AIへ資料を渡す前は、まずその情報が必要かを確かめ、使う範囲を絞ります。 氏名を置き換えるだけで、どの環境へでも入力してよい資料になるわけではありません。内容の組合せや残った記載から、誰のことか分かる場合も考えて確認します。
この記事は架空の社内資料で、共有する情報を減らす作業例を示します。実データの処理や、特定の資料について入力の適法性・安全性を判断するものではありません。
1.伏せる作業より先に、使わない情報を外す
資料全体が必要か、列名と架空の数行で試せるかを確認します。業務の流れを相談するだけなら、実際の氏名、連絡先、口座番号などが不要なこともあります。
| 確認する項目 | 整理すること |
|---|---|
| 利用の目的 | 何を確認するために資料を使うか |
| 必要な情報 | 目的に必要な列や文章の範囲 |
| 不要な情報 | 取り除く行、列、添付、注記 |
| 利用環境 | 会社が認めたサービス、契約・設定、共有先 |
| 確認者 | 入力前の資料と共有範囲を確かめる人 |
個人情報保護委員会は生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しています。利用する情報と環境の確認を、単なる文字の置換だけで済ませないようにします。
2.架空の名称へ置き換えるときは対応を保つ
例えば架空の説明用資料で、同じ担当者を「担当者A」とするなら、別の行でも同じ記号にそろえます。別人を同じ記号にまとめると、業務の関係が変わってしまいます。
| 処理の例 | 確認すること |
|---|---|
| 氏名を記号へ置換 | 同一人物の対応と、別人との区別が保たれるか |
| 会社名を架空名へ置換 | 部署名、支店名、文中の略称も確認したか |
| 連絡先を削除 | 本文だけでなく署名、注記、添付にも残っていないか |
| 実値を架空値へ変更 | 実データと混在せず、説明用と分かるか |
金額や日付を架空値へ変えると、合計や期間の整合性が変わる場合があります。元の数値の検証が目的なら、勝手に値を変えてから「正しい」と判定しないようにします。
3.ファイル名・注記・非表示の部分も確認する
本文や表の見えるセルだけで作業を終えず、ファイル名、シート名、コメント、非表示の行やシートなども確認対象にします。画面を撮る場合も、周囲の見出しや他の資料名が写り込んでいないかを見ます。
黒い図形を重ねる、文字色を背景と同じにするなど、見た目だけで隠す方法を情報の削除と扱わないようにします。共有する控えを別に作り、実際に渡すファイルの内容を確認します。
| 残りやすい場所 | 共有前の確認 |
|---|---|
| ファイル名・保存先の記載 | 取引先名や個人名が含まれていないか |
| 注記・署名・コメント | 本文以外に元の情報が残っていないか |
| 非表示の部分 | 作業用の元データが含まれていないか |
| スクリーンショットの周囲 | 別の顧客名、タブ、通知等が写っていないか |
4.対応表と元資料を、入力用の控えから分ける
置換前後の対応表を、置換した資料と一緒にAIへ渡すと、伏せた情報が再び結び付くことがあります。対応表は必要な担当者が会社の定めた場所で管理し、利用先へ当然に添付する運用にはしません。
共有前は、使う資料、相手、利用環境、入力してよい情報の範囲を確認します。実データを外部のAIへ先に渡し「必要な情報を消してください」と依頼する方法を、入力前の対策の代わりにしません。
5.最初は架空資料で、業務の形を相談する
列名、書類の種類、困っている工程が分かれば、最初の相談を始められます。経理のAI社内ルールで利用環境と確認の分担を整理し、必要になった段階で実資料の扱いを確認します。
当事務所では、対象業務と資料の扱いを確認してから試行範囲を決めます。料金・標準範囲と成果物の見本をご覧ください。初回から実資料一式を送る必要はありません。
よくあるご質問
名前をAさんへ置き換えれば入力できますか?
それだけで入力してよいとは判断しません。残る情報の組合せ、使う目的、利用環境、会社のルール、共有範囲を確認します。
マスキングを外部のAIに任せてから使えますか?
元資料を入力してよいか未確認の環境へ、先に渡す方法にはしません。入力前に使う範囲を絞り、架空資料で代替できるか検討します。
対応表は一緒に添付する必要がありますか?
必ずしも必要ありません。説明用の記号の対応があれば足りる場面もあります。元の個人や会社へ戻る対応表は、共有の必要性と管理する担当を別に確認します。
実際の資料がないと相談できませんか?
最初は列名や架空例、現在の作業の説明から相談できます。実資料が必要になった場合は、共有方法と利用環境を先に確認します。
参考資料
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」。本記事の表は共有前の作業を整理する説明例で、法令の要件を網羅したものではありません。