法人の決算前に

法人の決算前に試算表の残高が合わないとき|確認順と相談の準備

公開:2026年10月19日 / 執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)

決算の前に試算表を見ると、預金や売掛金、借入金などの残高が手元の資料と合わないことがあります。このときは差額だけを消す仕訳を入れる前に、どの科目の、いつ時点の、何と比べた残高が違うのかを固定してください。比較する日付や資料が違えば、差額の原因も見えなくなります。

この記事は、法人が決算前の残高差異を確認する順番と、税理士に相談するときの準備をまとめたものです。個別の仕訳や税務処理は、取引内容と資料を確かめて判断します。

まず「科目・基準日・差額」を一行にする

最初に、試算表と比較資料の基準日を揃えます。例えば、3月決算なら、原則として3月31日時点の預金帳簿残高と、同日時点の通帳・銀行明細の残高を比べます。銀行の入出金日、会計ソフトへの登録日、請求書の日付は同じとは限りません。

差額のメモには、科目、比較した日付、帳簿残高、照合先の残高、差額、確認済みの期間を残します。複数の預金口座や取引先があるときは、合計額だけでなく口座別・取引先別に分けます。原因を特定できない段階では「不明」と記載し、推測で仕訳を入れないでください。

預金は明細と総勘定元帳を同じ期間で照合する

預金差異は、銀行明細と会計ソフトの預金元帳を同じ期間で並べて確認します。まず期首残高が合うかを見て、差がなければ差異が生じた月を絞ります。

確認する例は、未取込の入出金、手入力と口座連携による二重登録、別口座への振替の片側だけの入力、入出金日と登録日のずれです。銀行明細と帳簿に同じ金額の行があっても、相手科目や重複の有無まで確かめます。口座連携のデータを再取得する前に、現在の元帳と明細を保存し、どの行が不足・重複しているかを確認してください。

会計ソフトを変更した直後に差異が出た場合は、原因が移行・連携・二重入力にあることもあります。その場合は会計ソフト変更後の残高不一致の確認方法も参考にしてください。

売掛金・買掛金は取引先別に未決済を確認する

売掛金は請求書、入金記録、売掛金元帳の未決済額を取引先別に突き合わせます。買掛金も請求書・支払記録・元帳を同じように見ます。入金や支払は記録されているのに消込が残っていないか、同じ請求書を二度計上していないか、決算期をまたぐ取引が混ざっていないかを確認します。

請求書と入金額が一致しないときは、手数料、値引き、相殺、分割入金などの記録を先に探します。差額を直ちに売上・費用へ振り替えるのではなく、取引の内容を特定することが先です。計上時期や消費税区分の判断が必要な場合は、契約書や請求書等も合わせて確認します。

借入金・固定資産・仮払金も別資料と比べる

借入金は金融機関の残高資料や返済予定表と比べ、返済額の元金と利息の区分、追加借入れ、繰上返済の入力を確認します。固定資産は固定資産台帳と購入・売却・除却の資料を照らし、帳簿への登録漏れや二重計上がないかを見ます。仮払金・立替金・役員との貸借は、相手先、発生日、精算状況を明細ごとに確かめます。

国税庁は、法人が取引を帳簿に記録し、総勘定元帳・売掛金元帳・買掛金元帳・固定資産台帳等や関連書類を保存することを案内しています。残高を確認する際も、帳簿と取引資料を結び付けておくことが大切です。国税庁:帳簿書類等の保存期間

差額の原因が分からないまま、調整仕訳で合わせない

差額が少額でも、原因を調べずに雑収入・雑損失、役員との貸借、仮払金などへまとめて振り替えると、実際の取引と帳簿の対応が分からなくなります。残高差異の理由が分かった後に、必要な修正仕訳と、その事業年度の決算・税務申告への影響を検討します。

過年度から差額を持ち越している場合も、当期の数字だけを合わせて終わりにしないでください。期首残高、前期の決算書・申告書、過年度の元帳を確認し、どの時点から違うかを切り分けます。過年度の申告に影響するかは、取引の内容を確かめて判断します。

税理士に相談するときに伝えること

自社で原因を特定できない場合は、次の情報を整理して相談してください。すべての資料が揃うまで連絡を待つ必要はありません。

  1. 決算月、対象事業年度、申告期限、期限延長の有無。
  2. 差異のある科目・口座・取引先と、帳簿残高・比較資料の残高・差額。
  3. 最後に残高が合っていた月と、差異が見つかった月。
  4. 使用中の会計ソフト、口座連携やデータ移行の有無、入力済みの期間。
  5. 手元にある銀行明細、請求書、返済予定表、固定資産台帳、前期資料。
  6. 自社で確認した事項と、未確認の取引・資料。

法人税の確定申告期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。期限延長の適用は個別に確認が必要です。期限が近いほど、差異の原因調査、決算整理、申告書作成に使える時間が限られます。未整理の部分もそのまま伝え、対応範囲と日程を相談してください。国税庁:法人税等の申告

単年度の決算・申告を相談する場合は法人の決算・申告を税理士に相談する前にを、翌期以降も月次の残高確認や経理の流れを見直したい場合は税務顧問の業務範囲を参照してください。

よくある質問

差額が少額なら、そのまま決算を進めてもよいですか?

金額だけでは判断できません。差額の原因、科目、決算書と税務申告への影響を確認します。原因が分からないまま、差額を消す仕訳を入れることは避けてください。

前期から残高が合っていない場合はどうしますか?

前期末と当期首の残高、前期の決算書・申告書、元帳と関連資料を確認し、差異が生じた時期と取引を調べます。過年度の決算・申告への影響がある場合は、内容に応じて対応を検討します。

決算・申告の期限が近くても相談できますか?

相談できます。ただし、受任できるか、どこまで対応できるかは、期限、差異の範囲、帳簿と資料の状況によります。決算月と申告期限、差異のある科目、入力済みの期間を先にお知らせください。

決算前の残高差異を相談する

岡田健志公認会計士・税理士事務所では、法人の記帳・月次確認から決算・申告まで、状況に応じた支援をご案内します。差異のある科目・基準日・差額・確認済みの期間を、分かる範囲でお知らせください。対応できる範囲と料金は、資料、期限、必要な作業を確認し、着手前にご案内します。


執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)。2026年10月19日時点の国税庁の案内を確認。具体的な修正仕訳、計上時期、申告への影響は個別の取引と資料により判断します。