AI導入の要件整理では、誰が何を入力し、何を受け取り、どの確認をして完了とするかを決めます。 「経理を自動化したい」という希望を、そのまま広い開発範囲にせず、一つの業務へ具体化します。
以下の要件シートは、当事務所が作成した架空の説明例です。契約書のひな形や、すべての開発案件に必要な仕様を網羅したものではありません。
1.業務の始まりと終わりを決める
例えば資料受付を対象にする場合、「資料が届く」から「確認用一覧を担当者へ渡す」までなのか、照会や差戻しまで含めるのかで作業範囲は変わります。会計登録や送信まで含めるかも別に確認します。
| 項目 | 架空の記入例 |
|---|---|
| 目的 | 受付資料の転記と、確認待ちの整理を減らす |
| 開始 | 対象部署の資料が指定の場所へ届いたとき |
| 終了 | 原本参照付き一覧を、人が確認して引き渡したとき |
| 利用者 | 資料を受け取る担当者と、その確認者 |
| 対象外 | 会計登録、承認、支払、取引先への自動送信 |
目的と現在の工程を共有するには、業務の棚卸しが役立ちます。要件シートでは、そのうち今回実装・試行する範囲へ絞ります。
2.入力と出力を、実物の形で確認する
入力する資料の種類、対象期間、使う列、必須項目を示し、出力の列名や保存先まで確認します。形式の名前だけではなく、架空例を使って受け渡しの形を共有します。
| 決めること | 確認する内容 |
|---|---|
| 入力 | 対象資料、形式、必要項目、使ってよい情報 |
| 出力 | 列名・順番、原本参照、確認待ちの表示 |
| 人の確認 | 原本との照合、件数・合計、承認の担当 |
| 例外 | 読めない資料、番号なし、対象外の戻し先 |
| 保存 | 正式な保存先、版、確認結果の記録 |
情報の共有先と閲覧範囲も要件に含めます。使ってよい環境が決まる前に実資料を一式送る手順にはしません。
3.完了条件を、試せる言葉へ変える
「正確に」「便利に」だけでは、試行の結果を判断できません。代表例で何が起きればよいかを示し、確認できなかった範囲を残します。
| 曖昧な希望 | 確認できる形への書き換え例 |
|---|---|
| 正しく読み取る | 原本の値と出力を照合し、不明箇所を確認待ちにする |
| 重複をなくす | 候補と比較根拠を示し、人が確定するまで原資料を残す |
| 誰でも使える | 指定した担当者が開始から確認・保存まで試す |
| すぐ戻せる | 旧版の所在と、戻し方・代替手順を実際に確かめる |
デジタル庁の生成AI技術検証では、利用場面に応じたテストケース例が公開されています。自社の要件も、試行・受入確認へつながる形にします。
4.未確定のことを、未確定のまま共有する
要件シートの空欄をAIや支援先の推測で埋めず、決める人と期限を残します。例えば出力の保存先が未定なら、保管と権限の確認が残っていると分かるようにします。
業務メモを、目的、開始と終了、入力、出力、人の確認、例外、対象外、未確定事項へ整理してください。記録にない機能や連携を追加しないでください。未確定事項には確認する相手を分けて示し、導入効果や実現可能性を確定しないでください。
未確定事項が実装範囲や見積りへ影響する場合は、着手前に再確認します。途中の追加要望も、元の範囲との違いと費用を事前に確認して進めます。
5.要件と見積りを同じ対象で比べる
要件シートの対象、成果物、試行、引継ぎが見積りに含まれるか確認します。別部署への追加や、既存システムとの連携を当然に含むものとは扱いません。
当事務所は、一つの業務の要件整理から試作・確認・引継ぎまで支援します。料金・標準範囲と成果物の見本をご覧ください。案件ごとの対象と完了条件は着手前に確認します。
よくあるご質問
詳しい仕様書がなくても相談できますか?
相談できます。現在の作業と困っている箇所を確認し、入力、出力、確認する人、対象外を整理するところから始めます。
要件シートを書けば契約条件も確定しますか?
要件シートだけで契約条件を確定するものではありません。対象、成果物、料金、日程、追加作業などを支援先と確認します。
AIが要件を全部作れますか?
メモの整理や不足項目の候補出しには使えますが、実際の権限、資料、業務範囲の決定は担当者が確認します。記録にない前提を補わせないようにします。
途中で対象業務を増やせますか?
元の範囲への影響と追加作業を確認して判断します。標準の一業務に複数の部署や新しい連携が自動で含まれるわけではありません。
参考資料
- デジタル庁「生成AIの適切な利活用に向けた技術検証」。要件シートと記入例は当事務所の説明用です。