AI・業務改善 / 請求書処理の実演

紙とExcelに追われる経理から抜け出すには?AI・クラウドで請求書処理を見直す

公開日:
岡田健志(公認会計士・税理士)

メールで届いた請求書を印刷し、担当者に回して確認印をもらう。その内容を支払予定表へ入力し、会計ソフトにも入力する。月末には別のExcelに貼り付けて集計する。こうした作業が積み重なると、経理は「同じ情報を何度も扱う仕事」になってしまいます。

紙とExcelへの依存を減らすには、資料の受け取りから確認・承認・会計処理まで、同じ情報を引き継ぐ流れを作ることが出発点です。今回は、架空の請求書5枚を使い、AIによる項目の読取りと確認事項の整理を実演しました。

この記事の内容

1.まず減らしたいのは、印刷・転記・最新版探し

紙で回すためだけの印刷、複数の管理表への手入力、メール添付で増える「最終版」のExcel。こうした作業がある場合は、各資料の役割と情報の保管先を確認します。

今の作業見直す方向決めておくこと
PDFの請求書を印刷して回覧する受け取ったデータを保存し、画面上で確認・承認する受付先、確認担当、承認者
支払予定表と会計ソフトへ同じ数字を入力する確認済みのデータを後工程へ引き継ぐ正式な記録先、登録方法、登録済みの識別
担当者ごとにExcelを保存・送付する共通の管理先で処理状況を共有する閲覧・編集権限、変更履歴
毎月の集計表をコピーして作り直す会計データ等から同じルールで集計する集計条件、締め日、元データとの照合

管理表をクラウドへ移すだけでは、二重入力が残る場合があります。「誰が何を入力し、その数字を次にどこで使うか」まで見直すことが重要です。

2.資料の受付から会計処理までをつなぐ

改善後の流れは、①決めた窓口へ資料を集める、②必要な項目を読み取る、③不足や重複を確認する、④担当者が承認する、⑤会計処理・支払管理につなげる、という形です。

見直したい業務の流れ

01受付をそろえる原資料を決めた保管先へ
02項目を読み取るOCR・AIで入力候補を作る
03例外を確認する不足・重複を原資料と照合
04人が承認する取引の実態・支払内容を確認
05後工程へつなぐ会計処理・支払管理・集計
原資料と処理状況を結び付け、同じ数字を別々の紙やExcelへ転記する作業を減らします。

原資料には識別できる番号やリンクを持たせ、処理状況と結び付けます。「受領済み」「確認待ち」「承認済み」「会計登録済み」「支払済み」を分けておけば、数字が入力されているだけで処理完了と誤解することも防ぎやすくなります。

本来の保存先と処理状況を管理する場所を決め、担当者ごとに同じ台帳を作らない運用にします。会社の規模に応じて、会計ソフトの機能、請求書管理・承認ツール、共有の業務アプリを組み合わせます。

3.架空の請求書5枚で、読取りと確認事項の整理を実演

今回の実演では、架空の請求書PDFを5枚作成し、その描画画像からAIが発行元、請求書番号、発行日、支払期日、税抜金額、消費税額、税込合計を読み取りました。その後、PDF本文と読取結果の照合、金額の検算、項目の一致・未記載のチェックを行っています。

5枚には、同じ請求内容が別経路で届くケース1枚と、支払期日の記載がないケース1枚を含めました。受領経路はモデル上の設定であり、実際のメール受信や紙のスキャンを検証したものではありません。

架空データによる実演

5枚を読み取り、確認事項を整理

記事用に作成した表示例です。会計ソフトの製品画面ではありません。

3件基本項目あり
1件確認待ち
1件重複候補

金額単位:千円(税込)/基本項目あり=今回の読取対象項目がそろった状態

A01 架空制作A社基本項目あり
税込合計
110.0 千円
支払期日
2026-10-31
請求書番号
DEMO-A-0930
A01の読取項目・次の確認を見る

発行日:2026-09-30/税抜:100.0千円/消費税:10.0千円

今回の読取対象項目がそろっている。

次の確認:担当者が原資料・取引内容を確認し、承認へ進める。

B01 架空設備B社基本項目あり
税込合計
66.0 千円
支払期日
2026-10-20
請求書番号
DEMO-B-0925
B01の読取項目・次の確認を見る

発行日:2026-09-25/税抜:60.0千円/消費税:6.0千円

今回の読取対象項目がそろっている。

次の確認:担当者が原資料・取引内容を確認し、承認へ進める。

C01 架空印刷C社基本項目あり
税込合計
27.5 千円
支払期日
2026-10-31
請求書番号
DEMO-C-0928
C01の読取項目・次の確認を見る

発行日:2026-09-28/税抜:25.0千円/消費税:2.5千円

今回の読取対象項目がそろっている。

次の確認:担当者が原資料・取引内容を確認し、承認へ進める。

A02 架空制作A社重複候補
税込合計
110.0 千円
支払期日
2026-10-31
請求書番号
DEMO-A-0930
A02の読取項目・次の確認を見る

発行日:2026-09-30/税抜:100.0千円/消費税:10.0千円

A01と発行元・請求書番号・日付・金額が一致。

次の確認:原資料と受領経緯を照合し、同一請求と確認後に1件へ整理。

D01 架空サービスD社確認待ち
税込合計
44.0 千円
支払期日
未記載
請求書番号
DEMO-D-0930
D01の読取項目・次の確認を見る

発行日:2026-09-30/税抜:40.0千円/消費税:4.0千円

支払期日の記載なし。

次の確認:契約・取引条件または発行元へ確認。期日は推測で補わない。

5枚の合計357.5千円 − 重複候補110.0千円 = 247.5千円

同一請求と確認して1件へ整理する想定の金額です。支払期日未記載の44.0千円を含み、支払承認額ではありません。

単位:千円。集計対象は、架空原資料A01・B01・C01・A02・D01の税込合計欄です。5枚をそのまま合算すると357.5千円ですが、A02をA01と同一請求と確認して1件に整理する想定では247.5千円です。このうち支払期日が未記載のD01は44.0千円で、基本項目がそろう3件は203.5千円となります。

「基本項目あり」は、支払承認済み・会計登録済みを意味しません。 契約、納品・役務提供の実態、振込先、勘定科目、税区分などは別途確認します。重複候補も自動削除せず、同一請求かどうかを原資料と受領経緯で確認します。D01の支払期日は推測せず、確認待ちとして残しました。

これは架空資料による読取り・照合の実演です。実在の顧問先事例や導入実績ではなく、処理時間の削減率・読取精度の一般的な性能を示すものでもありません。freeeへの登録、振込、人による承認は行っていません。

4.freeeの標準機能とAIをどう組み合わせるか

freeeのファイルボックスには、請求書や領収書の取り込み、OCRによる入力内容の推測、取引へのファイル添付といった機能があります。すでに使っている機能で処理できる範囲を確認し、同じ情報を入力する管理表を追加しない設計にします。

参考:freee公式ヘルプ「領収書等の取込方法:ファイルボックス」

AIの活用を検討しやすいのは、形式の異なる資料の整理、社内ルールに沿った確認事項の下書き、確認依頼文の作成、会計データからの集計・説明資料の作成です。標準機能で不足する工程を見極め、対象と確認方法を決めて使います。

会計ソフトへの登録方法は、使用する機能・契約プラン・権限に合わせて設計します。AIが作った一覧と会計ソフトの取引は、別のデータです。 登録結果を照合し、元の請求書へ戻れること、同じ請求書を再登録しないことまで確認します。今回の実演画面は、その前段階を説明するために作ったもので、freeeの製品画面ではありません。

関連:freeeの二重登録を確認・修正する手順

5.Excelは分析・試算に使い、日々の処理の二重管理を減らす

Excelには、予算の試算や個別の分析を柔軟に行える利点があります。一方、複数の担当者が毎日更新する受付台帳、承認状況、支払状況を別々のファイルで持つと、どれが最新かを確かめる作業が増えます。

日々の取引と処理状況は共通の管理先に集約し、Excelは必要な分析や試算へ使う。 この役割分担を目指します。分析用に出力する場合も、元データ、抽出日、対象期間を明記し、出力後の修正が正式な記録と混ざらないようにします。

移行途中に共有スプレッドシートを使う場合は、編集者・入力項目・更新ルールを決めます。既存Excelをそのまま共有フォルダへ移して終わらせず、廃止する入力欄や二重管理の終了時点まで決めると進めやすくなります。

6.紙を減らすときは、電子データと紙の保存を分けて考える

メール添付のPDFなど、電子取引で受け取った請求書は、原則として電子取引データの保存要件に沿って保存します。印刷物だけを残す運用や、AIの読取結果だけを残して元のPDFを消す運用にはしません。

紙で受け取った請求書の原本を廃棄する場合は、スキャナ保存の要件を満たす運用が前提です。入力期限や保存方法、原本と画像が同等であることの確認などを整えます。国税庁は、入力期間を経過した場合などには紙も保存する必要があると説明しています。

参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答」電子取引関係、スキャナ保存関係・問3/問10(2026年7月版)

資料の保管先を整える際は、閲覧・編集権限、退職・担当変更時の引継ぎ、バックアップも決めます。AIへ渡す情報の範囲は、利用サービスの契約・設定と社内ルールに合わせて定めます。

7.最初の一歩は、請求書の支払処理を一つ選ぶこと

最初から経理全体を一度に置き換える必要はありません。まずは毎月繰り返す一つの業務について、資料の入口から処理完了までを書き出します。

  1. どこで受け取り、どこへ印刷・転記しているかを確認する。
  2. 正式な保存先と管理先を決め、なくせる印刷・入力・集計を選ぶ。
  3. 少数の資料で試し、漏れ・重複・不明点を元の資料と照合する。
  4. 確認担当と承認者を決め、処理が止まったときの扱いを定める。
  5. 移行条件を満たしたら旧管理表の更新を終了し、必要な記録は保存する。

見直し前後には、印刷する枚数、同じ情報を入力する箇所、確認待ちの件数、月次の締めに要する日数などを記録します。自社で実測して、作業と管理の両方が改善したかを確かめます。

請求書処理を整えた後は、資料回収から残高照合・経営報告までの流れも見直します。月次決算を早める経理フローの見直し方で、担当者・期限・完了条件の決め方をご紹介しています。

紙・Excel中心の経理を見直したい方へ

当事務所では、現在の経理フローを確認し、freee、AI、クラウドを活用して、資料の収集から会計処理・月次資料までをつなぐ方法をご提案します。

「請求書を何度も入力している」「紙の回覧が止まる」「Excelの最新版が分からない」といった、今の困りごとからご相談いただけます。担当者が日々使える運用を、一緒に設計します。

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制度・製品情報の確認日:2026年9月30日。掲載した金額・発行元・請求内容は、すべて実演用の架空データです。