MY HOME / 買い替えと確定申告

住宅ローン控除と
マイホームの買い替え特例

3,000万円特別控除・課税の繰延べ・住宅ローン控除を、選ぶ前に比較。

公開:2026年10月9日 / 執筆:公認会計士・税理士 岡田健志

旧居を売って新居へ住み替えるとき、売却益に使う3,000万円特別控除や買換え特例と、新居の住宅ローン控除は、一定の期間内では併用できません。売る年と入居する年が違っていても、確認が必要です。

一方、売却損が出た場合の買換えの特例は、要件を満たせば住宅ローン控除と併用できます。まず「売却益が出るか、売却損が出るか」を分けて考えましょう。

ご自身で購入した国内のマイホームを売り、新居を購入する個人の方を対象に説明します。図は制度の比較用で、適用可否を自動判定するものではありません。

1.買い替えで確認する3つの制度

同じ買い替えでも、税負担を軽減する仕組みが異なります。新居を購入しただけで「買換え特例」が自動で適用されるわけではありません。

1

3,000万円特別控除

旧居の譲渡所得から、要件を満たせば最大3,000万円を差し引く制度。

売却益を減らす

住宅の買い替え自体は必須ではありません。

2

特定の居住用財産の買換え特例

一定の旧居から新居への買換えで、譲渡益への課税を将来へ繰り延べる制度。

課税の時期を先へ送る

非課税になる制度ではありません。

3

住宅ローン控除

新居の住宅区分・入居年等に応じ、年末の借入残高等を基に所得税額から控除する制度。

各年の税額を減らす

税額や適用要件による制約があります。

3,000万円特別控除と買換え特例を、同じ売却に重ねて適用することはできません。一定の要件を満たす場合の「10年超所有の軽減税率」は3,000万円特別控除と併用できますが、住宅ローン控除との併用制限は別に確認します。

3,000万円特別控除で先に確認する条件

現在住んでいる家屋、または住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る旧居などが対象です。親子・夫婦等の特別な関係にある相手への売却、過去の特例利用、別荘や一時的な居住などにも制限があります。所有期間の長短に関係なく利用できる制度ですが、マイホームの全要件と申告書類を確認します。

参考:国税庁 No.3302「マイホームを売ったときの特例」、No.3358「売った金額より少ない金額でマイホームを買い換えたとき」、No.1211-1「住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除」、No.3305「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」。

2.売却代金と売却益、ローン残高を分ける

比較の出発点は、税務上の譲渡所得です。通帳に入る金額や、住宅ローンを返した後に手元に残る金額とは異なります。

譲渡所得の基本計算/特別控除を引く前

売却代金 −(取得費 + 譲渡費用)

架空例・単位:万円

税務上の売却益

売却代金 5,000
取得費 3,300
譲渡費用 200

5,000 − 3,500 = 1,500

ローン返済後の手元資金

売却代金 5,000
ローン返済 2,000
売却時の支払費用 200

5,000 − 2,200 = 2,800

取得費は建物の償却費相当額を控除した後の金額。ほかの精算金・税金等は省略しています。同じ売却でも、譲渡所得1,500万円と手元資金2,800万円は一致しません。

住宅ローンの元本返済額を、譲渡所得からそのまま差し引く計算ではありません。建物の取得費は購入代金をそのまま使わず、居住用でも償却費相当額を控除します。購入時の契約書、土地・建物の内訳、購入日・建物の構造を先に確認してください。

参考:国税庁 No.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」、No.3261「建物の取得費の計算」。

3.入居年の前2年・後3年の併用制限

新居の入居年を中心に、入居年・その前2年・その後3年の計6年間を確認します。旧居の売却に3,000万円特別控除、買換え特例、10年超所有の軽減税率等を使う場合、住宅ローン控除の適用に制限があります。

例:2026年に新居へ入居した場合

2024年入居の2年前
2025年入居の1年前
2026年新居へ入居
2027年入居の1年後
2028年入居の2年後
2029年入居の3年後
この期間の旧居の売却特例と
新居の住宅ローン控除を照合

新居とは別の旧居を売却する通常の住み替えの図です。入居後3年の制限は、住宅ローン控除の対象となる資産以外の資産の譲渡に係る特例を確認します。過去の入居・売却は当時の規定で確認してください。

年をまたいでも、併用できるとは限らない

例えば2025年に旧居を売却して3,000万円特別控除を使い、2026年に新居へ入居した場合も確認期間に入ります。また、2026年の入居後に住宅ローン控除を受け、2027年に旧居の売却特例を選ぶ場合は、既に受けた控除について修正申告等が必要になることがあります。

「今年は住宅ローン控除、来年は売却特例」と別々に考えず、売却予定も含めた年表を作ってから申告します。

参考:国税庁 No.1211-1「住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除」、No.1211-3「中古住宅に係る住宅借入金等特別控除」、No.3302「マイホームを売ったときの特例」。

4.買換え特例は、課税を将来へ繰り延べる

譲渡益に対する買換え特例は、2027年12月31日までの一定のマイホームの売却が対象です。主な確認点は、居住期間10年以上、売却年の1月1日時点で家屋・敷地の所有期間がともに10年超、売却代金1億円以下などです。

取得時期・入居期限、建物50㎡以上・土地500㎡以下、新居の省エネ・耐震等、過去の特例利用や売却先との関係も確認します。2028年以降に入居する一定の新築住宅では立地要件もあります。ここに挙げた項目だけで適用を決めず、公式の全要件を照合してください。

買換え特例を使う場合の、課税の繰延べのイメージ

架空例・単位:万円

今回の買い替え

旧居の取得費 2,200
旧居を売る 6,000
新居を買う 7,000

譲渡益 3,800

要件を満たせば
課税を将来へ繰り延べ

将来、新居を売るとき

買換え後の取得価額は
2,200 +(7,000 − 6,000)
= 3,200

将来8,000で売ると

8,000 − 3,200 = 4,800

全額繰延べの仕組みを示す簡略例です。譲渡費用・新居購入時の付随費用・買換え後の建物の減価償却・将来の特別控除等は省略。実際は土地と建物に取得価額を配分し、建物の償却等も計算します。将来の譲渡益4,800万円には、今回繰り延べた3,800万円が含まれます。

買換え後の取得価額は、支払った7,000万円をそのまま使うのではありません。旧居から取得価額が引き継がれるため、今回の税額だけで有利・不利を判断しないようにします。

新居の購入額が旧居の売却額より少ない場合は、差額を収入金額として、対応する取得費・譲渡費用を差し引いた譲渡所得を計算します。「買い替えれば全部繰り延べ」とは限りません。

参考:国税庁 No.3355「特定のマイホームを買い換えたときの特例」、No.3362「買い換えた資産の取得価額とされる金額の計算」、No.3358「売った金額より少ない金額でマイホームを買い換えたとき」。

5.どちらを選ぶか、申告前に比較する

売却益がある場合、利用できる制度を確認し、次の3案を比較します。住宅ローン控除との併用制限の期間内に住み替える前提の整理です。

比較する案旧居の売却新居の住宅ローン控除
3,000万円特別控除譲渡所得から最大3,000万円を控除併用制限に該当すると適用不可
買換え特例譲渡益への課税を将来へ繰り延べ併用制限に該当すると適用不可
住宅ローン控除併用制限のある売却特例を使わず税額を計算住宅・所得・借入等の要件を満たす各年に適用
  1. 1
    売却益と、特例を使わない場合の税額を出す

    取得費・譲渡費用、売却年1月1日時点の所有期間等を確認。売却代金だけで比較しません。

  2. 2
    3,000万円特別控除後の税額を出す

    要件を満たせば、譲渡益1,500万円は控除後ゼロ。譲渡益3,800万円なら控除後800万円です。要件を満たす10年超所有の軽減税率も別途確認します。

  3. 3
    住宅ローン控除を、実際に使える額で見積もる

    入居年・住宅区分・各年の残高と所得税額、住民税の控除限度等を反映します。初年度の控除可能額をそのまま控除年数倍する計算ではありません。

  4. 4
    買換え特例の将来への影響も比較する

    今年の納税額だけでなく、引き継ぐ取得価額、将来の売却予定、住宅ローン控除を使えない影響を確認します。

3,000万円特別控除で納税がゼロでも、確定申告は必要です。

また、住宅ローン控除を選ぶ場合も、売却益を含む合計所得金額の要件等を確認します。ローンを組んだだけで控除が受けられるわけではありません。

ご自身で検討するときは、まず資料と年表を整理し、「使える制度」と「使った場合の税額」を分けて確認してください。

参考:国税庁 No.3302「マイホームを売ったときの特例」、No.3305「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」、No.1211-1「住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除」、No.1211-3「中古住宅に係る住宅借入金等特別控除」。

6.売却損が出た場合は、別の特例を確認する

売却益への課税を繰り延べる買換え特例と、買換えの譲渡損失の損益通算・繰越控除は別の制度です。売却損があれば、住宅ローン控除との併用関係も変わります。

売却益が出た場合

3,000万円特別控除・
譲渡益の買換え特例

住宅ローン控除との
併用制限を確認

売却損が出た場合

買換えの譲渡損失の
損益通算・繰越控除

要件を満たせば
住宅ローン控除と併用可

通常、土地・建物の譲渡損失は給与所得等と損益通算できません。この特例では、2027年12月31日までの一定の旧居の売却について、給与所得等との損益通算や、控除しきれない損失の翌年以後3年の繰越控除が認められます。

旧居の売却年1月1日時点の所有期間5年超、新居の取得・入居期限、床面積、新居の償還期間10年以上の住宅ローン、過去の特例等を確認します。繰越控除には、その年の所得やローン残高等の追加条件と、継続した申告が必要です。

併用できても、損益通算で所得税額が減れば住宅ローン控除で差し引ける額も変わります。「損失が出た」「併用可能」だけで還付額を決めず、申告全体で計算します。

参考:国税庁 No.3370「買い換えた場合の譲渡損失の特例」、No.3382「買換えの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の順序」。

7.準備する資料と申告の流れ

1

旧居を買った・売った資料

購入・売却の契約書、土地・建物の内訳、仲介手数料等の明細、登記情報、取得日・引渡日。

2

居住と特例の履歴

旧居に住み始めた日・転居日、過去の確定申告書、利用した売却特例、新居の入居日。

3

新居と住宅ローンの資料

購入契約書、登記情報、住宅性能等の証明、ローン契約・返済予定、年末残高証明書または年末残高情報。

4

所得と申告の資料

給与の源泉徴収票、その他の所得・控除の資料、過年度の住宅ローン控除の明細、電子申告に必要な準備。

これらは計算・確認のための資料です。申告書に添付する書類は選んだ特例や提出方法によって異なるため、対象年分の公式案内で確認します。調書方式の住宅ローン控除では、年末残高証明書の添付が不要となる場合があります。

  1. 1
    取得・売却・入居の日付と、過去の特例をそろえる

    売却年は原則として引渡日で判断しますが、契約の効力発生日による申告も認められます。年末をまたぐ取引は、年分を先に確認します。

  2. 2
    売却の計算と制度の比較を済ませる

    譲渡所得の内訳と、新居の住宅ローン控除の要件を確認。選択する特例を整理してから申告書を作成します。

  3. 3
    対象年分の作成コーナー等で申告する

    給与なども含め、土地・建物の譲渡所得、選択した特例、住宅ローン控除の適用内容を照合します。譲渡所得の内訳書等、必要な付表・添付書類も確認します。

  4. 4
    受付・納付・控えを確認する

    申告期限は原則として翌年3月15日。休日や期限延長等は当年の案内で確認し、納付がある場合は納付まで完了させます。買換え後に提出する書類や繰越控除の翌年の申告も管理します。

参考:国税庁 No.3102「譲渡所得の申告期限」、No.3355「特定のマイホームを買い換えたときの特例」、No.3370「買い換えた場合の譲渡損失の特例」、No.1230「調書方式による住宅借入金等特別控除」。

よくあるご質問

3,000万円特別控除と、新居の住宅ローン控除は一緒に使えますか?

新居の入居年・その前2年・その後3年に旧居の売却特例を使う通常の住み替えでは、併用制限を確認します。売却年と入居年が違うだけでは併用できるとは限りません。

買換え特例なら、売却益への税金はなくなりますか?

譲渡益への買換え特例は、課税を将来へ繰り延べる制度です。買換え後の取得価額に旧居の取得価額が引き継がれます。非課税になる制度ではなく、新居購入額が売却額より少なければ今回の課税が残る場合もあります。

3,000万円特別控除で税額ゼロなら、申告は不要ですか?

この特例を適用するには、一定の書類を添えて確定申告をする必要があります。会社員で年末調整を済ませている場合も、特例の適用手続を確認します。

売却損が出た場合も、住宅ローン控除は使えませんか?

買換えの譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例は、双方の要件を満たせば住宅ローン控除と併用できます。売却益の買換え特例とは別の制度です。控除できる額は申告全体で計算します。

住宅ローンが残っていれば、売却益から差し引けますか?

住宅ローンの元本返済額を、譲渡所得からそのまま差し引く計算ではありません。売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算し、手元に残る資金とは分けて確認します。

ご自身で進めるために、資料と比較を整理する

このホームページを見ながら、ご自身で確定申告を進められるようにしたい。そう考えて、制度の違いと確認する順番を解説しています。

まずは契約書と売却・入居の年表をそろえ、ご自身で確認できる点を進めてください。「売却特例と住宅ローン控除のどちらを選ぶか」「取得費をどう計算するか」など、迷う点だけの相談もできます。

不動産の売却・買い替えに係る申告や比較検討は、資料と対応範囲を確認して個別にお見積りします。掲載している所得税申告の基本料金に、これらの確認作業が一律に含まれるわけではありません。着手前に作業範囲と総額をご案内します。

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この記事の執筆者

岡田 健志|公認会計士・税理士

岡田健志公認会計士・税理士事務所(大阪市福島区)

代表プロフィールを見る →

国税庁の公表資料を2026年10月9日に確認。主な根拠:所得税法第33条・第38条・第120条、所得税法施行令第85条、租税特別措置法第31条の3・第35条第1項・第36条の2・第36条の3・第41条・第41条の5等。対象年・入居年・物件・所得・過去の特例によって適用は異なります。

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