赤字決算・税金と申告
法人が赤字でも税金はかかる?均等割・消費税・欠損金の確認ポイント
法人が赤字でも、税金の申告や納付がなくなるわけではありません。 法人住民税の均等割や消費税は、会社の最終的な利益とは異なる仕組みで計算します。また、決算書では赤字でも、税務上の調整によって所得が生じる場合があります。
この記事では、国内の株式会社・合同会社などを想定し、「どの税金が残るのか」「赤字でも申告する理由」「決算前にそろえる資料」を整理します。制度・税率は2026年10月20日時点の公式案内を確認しています。
会計上の赤字と、法人税の所得は同じではない
法人税の所得は、会計上の当期利益・損失を出発点に、税務上必要な加算・減算をして計算します。会計で費用にした金額のうち、税務では損金に算入できない部分があれば、加算が必要です。したがって、試算表の赤字額だけでは法人税の有無を判断できません。国税庁:法人税の基本的な仕組み(2頁)
次は税務調整の関係だけを示した架空例です。会計上の当期純損失が20万円、税務上の加算が50万円で、他の加算・減算や繰越欠損金の控除がないものとします。
決算書の損失
損金に算入できない額など
税額ではありません
この例では、△20+50=30万円の所得が生じます。実際には法人税申告書の別表四等で調整項目を確認し、過年度の欠損金や税額控除も含めて計算します。この30万円は税額ではありません。
赤字の会社が確認したい税金
表は横にスクロールできます。
| 項目 | 赤字でも確認する理由 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 法人税など所得に関係する税金 | 会計上の赤字と税務上の所得は一致しない場合がある | 決算書、税務調整、過年度の申告書 |
| 法人住民税の均等割 | 所得の有無とは別に、事務所等の所在や規模などで計算する | 所在地、資本金等の額、従業者数、事務所等の存在月数 |
| 消費税・地方消費税 | 利益ではなく、課税売上げ・課税仕入れ等や適用制度に基づいて計算する | 納税義務の判定資料、登録・届出、売上・仕入れの明細 |
| 源泉所得税等 | 給与・対象報酬の支払いに伴う徴収・納付義務は、会社の損益とは別に確認する | 給与台帳、報酬の支払明細、徴収・納付の記録 |
法人事業税も、所得割だけでなく、外形標準課税の付加価値割・資本割や、一定の事業の収入割があるため、対象法人・事業を確認します。「赤字なら法人事業税は必ずゼロ」と一律には判断できません。大阪府:法人事業税
給与や対象となる報酬から徴収した税金の納付も、資金予定に含めます。国税庁:源泉徴収義務者とは
大阪市内の均等割は、どのくらいかかる?
法人住民税には法人税割と均等割があります。大阪市は、法人税がかからない赤字の法人でも、均等割の申告・納付が必要と案内しています。大阪市:法人市民税Q&A・Q8
例えば、均等割の判定に用いる資本金等の額が1,000万円以下で、大阪市内の1区だけに事務所等を12か月有し、その区内の従業者数が50人以下の通常の法人なら、年額は大阪府民税2万円と大阪市民税5万円の合計7万円です。従業者数には役員も含みます。これは、均等割だけの例です。
「資本金等の額」は、登記上の資本金だけで判定するものではありません。税務上の資本金等に必要な調整をした額と、資本金・資本準備金の合計額等との比較が必要です。大阪府:資本金等の額の説明
設立・廃止で事務所等の存在期間が短い場合や、複数の自治体・大阪市内の複数区に事務所等がある場合は計算が変わります。特に大阪市内は区ごとに均等割を計算するため、すべての会社が年7万円になるわけではありません。
消費税は、利益が赤字でも納付になることがある
まず、基準期間・特定期間の課税売上高、インボイス登録、課税事業者選択の届出等から、対象期間の納税義務を確認します。当期が赤字という理由だけで免税にはなりません。国税庁:納税義務の免除
一般課税では、課税売上げに係る消費税額から、控除できる課税仕入れ等の消費税額を差し引きます。給与・賃金は課税仕入れに含まれないため、人件費で赤字になっても、それだけ消費税の納付額が減るわけではありません。国税庁:課税売上げと課税仕入れ
次は仕組みを説明する架空例です。税抜経理・一般課税とし、売上げと仕入れはすべて標準税率10%、仕入れ400万円は全額当期の費用、仕入税額控除の要件を満たして全額控除できるものとします。他の収益・費用、税務調整、中間納付は考慮しません。
単位:万円
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| 項目 | 損益の計算に使う金額 | 消費税・地方消費税の計算 |
|---|---|---|
| 売上げ | 1,000 | 売上げに係る税額 100 |
| 仕入れ | △400 | 控除する税額 △40 |
| 給与 | △700 | 課税仕入れに含まれない |
| 合計 | △100(法人税等計上前の損失) | 納付額 60 |
損益は1,000-400-700=△100万円、消費税・地方消費税は100-40=60万円です。実際の計算は、課税売上割合、インボイス等の保存、簡易課税や特例の適用によって変わります。赤字額をそのまま消費税計算へ持ち込まないことが大切です。国税庁:仕入控除税額の計算方法
赤字でも申告し、欠損金の情報を残す
通常の内国法人は、欠損により納付すべき法人税がない場合も確定申告が必要です。申告期限は原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内です。決算・申告・納付の段取りは、法人の決算後にやることも参考にしてください。国税庁:確定申告(12〜13頁)
税務上の欠損金は、要件を満たすと翌期以後の所得から控除できる場合があります。2018年4月1日以後に開始した事業年度で生じた青色欠損金の繰越期間は原則10年です。欠損が生じた期の青色申告、その後の連続した確定申告、一定の帳簿書類の保存などが必要になります。
控除限度額は法人の区分等によって異なり、組織再編や支配関係の変更に伴う制限もあります。決算書の繰越利益剰余金のマイナス額を、そのまま税務上の繰越欠損金として使うことはできません。申告書別表七(一)等で、発生年度・使用額・残額を確認します。国税庁:青色欠損金の繰越控除(法人税法57条等)
よくある質問
赤字で法人税がゼロなら、申告しなくてもよいですか?
通常の株式会社・合同会社などは、納付すべき法人税がなくても確定申告が必要です。法人住民税の均等割や消費税等の申告・納付も別に確認します。欠損金の繰越に必要な申告・帳簿保存も続けてください。
前年に払った法人税は、赤字になれば自動で戻りますか?
自動では戻りません。対象となる中小企業者等には欠損金の繰戻しによる還付制度がありますが、青色申告の継続、欠損期の期限内申告、申告と同時の還付請求等の要件があります。繰越控除との関係も含め、申告前に確認してください。
社長が会社へお金を入れたら、赤字は解消しますか?
社長からの実際の借入れであれば、会社の預金と借入金が増える取引であり、売上や利益は増えません。資金不足の補填と損益の改善を分けて考え、借入金の残高・返済予定も管理します。
役員との資金のやり取りは、役員借入金と役員貸付金の違いで説明しています。
決算前に、税額の見込みと支払予定をそろえる
赤字が見込まれるときほど、申告直前まで待たずに、次の資料をそろえて税理士と確認します。
- 最新の試算表と未処理事項:何月まで記帳済みか、未計上の売上・費用、残高不一致の有無。
- 過年度の申告書一式:税務調整、欠損金の発生年度と残額、当期の中間納付。
- 地方税の判定資料:事務所等の所在地・設置期間、資本金等、従業者数。
- 消費税の登録・届出と明細:インボイス登録、適用する計算方法、売上・仕入れの内容。
- 資金予定:手元資金、入金予定、税金・給与・仕入代金・借入返済の支払予定。
税額がまだ確定していない段階では、確定額と見込額を区別し、更新日・計算の前提・担当者を残します。資金繰り表に納付予定を入れ、毎月の数字の確認と合わせて、赤字の原因と次の対応を整理してください。
岡田健志公認会計士・税理士事務所では、記帳状況と資料を確認し、月次の数字の確認から決算・申告までの支援をご案内します。ご相談の際は、決算月、会計ソフト、記帳済みの月、直近の損益、資金面で気になっていることをお知らせください。対応範囲と料金は着手前にご案内します。