営業所や部署から届くExcelを毎月開き、列名を読み替えて一つの表に転記する。この作業を減らすには、様式の違いと確認事項を生成AIで整理し、集計はExcelの数式で行う方法があります。
この記事では、架空の3営業所の売上報告を使い、列の対応表、要確認一覧、仮集計、元ファイルとの検算までを紹介します。AIが候補を整理した後も、重複や空欄の扱いを人が確認できる形を残します。
会社名・取引先・日付・金額はすべて説明用に作成したものです。実際のお客さまの資料は使っていません。今回の読取りと整理はCodexで行いました。特定サービスの操作画面を紹介する記事ではありません。
転記と集計で手間がかかる5つの原因
転記そのものより、ファイルごとの違いを読み解くことに時間がかかっている場合があります。
| 原因 | 起こりやすいこと |
|---|---|
| 列名・並びが違う | 「得意先」「顧客名」「取引先」を毎回読み替える |
| 税込・税抜が混在する | 金額の列だけを足すと、同じ基準の数字にならない |
| 合計行が明細に混ざる | 明細と合計を二重に数える |
| 同じ内容の行がある | 重複か、同額の別取引かを確認する必要がある |
| 対象月・版が分かりにくい | 前月分や訂正前のファイルを混ぜる |
元ファイルを一つの列に貼り合わせる前に、対象ファイル・対象年月・金額の基準をそろえます。
AI・Excel・人の分担を決める
AIには資料の読み取りと確認候補の整理を任せます。金額の集計・検算は数式で行い、その前提と例外を人が決めます。
| 担当 | 行うこと |
|---|---|
| 生成AI | 列の対応表、確認が必要な行の一覧、担当者への依頼文の下書き |
| Excel | 決めた方法による税抜換算、営業所別・品目別の集計、件数・合計の検算 |
| 人 | 原本との照合、税抜換算の前提、重複・空欄の扱い、集計結果の承認 |
毎月同じ様式で届くデータなら、Excelの関数やPower Queryなどで処理を固定できる場合もあります。生成AIを使うのは、列名や文章を読み解く部分、例外を整理する部分からで十分です。
架空の3営業所データで実演
1.届いた3つのファイル
架空の「見本工業株式会社」で、2026年10月分の報告が本社・北営業所・南営業所から届いた設定です。原本相当のExcelは3ファイルに分けて作りました。ファイル内の金額単位は千円です。
| ファイル | 日付の列 | 相手先の列 | 品目の列 | 金額の基準 |
|---|---|---|---|---|
| 本社 | 売上日 | 得意先 | 商品区分 | 税抜 |
| 北営業所 | 日付 | 顧客名 | 区分 | 税込 |
| 南営業所 | 計上日 | 取引先 | 品目 | 税抜(注記に記載) |
北営業所の日付は「10/2」のように年がありません。対象年はファイル内の表題に記載した2026年から確認します。南営業所の「売上」という列名だけでは税込・税抜が分からないため、注記まで読みます。
2.AIへの指示ひな形
最初は、金額の集計や元ファイルの変更を指示せず、読み取りと確認候補の整理に範囲を絞ります。
3つの売上報告Excelから、列の対応表と確認が必要な行を作ってください。金額の単位、税込・税抜、対象年月を見出し・注記から確認し、元ファイル名・シート・セル範囲を残してください。集計、原本の変更、重複の削除、空欄の推測補完はしないでください。同じ内容の行は両方を重複候補として残し、担当者に聞くことを示してください。
実データを使う際は、先に会社が利用するサービスと、入力してよい情報の範囲を決めます。資料をまとめて読み込ませる前に、対象ファイルを限定してください。
3.AIが整理した列の対応と要確認
今回の出力では、「売上日・日付・計上日」を売上日に、「得意先・顧客名・取引先」を取引先に対応付けました。原本の列名とセル範囲も残しています。
確認事項は次の4点です。説明用の金額は万円に換算しています。
| 元の場所 | 読み取った事実 | 人が確認すること |
|---|---|---|
| 北営業所・明細4行 | 税込金額で報告されている | 税抜換算の前提・方法、対象年月 |
| 南営業所・11行目 | 「合計」46万円が明細と一緒に入っている | 明細との二重集計を避け、合計行を転記対象から外す |
| 南営業所・7行目と9行目 | 10月13日・見本鉄工・部品A・15万円の行が2つある | 重複か、同額の別取引かを請求番号・取引内容で確認する |
| 南営業所・10行目 | 3万円の行の品目が空欄 | 品目を推測せず、担当者へ確認する |
日付・相手先・品目・金額が一致していても、重複と断定できるとは限りません。原本の行を消さず、確認結果を書き込む欄を設けます。
4.Excelで仮集計する
この実演では、北営業所を10%の税率で税抜換算し、南営業所の重複候補1行を仮除外しました。品目空欄の行は「未区分」で含めています。重複と品目の確認が終わるまで、確定した売上として扱いません。
単位:万円(税抜)。重複候補1行を仮除外した結果です。
| 営業所 | 部品A | 部品B | 保守 | 未区分 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 本社 | 32 | 8 | 5 | ― | 45 |
| 北営業所 | 16 | 5 | 3 | ― | 24 |
| 南営業所 | 15 | 9 | 4 | 3 | 31 |
| 計 | 63 | 22 | 12 | 3 | 100 |
「―」は該当する明細がない区分です。Excelファイルの表示単位は千円のため、合計は1,000千円となります。
統一明細の仮集計金額をK列、営業所をA列、品目をE列に置いた場合、営業所別・品目別の集計には、例えば次の式を使います。
=SUMIFS('01.統一明細'!$K$6:$K$18,'01.統一明細'!$A$6:$A$18,$A7,'01.統一明細'!$E$6:$E$18,B$6)式を使っていても、集計範囲や条件が違えば正しい数字にはなりません。元データの範囲と、除外する行の扱いを合わせて確かめます。
5.金額と件数を元ファイルへ戻して検算する
今回の元明細は、本社4行・北営業所4行・南営業所5行の計13行です。南営業所の合計行は明細件数に含めません。
- 元明細の税抜換算合計115万円 = 仮集計100万円 + 仮除外15万円
- 元明細13件 = 仮集計12件 + 仮除外1件
- 北営業所の税込合計26.4万円 → 税抜換算24万円
- 南営業所の合計行46万円 = 同営業所の明細5行の合計46万円
検算用の元明細合計は、集計表を足し直すのではなく、原本の各範囲から別に計算しています。統一明細の仮処理を「含む」に戻すと、集計が115万円に変わることも確認しました。
作成時の検算では、換算式に使った小数計算と切捨ての組合せで端数の差が出ました。 式を修正し、元明細との差額0を確認してから上の結果を掲載しています。AIで列を整理できたことと、集計が正しいことは別に検証する必要があります。
なお、この例はすべて10%・端数なしという前提です。税率が混在する資料、請求書ごとの端数処理、返品などがある場合は、その取扱いを先に決めます。この管理用集計表を消費税の申告額の計算に使うものではありません。
毎月確認するチェックリスト
- 対象年月と最新版のファイルがそろっているか。
- 金額の単位、税込・税抜、換算の前提が一致しているか。
- 元の明細件数と、採用・除外・保留の件数がつながっているか。
- 元の合計と、採用・除外した金額がつながっているか。
- 重複候補を誰がどの資料で確認したか。
- 空欄を推測で埋めていないか。
- 元ファイル、対応表、確認結果、使用した式を保存しているか。
確認が終わっていない行は、表全体の合計が合っていても未確定です。「差額0」と「内容の確認完了」を分けて管理します。
翌月から楽にするために、提出様式もそろえる
初月に見つけた違いを、翌月の報告様式へ戻します。日付、取引先、品目、金額の基準を固定し、合計行を明細へ混ぜないようにするだけでも確認箇所を減らせます。
担当者への依頼文も、AIで下書きを作れます。
来月分から、売上報告は添付の統一様式でお願いします。日付は年を含め、金額は指定の税抜金額で記入してください。明細欄に合計行を入れず、訂正する場合は対象年月と版が分かるファイル名で提出してください。品目など判断できない欄は空欄のままにせず、確認が必要な旨をお知らせください。
提出期限・保存先・担当者は、自社の運用に合わせて追記します。メールの送信は、人が宛先と添付を確認して行います。
会計ソフトから出せる数字は会計ソフトで確認する
会計ソフトに登録済みの売上や試算表で目的を満たせるなら、別のExcelで同じ数字を作り直す必要があるかを確認します。会計帳簿と社内管理表の役割を決め、二重管理を増やさないことが大切です。
会計ソフトの設定や運用も見直す場合は、freee導入支援をご覧ください。請求書から確認用一覧を作る例は、紙・Excel中心の経理を見直すで紹介しています。
自社のExcel業務で試すには
まずは1部署・1業務を選び、通常の資料だけでなく、税込混在、空欄、訂正、重複候補などの例外も含めて試します。処理前後の作業時間と、手で直した箇所・確認が必要になった件数を残して、効果を確かめます。
当事務所のAI導入支援では、標準8週間で業務の整理、指示ひな形、確認チェックリスト、操作マニュアルを整え、通常・例外を含む代表10ケースで確認します。標準範囲は1部署・1業務、入力元1系統・資料の種類2種類までです。今回のように複数の様式を扱う場合は、標準範囲に収まるかを着手前に確認します。
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よくあるご質問
Excelの関数やマクロだけで自動化する方法とは何が違いますか?
様式とルールが決まっている部分は、関数や既存の自動化で対応できることがあります。生成AIは、列名の違いを読み取る、文章の指示から対応表を作る、例外や確認候補を整理する、といった部分から検討します。AIを使うこと自体を目的にせず、確認しやすい方法を選びます。
社外秘の売上データをAIに入力してよいですか?
会社が承認したサービス・契約・設定と、入力してよい情報の範囲を確認してから扱います。学習への利用の有無だけでなく、保存・アクセス・外部連携や取引先との契約も確認します。試す段階では、今回のような架空データを使う方法があります。
ファイル数が多い場合も相談できますか?
できます。ファイル数だけでなく、様式の種類、入力元、例外の多さを確認します。標準範囲を超える場合は、対象を絞るか、追加範囲を個別にお見積もりします。着手前に支援範囲と総額をご案内します。
ExcelやスプレッドシートのAI機能だけでできますか?
できる範囲はサービス・契約・利用時点の機能によって異なります。どの機能を使う場合も、元ファイルを残し、集計の式と検算、人による確認を用意します。