会計・経営 / 入出金予定と資金繰り
資金繰り表の作り方|月末残高だけでは分からない資金不足
「月次の利益は確認できるようになった。でも、次の給与や仕入代金の支払いに足りるかは分からない」。この段階で整えたいのが、入出金の予定を日付と金額で並べる資金繰り表です。
大切なのは、月末にいくら残るかに加えて、支払う日に、必要な口座に資金があるかを確認することです。この記事では、架空の数値例を使って、資料の集め方から予定と実績の更新までを整理します。
この記事の内容
利益の確認から、入出金の予定へ
売上を計上した日と代金を回収する日、費用を計上した日と実際に支払う日は、必ずしも一致しません。借入金の元本返済や設備代金の支払いもあるため、利益だけでは支払いに使える資金を判断できません。
利益と資金の違いは、以前のnote記事「利益は出ているのに、お金がない」で詳しく説明しています。今回は、その先の「いつ入金され、いつ支払うか」を確認するための作業に進みます。
基本の計算は、期首の資金残高 + 期間中の入金 − 期間中の出金 = 期末の資金残高です。損益計算書の売上高・費用をそのまま転記するのではなく、実際の回収・支払いの予定に置き換えます。
参考:日本政策金融公庫「上手な資金繰り方法」は、損益と資金の違い、資金繰り表の作成、予測と実績の比較を解説しています。
月末はプラスでも、月中に不足する例
次は、記事用に作成した架空の会社の入出金予定です。月初の資金が1,000千円、月内の入金合計が1,800千円、出金合計が1,600千円なら、月末残高の試算は1,200千円になります。
ところが、入金より先に仕入代金と給与の支払いが来ると、月中に不足します。月単位の集計だけでは見えない点を、日付順の予定で確認します。
架空の入出金予定 / 2026年10月
月末だけを見ると、途中の不足を見落とす
金額単位:千円。表示金額は実際の入出金額を想定しています。
月初1,000 + 入金1,800 − 出金1,600 = 月末1,200
月末はプラスでも、10月20日には200千円不足します。△は資金不足を示す試算値で、当座借越が使える前提ではありません。
日付ごとの予定と計算過程を見る
| 日付 | 内容 | 入金 | 出金 | 差引残高(試算) |
|---|---|---|---|---|
| 10/05 | 仕入代金の支払い | 0 | 800 | 200 |
| 10/20 | 給与の支払い | 0 | 400 | △200 |
| 10/26 | 売上代金の回収 | 1,200 | 0 | 1,000 |
| 10/28 | その他経費の支払い | 0 | 400 | 600 |
| 10/30 | 売上代金の回収 | 600 | 0 | 1,200 |
各行は直前の残高+入金−出金で計算。掲載した5件以外の入出金や新規借入はない簡略例です。実際の予定では税金・借入返済・臨時支出なども含めます。
この例では、10月20日の支払いまでに200千円の不足を解消する必要があります。月末に1,200千円残る予定だからといって、10月20日の支払いができるとは限りません。実際には入金の遅れや追加支出も考慮し、自社に必要な余裕資金を検討します。
最初に集める資料と、記録する項目
起点となる残高は、対象にする現金・預金の範囲と基準日を決め、実際の残高と帳簿を照合します。使途や引出しに制約がある資金は、通常の支払いに使える資金と区別して把握します。
| 入出金の項目 | 確認する資料 | 予定に入れるときのポイント |
|---|---|---|
| 売上代金の回収 | 請求一覧、契約・取引条件、入金明細 | 売上計上日とは別に、取引先ごとの入金予定日を確認する |
| 仕入・外注・経費の支払い | 請求書、支払一覧、契約書 | 支払期日と実際に支払う金額を確認する |
| 給与・税金・社会保険料 | 給与資料、納付資料、支払予定 | 給与の振込額と別途納付する預り金等を区分し、重複を避ける |
| 借入金の返済 | 返済予定表、引落明細 | 元本と利息、返済日、引落口座を確認する |
| 設備・臨時の支出 | 見積書、発注書、契約・支払条件 | 着手金・中間金・残金など、実際の支払時期に分ける |
予定の明細には、日付・入出金の区分・金額・相手先・対象口座・根拠資料・確認状況を残します。金額や日付が未確定なら、その旨と確認担当者を記録します。表を埋めるために、根拠のない入金日を決めてしまわないことが大切です。
資金繰り表には実際に入出金する金額を使います。税抜の帳簿データを使う場合は請求・支払額との違いを確認し、振込手数料などの支出も漏らさないようにします。
月別の見通しと、日付別の残高を組み合わせる
まず数か月先までの月別の見通しを作り、直近の支払いが集中する期間を日付別に確認します。見通す期間は固定せず、大きな納税・設備投資・賞与や繁忙期の支出が入るところまで延ばします。
同じ日の入金と出金も、実際には順番があります。入金が確認できる時刻、振込の締切、口座振替の条件などを確認し、当日の入金を待って支払えると安易に決めないようにします。
複数口座を合算した表で資金が足りていても、引落口座の残高が足りないことがあります。全体の資金と、支払口座の残高を両方確認します。自社口座間の振替は、全体の表で外部からの入金・外部への支出として重複計上しないよう区分します。
クレジットカードの利用も、購入時と口座引落時の両方を同じ資金繰り表の出金にすると重複します。口座から資金が出る予定日を管理し、請求確定前の利用分をどのように見込むかを決めておきます。
未確定の予定を分け、実績との差を更新する
入金予定は、金額・期日を確認できたものと、商談中の売上や調整中の回収など確度が異なるものを区別します。融資を相談している段階の資金を、入金確定として扱わないようにします。
大きな入金については、予定どおりの場合に加え、遅れた場合も確認します。必要な支出をそのままにして入金日だけを後ろへ動かし、いつ、いくら足りなくなるかを比べると、事前に確認すべき取引先や支払いが分かります。
予定日を過ぎた明細は、入出金の実績を確認して更新します。未入金を実績に置き換えず、確認中として残します。予定との差が金額の違いなのか、日付のずれなのかを分けておくと、翌月の見込みにも反映しやすくなります。
不足が見込まれた場合は、回収状況、支出の必要性・時期、資金調達の見通しを早めに確認します。支払条件の変更は契約や相手方との合意を確認して進め、借入については必要時期・金額・返済計画を整理して金融機関へ相談します。
転記を増やさず、続けられる管理方法にする
資金繰りの管理先を一つに決め、請求一覧、支払一覧、返済予定表、口座明細と結び付けます。クラウドの共有や自動集計を利用する場合も、更新担当者、確認日、参照元を分かるようにします。
AIには、資料からの項目の読取り、予定の一覧化、未確認事項や差異の抽出を補助させることができます。合計と日付順の残高は計算式で検算し、元資料との対応を残します。AIが推測した入金日や金額を、そのまま確定情報として採用しない運用が必要です。
会計処理が追い付かず、起点となる残高や未処理の状況が分からない場合は、月次決算を早める経理フローの見直し方も併せてご覧ください。
当事務所では、利益と資金の動きを分けて確認し、経理フローや管理資料を含めて、経営判断に必要な情報を整理します。現在の資料とお困りごとを伺い、支援範囲をご案内します。財務顧問の内容を見る
資料確認日:2026年9月30日。数値例は当事務所がこの記事のために作成した架空の予定です。特定の会社の情報や実際の融資条件を示すものではありません。