AI・業務改善

経理で生成AIを使う前に決める社内ルール|入力してよい情報・確認の分担・保存

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経理・総務で生成AIを使い始めるときは、使うサービス、入力する情報、確認する人、保存するもの、見直す時期を決めます。

最初から分厚い規程を作る必要はありません。例えば「資料依頼メールの下書き」一つからでも、会社が許可する範囲と、人が確認する手順を一枚に整理できます。この記事では、1部署・1業務で始める会社を想定し、社内ルールの見本を紹介します。

ここで示す入力区分や禁止事項は、導入時の社内ルールの例です。すべての会社やサービスについて、一律に入力の可否を判断するものではありません。

1.使うサービスと契約を会社で決める

業務に使うAIは、会社が承認し、利用者と設定を管理できる環境にそろえます。従業員がそれぞれの判断で契約した個人アカウントへ、取引先の資料を入力する運用は避けます。

承認する前に、次の点を確認して記録します。

確認すること社内に残す内容
サービス・契約プラン提供者、契約名義、対象プラン、確認した規約の日付
入力・出力の取扱いモデル学習等への利用、保存期間、削除方法、事業者によるアクセスの条件
利用者と管理者アカウントの発行・停止、権限、退職・異動時の対応
外部連携参照できるフォルダ、接続先、外部へ送信・書込みできる権限
問題が起きたとき利用停止の方法、社内の連絡先、サービス提供者への連絡方法

「有料版だから大丈夫」「学習に使われない設定だから何でも入力できる」とは判断しません。入力する目的と情報、契約、設定、実際の使い方を合わせて確かめます。

個人情報については、利用目的の特定・目的外利用の制限、安全管理措置、委託する場合の委託先の監督が定められています。AIを使う場合にも確認が必要です。根拠は個人情報保護法17条1項・18条1項・23条・25条です。

2.入力してよい情報を3つに分ける

担当者が毎回迷わないよう、情報を「入力できる」「条件を確認してから」「入力しない」に分けます。最初は架空データや公開情報で試し、実データへ広げる条件を決める方法が取りやすいでしょう。

区分情報の例このルール見本での扱い
入力できる公開済みの情報、架空データ、個人情報・機密を含まないことを確認した定型文会社が承認したサービスで、承認された業務に使う
条件を確認してから取引先名・金額を含む請求書や売上データ、社内の規程・業務資料利用目的、法令・契約、サービスの取扱いと権限、必要な範囲を確認し、管理者が対象を定めてから使う
入力しないマイナンバー、病歴など特に取扱いに配慮が必要な情報、パスワード・口座の認証情報、契約で利用が制限された情報この導入対象には含めず、別の取扱い手順を決める

取引先の担当者名や個人事業主の情報など、会社の資料に個人情報が含まれることもあります。氏名だけを消しても、他の情報との組合せで本人を識別できる場合があるため、「名前を伏せたから入力可」とはしません。

個人情報保護委員会は、生成AIへの個人情報の入力が利用目的の達成に必要な範囲内かを確認すること、個人データを入力する場合は機械学習に利用されないこと等を十分に確認することを注意喚起しています。個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」

また、個人データの第三者提供・委託への該当性は、サービス提供者がそのデータをどう取り扱うことになっているかなどで判断が変わります。国外の提供者等を利用する場合は、外国にある第三者への提供に関する規律も確認します。会社の内部承認だけで、法令上必要な確認や手続が済むわけではありません。 根拠・考え方は個人情報保護法27条・28条と、個人情報保護委員会Q&A 7-53を参照してください。

3.AIの出力は下書きとして確認する

出力の確認を「注意して見る」で終わらせず、誰が何を照合し、誰が使用を承認するかを決めます。

役割確認すること
作成担当者対象資料、指示した内容、出力の抜け、元資料の所在を確認する
確認者日付・相手先・金額・合計を原本や会計データと照合する。重複・空欄・例外を判断する
承認者社外への送信、支払、会計登録など、実際に使う操作を承認する

小規模な会社では、確認者と承認者を経営者が兼ねる場合もあります。その場合も、担当者が作った一覧やメールを、確認前に外へ出す流れにしないことが大切です。

例えば、請求書の金額が一覧に正しく転記されていても、支払ってよい取引か、すでに支払済みかは別の確認です。勘定科目・税区分・税務上の取扱いも、AIの出力だけで確定しません。

本稿のルール見本では、AIからの支払実行、メール送信、会計ソフトへの登録確定を禁止し、人の確認・承認を通します。自動実行を導入する場合は、この見本とは別に権限と承認の設計が必要です。

4.原本と、確認の記録を残す

AIが作った一覧や要約に加え、どの原本から作ったのか、人がどこを直したのかが分かる記録を残します。

残すもの決めておくこと
元の請求書・領収書・報告ファイル原本の保存先、対象年月、版、アクセスできる人
使った指示ひな形・設定使用した版、対象業務、参照する資料の範囲
確認用一覧・修正内容元資料のファイル名や行番号、要確認の理由、修正前後
承認・例外の記録確認者、確認日、判断の根拠、残った保留事項

電子メール等で受け取った請求書などの電子取引データは、該当する保存義務と要件に従って保存します。AIで要約や一覧を作ったことを理由に、元の電子取引データを消す運用にはしません。根拠は電子帳簿保存法7条と、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」2026年7月版です。

仕入税額控除についても、原則として帳簿及び請求書等の保存が必要です。AIの確認用一覧だけを、保存が必要な帳簿・請求書等の代わりにするものではありません。根拠は消費税法30条7項です。

一方で、AIへの入力・出力を必要以上に複製し、別の場所へ機密情報を増やさないことも必要です。処理記録の保存範囲・期間・アクセス権限を会社で決め、法定保存が必要な資料と作業上の記録を分けて管理します。

5.見直す時期と、問題が起きたときの連絡先を決める

社内ルールは、導入した日だけで終わりにしません。少なくとも、サービスの規約・設定、担当者、対象業務、外部連携が変わったときに見直します。

例えば「請求書の確認用一覧」から「従業員の経費精算」へ対象を広げると、入力する情報や確認事項が変わります。以前の承認をそのまま使わず、追加する範囲を確かめます。

誤った情報を入力した、想定外の送信・書込みが起きた、他人の資料が表示されたといった場合は、処理を止め、社内の管理者へ連絡する手順を決めます。調査に必要な記録を勝手に消さず、アクセス制限や提供者への連絡などの対応を管理者が判断します。

一枚から始める社内ルールの見本

以下は「経理部で、請求書の確認用一覧を作る」場合のひな形です。空欄を自社の内容で埋め、入力情報の条件を確認してから運用を始めます。

項目記載例・記入欄
目的・対象業務経理部で、指定した請求書から確認用一覧を作成する。支払・会計登録の確定は含めない
サービス・管理者使用サービス/契約プラン:____ 管理者・連絡先:____
対象資料対象ファイル・保存先・参照範囲:____。指定外のフォルダを接続しない
入力の区分公開・架空情報は承認環境で利用可。実データは管理者が法令・契約・取扱条件を確認し、許可した範囲に限る。禁止情報は入力しない
確認・承認作成:____ 確認:____ 承認:____。金額・日付・相手先・重複を原本と照合する
保存原本・一覧・確認結果の保存先:____。指示ひな形の版と確認日を残す。保存期間・アクセス権限:____
禁止・停止マイナンバー、病歴等、認証情報、契約で制限された情報は対象外。自動送信・支払・登録確定をしない。想定外の処理は停止して管理者へ連絡する
見直し開始日:____ 次回確認日:____。規約・設定・担当者・対象業務・接続先の変更時は再確認する

この見本では、実データの入力を原則自由にはしていません。対象となる資料、サービスの取扱条件、法令・契約上の条件を確認できない間は、架空データで手順を試します。

ルールと業務の手順を一緒に整える

ルールだけ作っても、担当者が実際の操作で迷えば使い続けにくくなります。対象資料の保存先、指示ひな形、要確認の表示方法、承認と記録まで、一つの業務の手順としてそろえます。

当事務所のAI導入支援では、着手前に利用環境・権限・AIに渡す情報の範囲を確認し、1部署・1業務から進めます。完了時には、業務フロー、業務用の指示ひな形、確認チェックリスト、操作マニュアルを、会社で再利用できる保存先に残します。

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具体的な業務の選び方は、経理・総務で使える生成AIの具体例7つで紹介しています。

よくあるご質問

無料版のAIを業務で使ってもよいですか?

無料・有料という区分だけでは判断できません。会社がサービスの契約条件と設定を確認し、扱う情報と業務を定めます。本稿の見本では、会社が承認していない個人アカウントへ業務資料を入力しない運用にしています。

取引先から届いた請求書を読み込ませてもよいですか?

取引先名・担当者名などの情報、利用目的、取引先との契約、AIサービス側の取扱いを確認して判断します。個人データの第三者提供や委託、外国にある第三者への提供に関する確認が必要な場合もあるため、管理者の内部承認だけで判断を終えないようにします。

AIの誤りで間違った数字を使った場合、誰の責任になりますか?

社内では、確認者・承認者と、訂正する手順を先に決めます。法的な責任の所在は、契約、利用状況、具体的な事実関係で異なります。「AIが作ったから会社に責任はない」とせず、原本との照合と承認を通す運用にします。

社内ルールは就業規則に入れる必要がありますか?

業務手順や情報の取扱規程として整理する方法があります。就業規則との関係、従業員への周知、懲戒などに関わる内容を定める場合は、社会保険労務士や弁護士等に確認してください。この見本だけで就業規則上の取扱いを判断するものではありません。

参考資料

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岡田けんし
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