AI・業務改善

中小企業の経理・総務で使える生成AIの具体例7つ|任せる作業と人が確認すること

公開:2026年8月17日 / 更新:2026年10月25日 / 執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)

税理士と中小企業経営者がAIを使って業務フローを改善するイメージ

生成AIを経理・総務で使うとき、効果が出やすいのは仕訳や税金の判断ではありません。資料を一覧にする、文章の下書きを作る、確認漏れの候補を挙げる、といった判断の前の準備です。

この記事では、中小企業の経理・総務で使える7つの具体例を、AIに任せる作業と人が確認することに分けて紹介します。最後に、最初に取り組む1業務の選び方と、自社で始めるときの進め方をまとめます。例に出す会社・資料・金額は架空です。

7つの具体例を一覧で見る

No.業務AIに任せる作業人が確認すること
1請求書・領収書の確認用一覧取引先・日付・金額などを一覧にし、記載漏れ・重複の候補に印を付ける原本との照合、重複の判断、支払・会計登録の承認
2Excelへの転記・月次集計様式の違うファイルの列を対応付け、確認が必要な行を洗い出す集計結果と元ファイルの合計の一致、除外した行の理由
3取引先への定型メール資料の依頼や支払・請求の確認の文面を下書きする宛先・金額・期日などの事実、送信
4議事録・社内文書の整理メモや文字起こしから、決定事項・担当・期限を整理する決定内容の正確さ、配布してよい範囲
5経費精算の記載漏れの確認社内規程の確認項目に沿って、記載漏れ・添付漏れの候補を挙げる規程の当てはめ、承認・差戻し
6社内規程・マニュアルへの質問対応規程の該当箇所を探し、要約して示す回答の根拠となる条文、規程にない例外
7月次資料の増減コメントの下書き会計データから出した増減表をもとに、説明文の下書きを作る数字の正しさ、増減理由の事実

どの例でも、AIが作るのは「下書き」や「候補」です。内容を確定し、外へ出すのは人です。

各例の使い方

1.請求書・領収書の確認用一覧

今の作業
届いた請求書を一枚ずつ開き、取引先・請求日・金額・支払期日を管理表へ手で写しています。
AIで変わること
指定したファイルだけを対象に、決めた項目の一覧を作ります。記載がない項目は推測させずに「要確認」と書かせ、取引先・請求番号・金額が同じ資料は「重複候補」として残すよう指示しておきます。
人が確認すること
一覧と原本の照合、重複候補の扱い、合計の検算です。支払と会計ソフトへの登録は、人が確認・承認してから行います。
用意するもの
対象ファイルの保存先とファイル名のルール、一覧にする項目。

架空の請求書5枚で読取りと確認事項の整理を実演した記事は紙・Excel中心の経理を見直す、確認用一覧・確認票・操作手順の見本はAI導入支援の成果物見本でご覧いただけます。

2.Excelへの転記・月次集計

今の作業
部署や営業所から届くExcelを開き、列の名前や並びの違いを読み替えながら、月次の集計表へ写しています。
AIで変わること
各ファイルの列が集計表のどの列に当たるかの対応表と、税込・税抜の混在、合計行の混入、重複、空欄など、確認が必要な行の一覧を作ります。
人が確認すること
集計そのものはExcelの式(SUMIFS関数やピボットテーブル)で行い、元ファイルの合計と一致するかを確かめます。AIが計算した数字をそのまま集計表に使わないことがポイントです。
用意するもの
集計表の完成形、元ファイルの例、例外の扱い(税込金額の換算方法、端数処理)。

3.取引先への定型メール

今の作業
資料の依頼、支払の確認、請求内容の問い合わせなど、似た文面を毎回一から書いています。
AIで変わること
用件・相手・期日を伝えて下書きを作ります。よく使う文面をひな形にしておけば、担当者が替わっても言い回しがそろいます。
人が確認すること
宛先、金額、日付、期日、添付の有無です。送信は人が行い、AIから直接送らせません。
用意するもの
過去の文面の例、社内の書き方のルール。

4.議事録・社内文書の整理

今の作業
会議のメモを清書し、決まったことや担当者を後から探しています。
AIで変わること
メモや文字起こしから、決定事項・担当者・期限・保留事項に分けた下書きを作ります。
人が確認すること
決定内容が正しいか、発言の趣旨が変わっていないか、配布してよい範囲かを確認します。
用意するもの
議事録の様式、文字起こしの方法。録音する場合は出席者に了承を得ます。

5.経費精算の記載漏れ・添付漏れの確認

今の作業
申請書と領収書を見比べ、日付・金額・目的・参加者などの抜けを目で探しています。
AIで変わること
社内規程から作った確認項目に沿って、記載漏れや添付漏れの候補を挙げます。
人が確認すること
規程の当てはめと例外の扱い、承認・差戻しの判断です。交際費かどうかといった税務上の区分も人が判断します。
用意するもの
経費精算規程、確認項目の一覧、過去に差し戻した例。

6.社内規程・マニュアルへの質問対応

今の作業
「出張の日当はいくらか」「この書類はどこに出すか」といった質問に、経理・総務の担当者が毎回答えています。
AIで変わること
規程やマニュアルを参照させ、該当箇所と要約を示します。社員が自分で調べるときの入口になります。
人が確認すること
回答に根拠の条文が示されているかを確認します。規程にない例外は担当者が判断します。規程を改定したら、AIに参照させる版も差し替えます。
用意するもの
最新の規程・マニュアル、参照させる範囲、答えられない質問の問い合わせ先。

7.月次資料の増減コメントの下書き

今の作業
試算表の前月比・前年同月比を見て、増減の理由を文章にまとめています。
AIで変わること
会計ソフトから出した増減表を渡し、大きく動いた科目の抽出と説明文の下書きを作ります。
人が確認すること
数字は会計データのものを使い、AIに計算させません。増減の理由は取引の事実で確かめます。売上が本当に減ったのか、計上の時期がずれただけなのかは、帳簿と資料を見なければ分かりません。
用意するもの
毎月同じ形式の増減表、説明に使う社内の情報(受注の状況、値上げ、人員の変化など)。

月次の数字の見方は会社の数字を毎月どう見る?で解説しています。

AIに任せないこと

7つの例に共通して、次の4点は人が担います。

  1. 会計処理・税区分・税務の判断。 仕訳の候補を作らせることはできても、どの勘定科目・税区分にするかを確定するのは人です。
  2. 外へ出ていく操作。 支払の実行、メールの送信、会計ソフトへの登録の確定を、AIの出力から直接行わせません。
  3. 承認と記録。 誰が確認し、誰が承認したかを残します。
  4. 入力する情報の線引き。 マイナンバーや健康に関する情報など、AIに入力しない情報を先に決めます。

税務調査では、帳簿の数字がどの資料から、どのように作られたかを説明できることが大切です。AIを使っても、元資料・処理の手順・確認の記録をたどれる状態にしておきます。この考え方はAIで税理士はなくなるのかでも触れています。

最初の1業務の選び方

次の5項目に当てはまる数が多い業務から始めます。

確認する項目当てはまる例当てはまらない例
毎月くり返し、件数がある毎月届く数十枚の請求書年に1回だけの作業
入力と出力の形が決まっている決まった項目の一覧表毎回内容の違う報告書
出力を原本と照合できる請求書の金額・日付根拠資料のない見込みの数字
扱う情報を管理できる会社で契約した環境で扱う取引先名・金額マイナンバー、健康に関する情報
担当者と確認者が決まっている作成は担当者、確認は上長誰が確認するか決まっていない

始めるのは1部署・1業務からにします。複数の業務を一度に変えると、誤りが出たときに、どこで起きたのかを特定しにくくなるためです。

当事務所でのAIの使い方

当事務所でも、判断の前の作業にAIを使っています。

  • 監査調書の更新:前期のExcel調書を当期用に更新する作業を、フォルダを直接扱えるAIに任せています。判断が必要な箇所は「要確認」として残させ、手順は指示ファイルに書いて、うまくいかなかった点を直しながら使っています(監査調書のロールフォワードをAIに任せてみた)。
  • 事務所内の資料と画面の整理:記事のサムネイル画像の統一、Google Driveのフォルダ構成の見直し、毎朝の予定確認の画面づくりにAIを使いました(生成AIで仕事のキャパシティを広げる)。

いずれも、AIに渡すのは作業のルールと必要な範囲の情報です。税務・会計の判断と公開の判断は、公認会計士・税理士である私が行います。お客さまの業務でも、AIに任せる範囲と人が確認する範囲を先に決めてから始めます。

自社で始めるときの進め方

当事務所のAI導入支援では、1部署・1業務を対象に、標準8週間で次のように進めます。

  1. 第1〜4週:今の作業の流れを整理し、AIの設定、業務用の指示ひな形、出力の様式を作ります。
  2. 第5〜6週:通常・例外を含む代表10ケースで試し、原本と照合します。担当者へ操作を引き継ぎます。
  3. 第7〜8週:担当者が実際に使い、迷った点や例外をもとに見直します。

完了時には、業務フロー、指示のひな形、確認チェックリスト、操作マニュアルが、会社で再利用できる保存先に残ります。料金・標準範囲はAI導入支援の料金でご確認ください。

よくあるご質問

AIに詳しい社員がいなくても始められますか?

始められます。最初に必要なのは、AIの知識よりも、今の作業の流れと、どの資料をどう確認しているかが分かる担当者です。指示のひな形と操作マニュアルを用意し、同じ手順で繰り返せる形にします。

どのAIサービスを使えばよいですか?

会社として契約・管理できるサービスを選び、入力したデータの学習への利用の有無、保存、管理者の権限を確認します。サービスの内容や規約は変わることがあるため、導入時点の規約で確かめます。プランの違いは日税連のAI・クラウド活用ガイドラインの記事でも整理しています(税理士事務所向けの記事ですが、プランの比較は会社にも当てはまります)。

freeeを使っていなくても相談できますか?

できます。対象の業務と、今使っている会計ソフト・表計算ソフト・保存先を伺い、その環境で使える方法を検討します。会計ソフトの見直しもあわせて考える場合は、freee導入支援もご案内します。

どのくらい作業時間が減りますか?

業務の内容、資料の状態、例外の多さによって変わるため、一律にはお約束できません。導入支援では、導入前後の作業時間と、手で直した箇所・要確認になった件数を記録し、効果と残った課題を確認します。

税務顧問の契約がなくても依頼できますか?

できます。AI導入支援は税務顧問とは別のサービスです。すでに顧問契約がある場合は、現在の支援範囲と重なる部分を確認してお見積もりします。

最初の1業務を、一緒に選びます

「どの業務からAIを使えばよいか分からない」という段階でもご相談いただけます。初回相談では、困っている作業、使っている会計ソフト・表計算ソフト・保存先、担当者の人数をお聞きします。資料をお送りいただく必要はありません。支援範囲・成果物・料金は着手前にご案内します。

参考資料

記事執筆者

岡田 健志(公認会計士・税理士)

大阪国税局(国税調査官)、Big4監査法人での勤務を経て、2024年に大阪市福島区で独立開業。税務・財務に加え、生成AIやクラウドサービスを実務で活用し、中小企業の業務改善を支援しています。

お気軽にお問合せください

フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。

岡田けんし
公認会計士・税理士事務所

住所

〒553-0003 大阪府大阪市福島区福島5丁目13-18 福島ビル422号室

アクセス

福島駅から徒歩1分

受付時間

10:00~18:00

定休日

土曜・日曜・祝日