の改善 部門別の売上、直接費、共通費 人員、営業時間、稼働状況
商品・サービスの構成 商品群・サービス別の売上と費用 販売数量、値引き、返品
予算との違い 部門・費目ごとの予算と実績 差額の原因、今後の予定

すべての切り口を一度に作ると、入力の負担も増えます。まず、経営上の判断に使う集計を選び、必要な区分と項目に絞ります。IPAも、経営上の目的からITへの要求を明らかにする考え方を説明しています。参考:IPAのビジネス分析の解説

部門と案件の意味をそろえる

部門を組織上の部署として使うのか、店舗や事業区分として使うのかを決めます。案件についても、契約単位、工事単位、注文単位など、どこで番号を分けるかを明確にします。

担当者によって違う意味で同じコードを使うと、集計後の修正が必要になります。新規コードを作る人、名称変更の扱い、完了した案件の扱いを決めてください。旧システムの区分を整理する場合は、旧区分と新区分の対応表を残します。

前年と比較する際は、組織変更や案件のまとめ方の違いに注意します。過年度の区分を組み替えるか、比較しにくい部分を注記するかを決め、比較の前提をそろえます。

売上と費用を同じ単位で集める

案件別の売上だけを登録しても、費用が会社全体にまとめられていると案件の採算は分かりません。請求書、発注書、経費精算、作業時間等のどこで部門・案件を指定するかを決めます。

例えば、外注先への発注時に案件番号を付け、請求書の確認時にその番号を引き継ぐ方法が考えられます。後から経理担当者が推測して割り振る運用では、確認の手間と不明な費用が残ります。

また、契約額、請求額、会計上の売上額は目的が異なります。管理資料でどの金額を使うかを表示し、会計上の売上計上時期と費用の対応は、会社の会計方針や取引の実態に基づいて確認します。販売管理と会計の連携も、この単位に合わせて設計します。

直接費と共通費を分けて説明できるようにする

特定の部門・案件との対応が明らかな費用は、その単位に直接集計します。本社費や共用設備の費用など、複数の部門等に関係するものは共通費として整理し、必要に応じて配賦方法を決めます。

管理資料では、例えば次のように段階を分けると、個別の採算と共通費の影響を確認できます。

売上 − 直接集計した費用 = 直接費控除後の利益
直接費控除後の利益 − 配賦した共通費 = 共通費配賦後の利益

これは管理資料の構成例です。直接費に含める費目と、共通費に含める費目を会社で定義します。名称だけで財務諸表上の売上総利益等と同じものとして扱わず、どこまでの費用を控除した数字かを明示してください。

配賦基準には、利用面積、作業時間、人員など、費用の発生や利用実態に対応する指標を検討します。採用した理由と更新時期を残し、集計の都度、都合よく基準を変えない運用にします。配賦後の結果だけで判断せず、直接費控除後の利益と共通費の内訳も確認します。

日々の入力で必要な区分が付くかを試す

製品を選ぶときは、必要な部門・案件の区分を持てるか、複数区分をどう組み合わせるか、外部システムから引き継げるかを確認します。利用できる機能は製品やプランで異なるため、実際の契約条件とデモで確かめてください。

次の取引を模したデータで試すと、運用上の課題が見つかりやすくなります。

  1. 一つの請求に複数案件が含まれる取引。
  2. 一つの費用を複数部門で負担する取引。
  3. 部門や案件が未確定のまま届く請求書。
  4. 締めた後に対象区分や金額が訂正される取引。

入力画面だけでなく、月次の一覧、未分類のデータ、会計全体との照合まで確認します。誰も使わない区分や、毎回判断に迷う区分があれば、運用開始前に見直しましょう。

管理資料と会社全体の数字を照合する

月次の確認では、部門・案件の合計に、未分類や全社共通の項目を加えた数値が、比較対象の会計数値と対応するかを確認します。配賦を行う場合は、配賦元と配賦先で二重に費用を数えていないかも点検します。

管理上の調整や、未完了案件の見込みを加える場合は、会計実績、管理上の組替え、見込みを分けて表示します。実績と予測が混ざると、改善の効果や受注判断を誤りやすくなります。

会議では、数字を見る担当、説明する人、次の対応を決める人を定めます。見つかった課題が、価格改定、原価の確認、配置の変更などの具体的な判断につながるかを確認してください。

利益管理を毎月続けられる形にしたい方へ

岡田健志公認会計士・税理士事務所では、利益構造の整理、部門別・商品別などの管理資料、経理・管理フローの改善をご相談いただけます。現在見ている資料と、判断に困っていることをお知らせください。会計システムの変更予定がある場合は、導入前に必要な集計項目と確認方法を整理します。

よくある質問

部門別の帳票が出るソフトなら管理会計はできますか?

必要な売上・費用に適切な区分を付け、未分類や共通費を確認する運用が必要です。経営判断に使う内容から、区分と入力・確認方法を決めます。

共通費は売上高で配賦すればよいですか?

費用の性質や利用実態に照らして検討します。売上高、人員、面積、作業時間などの指標を比較し、採用する理由と見直し方法を決めてください。

過去のデータに部門や案件が付いていません。

元資料から区分できる範囲と、確認に必要な作業量を調べます。過去分を組み替えるか、開始時点から管理するかを決め、前年との比較に制約がある場合は明示します。


執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)。関連資料確認日:2026年10月15日。

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