会計・経営 / 月次決算と経理フロー
月次決算が遅い原因は?経理の締めを早める業務フローの見直し
月末を過ぎても請求書が集まらない。経理担当者が確認を依頼しても返事がなく、数字がまとまるころには翌月も終わりに近い。このような状態では、売上や利益の変化に気付いても、対応が後手に回りがちです。
月次決算を早めるには、入力作業の効率化に加えて、誰が・いつまでに・何を確認すれば完了かを決めます。資料回収、会計処理、残高照合、レビュー、経営者への報告までを一つの流れとして整理しましょう。
この記事の内容
月次決算が遅れるのは、どの工程か
まず、直近の月次決算を振り返り、実際に作業していた時間と、資料・回答・承認を待っていた時間を分けて確認します。待ち時間が長い工程に対して入力ツールだけを導入しても、締め日が早まらないことがあります。
| 止まっているところ | よくある状態 | 最初に見直すこと |
|---|---|---|
| 資料回収 | メール、紙、担当者の端末に資料が分散している | 提出先と提出責任者を決め、未提出を把握する |
| 会計処理 | 同じ内容を複数のExcelや会計ソフトに転記している | 元データと転記先を整理し、重複入力を減らす |
| 確認・承認 | 「確認中」のまま担当者も回答期限も決まっていない | 問い合わせ先、必要な回答、期限を明記する |
| 残高照合 | 月末に差額や古い未消込がまとめて見つかる | 月中から明細と帳簿の差異を確認する |
| 経営報告 | 試算表完成後に別の資料を一から作り直している | 経営者が見る項目と集計方法を先に決める |
紙の回覧やExcelへの二重転記が多い場合は、紙・Excel中心の経理を見直す記事で、請求書の受付から承認までの整理例を紹介しています。
「担当者・期限・完了条件」を工程ごとに決める
「請求書を提出する」「仕訳を入力する」だけでは、次の担当者が作業を始められる状態か分かりません。例えば資料回収なら、必要資料の提出状況が分かり、不足分の担当者と確認予定が決まっていることまでを完了条件にします。
月次の流れと完了条件の例
経営会議など、数字を使う日から逆算して各工程の期限を置きます。締め日だけを先に短縮するのではなく、営業・購買・現場・経営者を含めた役割分担と、社外から資料が届く時期を確認します。小規模な会社で一人が複数の役割を兼ねる場合も、重要な処理の確認者を決めておくことが大切です。
月末に集中させないための見直し
資料は月中から集める。 請求書や領収書は受領時に決めた保管先へ集約し、提出済みかを分かるようにします。紙を画像化しても、確認・承認が紙の回覧のままなら、その工程は残ります。
入力と照合を小分けにする。 口座・カード連携やデータ取込みを利用している場合も、連携切れや未処理を放置せず、実際の明細と帳簿を確認します。差額を合わせるためだけの仕訳を入れず、重複・漏れ・日付・振替など原因を調べます。
月末に必要な情報を先に依頼する。 売上・仕入の締めに必要な資料、在庫・仕掛品の情報、給与などの集計結果について、提出内容と担当者を決めます。計上時期や見積りが必要な項目は、会社の会計方針と取引の実態に沿って確認し、判断に迷うものを未整理のまま翌月へ流さないようにします。
毎月の管理資料は元データから作る。 手作業で数字を転記する資料を減らし、会計データや販売データとつながる集計方法を検討します。元データの期間・対象・集計条件をそろえ、資料の合計と元データが一致するかを確認します。
「確認待ち」を一覧にして、止まったままにしない
未解決の項目は、担当者だけのメモやチャットに残さず、月次の確認待ち一覧に集めます。少なくとも、対象月、確認事項、担当者、回答期限、帳簿・報告への反映状況、根拠資料の所在を記録します。
架空の業務による記入例
「確認中」を、次に動ける情報へ
対象月:2026年9月/実際の顧問先・取引の情報ではありません。
購買担当へ発行状況・対象期間を確認
- 担当・受渡し
- 購買担当 → 経理担当
- 回答期限
- 2026年10月2日
- 根拠資料
- 発注書・納品記録・請求書の保管先
帳簿への反映状況・完了条件
金額・対象期間を確認中。計上要否と処理方法は確認後に判断
入金と請求の対応、振込名義を確認
- 担当・受渡し
- 営業担当 → 経理担当
- 回答期限
- 2026年10月5日
- 根拠資料
- 請求一覧・入金明細・照合記録
帳簿への反映状況・完了条件
差異の原因を調査中。必要な修正と照合の完了後に解決済みへ
日付は記入例です。全社共通の推奨締め日や当事務所の完了保証を示すものではありません。
一覧の「解決済み」は、回答が届いた時点ではなく、必要な処理と確認が終わった時点にします。回答内容、修正した箇所、確認した人を残しておけば、同じ問い合わせを翌月繰り返すことも減らせます。
freeeの月締め機能と、内容の確認は別の作業
freee会計の「月締め」は、締めた期間の取引等の登録・編集・削除を制限する機能です。仮締めと本締めでは制限の対象が異なるため、利用環境や権限を確認し、締める担当者と修正が必要になった場合の手順を決めます。月締めを実行したことだけで、資料回収や残高照合が完了したとはいえません。
参考:freee公式ヘルプ「特定の期間を仮締め・本締めする(月締め)」
また、法人向けの「修正待ちリスト」は確認の手掛かりになりますが、freee公式ヘルプでも、決算に必要な確認をすべて網羅するものではないと説明されています。指摘がなくても、収益・費用の計上や債権・債務等の残高内訳を別途確認します。機能が検出する項目・対象期間と、自社で行う月次確認の範囲を分けて考えましょう。
参考:freee公式ヘルプ「【法人】修正待ちリストの見方と修正方法」
締めた数字を、次の経営判断につなげる
月次決算は、試算表を作成して終わりではありません。売上・粗利益・経費などの変化を確認し、前月や前年同月、計画との差について、理由と次に取る行動を整理します。金額の増減だけでは判断できない場合は、販売数量、単価、人員、案件の進捗なども確認します。
利益と手元資金は別に確認します。売掛金の回収予定、買掛金・未払金の支払予定、借入金の返済予定などを資金繰りに反映し、いつ資金が必要になるかを把握します。
入出金予定の整理は、資金繰り表の作り方で解説しています。月末残高がプラスでも月中に不足する架空の例を使い、日付別・口座別に確認するポイントを紹介しています。
社内管理用に速報を先に共有する場合は、確定していない項目、数値への反映状況、確認予定を明示します。未確定の影響が大きいまま確定値として説明せず、確定後は速報との差額と理由が分かるようにします。
AIは資料整理、差異の抽出、報告文案の作成などに利用できます。ただし、根拠のない増減理由を採用せず、元データとの一致と取引の実態を人が確認します。情報の取扱いルールを決めたうえで、確認を終えた数字から経営者向けの説明を作る流れにします。
最初の改善は、遅れが最も大きい工程から
全体を一度に作り替える必要はありません。直近の月次決算で最も長く止まった工程を選び、担当者・期限・完了条件を決めて、次の月に試します。振り返りでは、締めた日だけでなく、期限時点の未解決項目、報告後の修正、経理担当者の負担も確認します。
例えば、資料が集まらないなら提出先と未提出の見える化から、回答待ちが多いなら確認待ち一覧から、報告資料の作成が重いなら集計元の整理から始めます。速さと内容の確かさを両方確認し、継続できる進め方へ調整します。
当事務所では、月次推移や資金繰りの確認、経理・管理フローの改善をご支援しています。現在の締め方、資料の受渡し方法、お困りの工程を伺い、必要な支援範囲をご案内します。財務顧問の内容を見る
制度・製品情報の確認日:2026年9月30日。freeeの画面・機能・利用条件は変更される場合があります。本記事の工程・管理例は、会社ごとの業務設計を検討するための例です。