経理システムの見直し 03 / 06

経理システム入れ替えの見積りはどう比べる?費用と作業範囲の確認ポイント

執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)
関連資料確認:2026年10月15日

01条件をそろえる
02範囲を比べる
03総費用を見る
04完了条件を合意
この記事の内容

経理システムの入れ替えで複数社から見積りを取ったものの、金額も項目も違い、比べられないことがあります。「移行一式」に含まれる範囲が違えば、安く見える提案でも、自社で行う作業が多いかもしれません。

見積りは、対象業務・移行データ・利用条件・確認期間をそろえて比較します。 初期費用と継続費用に加え、会社側が担う作業と、追加料金になる条件まで確認してください。

同じ条件で見積りを取り直せるようにする

まず各社へ伝えた条件を確認します。利用人数、拠点、対象業務、連携先、移行する期間、必要な帳票が異なるままでは、総額の差が何によるものか分かりません。

条件がまだ決まっていない場合は、基本案と追加案を分けてもらいます。例えば、過去データを新システムへ移す場合と、過去分を別途保管する場合では、移行作業と保管・閲覧の費用が変わります。過去資料の保存方法は、法令上の保存要件と契約条件も確認したうえで選びます。

IPAの要件定義の解説でも、必要な業務や機能を具体化し、関係者と合意することが説明されています。見積りを依頼する条件も、この合意内容と対応させます。参考:IPAの要件定義の解説

費用を七つに分けて確認する

費用・作業 見積りで確認する内容
製品・サービスの利用 契約期間、利用人数、容量、対象機能、更新時の条件
初期設定 会社情報、勘定科目、税区分、部門、権限、承認ルート
データ移行 対象期間、残高・明細・添付資料、変換、照合、再移行
外部連携・個別対応 販売・請求・給与等との連携、帳票、追加開発、仕様変更
操作説明・運用整備 説明する対象者、回数、手順書、問い合わせ対応
保守・導入後の対応 不具合、設定変更、法令・製品更新、対応時間帯
切替に伴う社内負担 データ整理、テスト、並行運用、会議、通常業務の代替

「データ移行費用」にデータ整理が含まれるかは特に重要です。取引先の重複を直す、残高の差額を調べる、不要な部門コードを整理する、といった作業を会社が行う前提なら、担当者と時間の確保が必要です。

比較期間をそろえて総額を見る

導入時の支払額だけでなく、自社が比較に使う期間を決めて費用を並べます。毎月の利用料が変わる条件や、年単位で支払う費用も含めてください。

比較期間の支払総額は、次のように整理できます。

初期設定・移行等の一時費用 + 比較期間中の利用料・保守料 + 必要な追加作業費 + 旧システムの継続・データ保管費

社内担当者の作業時間は、外部への支払額とは別に集計します。実測した作業時間や会社で定めた人件費の前提を使えば、現行業務を続ける場合との比較材料になります。単純に入力時間が減っても、その分だけ人件費の支払額が減るとは限らないため、残業の削減、確認時間の確保、処理量の増加など、効果の中身も分けます。

金額を表に記入するときは、税込・税抜、通貨、対象期間をそろえてください。補助金等を検討する場合も、採択や支給を前提に予算を確定せず、制度の条件と実際の資金支出時期を別途確認します。

安い理由 高い理由を作業に戻して確認する

次の比較表に、各社の回答を記入します。「含む」という回答だけでは判断しにくい項目は、対象範囲を具体的に書いてもらいます。

比較項目 各社に記入してもらう内容
移行対象 何期分のどのデータを移すか。添付資料・履歴も対象か
数字の確認 誰が、どの帳票・明細で、何と照合するか
会社側の準備 どの形式のデータや資料を、いつまでに用意するか
例外処理 返品、取消し、一部入金などが標準機能で扱えるか
受入確認 どの条件を満たすと作業完了とするか
導入後の対応 何を、いつまで、どの連絡方法で対応するか
追加料金 件数増加、再作業、条件変更等で費用が変わる場合
終了・再移行 契約終了時に取得できるデータ、形式、費用、期限

提案の価格差が、機能の差なのか、支援範囲の差なのかを確認します。自社でできる作業を依頼範囲から外す場合は、その作業が遅れたときの影響も把握しておきましょう。

発注前に追加作業と完了条件を決める

追加作業が必要になった場合の、内容説明、見積り、承認、着手の順番を確認します。口頭で機能を追加し続けると、費用と日程の見通しが立たなくなります。変更内容、理由、影響、承認者を記録できる方法を用意してください。

作業完了の確認では、画面が動くことに加え、代表的な取引を処理できるか、移行後の残高・明細が対応するか、必要な帳票を出せるかを確認します。未解決事項が残る場合は、対応者、期限、業務への影響を記録したうえで、稼働を開始できるか判断します。

見積りをもらった後の質問例

この見積りでは、当社が行うデータ整理と確認作業はどこまででしょうか。移行対象、残高照合、再移行、導入後の対応について、含まれる作業と追加料金になる条件を教えてください。また、作業完了の判定に使う帳票と確認項目を、契約前に共有できますでしょうか。

この文例を基に、自社の未決定事項を追加します。そもそも必要な機能が定まっていない場合は、システム入れ替えの進め方に戻って、業務と目的を整理すると比較しやすくなります。

会計・業務の観点から見積りを確認したい方へ

岡田健志公認会計士・税理士事務所では、現在の経理フローと、導入後に必要な会計処理・月次確認を整理します。提案書や見積りがある場合は、会計・業務面で確認したい事項をまとめ、支援が必要な範囲をご相談いただけます。製品の技術仕様や契約の個別条件は、提供会社等への確認と合わせて進めます。

よくある質問

月額料金が安い製品を選べば総費用も下がりますか?

初期設定、移行、連携、保守、社内作業によって総費用は変わります。同じ対象範囲と比較期間で、月額以外の費用を合わせて確認してください。

見積りに「移行一式」と書いてあれば照合も含まれますか?

表現だけでは判断できません。対象データ、変換作業、照合に使う帳票、確認担当、再移行が必要な場合の費用を確認します。

ベンダーを決めた後でも相談できますか?

相談できます。既に合意した範囲と残っている確認事項を整理します。追加や変更が必要な場合は、既存の契約と日程への影響を確認し、関係者で合意して進めます。


執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)。関連資料確認日:2026年10月15日。

お気軽にお問合せください

フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。

岡田けんし
公認会計士・税理士事務所

住所

〒553-0003 大阪府大阪市福島区福島5丁目13-18 福島ビル422号室

アクセス

福島駅から徒歩1分

受付時間

10:00~18:00

定休日

土曜・日曜・祝日