AI導入の稟議では、製品の機能紹介より「どの仕事を、どの範囲で試し、何を見て次を決めるか」を書きます。 経営者や承認者が、費用と社内の負担、確認方法を同じ資料で判断できることが大切です。
この記事の項目と文章は、当事務所が整理した説明用の例です。会社の稟議規程や承認権限に合わせて調整してください。採択や導入効果を保証するひな形ではありません。
1.目的は、困っている業務と結び付ける
「AIを導入して効率化する」だけでは、何が変わるかが伝わりにくくなります。現在の作業、困っている工程、目指す完了状態を一つずつ書きます。
| 書く項目 | 架空の記入例 |
|---|---|
| 対象の業務 | 営業所の月次売上表を共通の列へそろえて集計する |
| 現在の負担 | 列の違いの修正と、元表への照会に手間がかかる |
| 試したい変更 | 項目の対応候補と確認待ちを整理し、式で集計する |
| 完了の状態 | 担当者が元表の件数・合計と照合して保存できる |
| 対象外 | 会計登録、外部への送信、ほかの部署への展開 |
対象が決まっていない場合は、業務棚卸しの記事から整理します。未整理の項目は、確定した計画のように書かず、相談・調査が必要な事項として残します。
2.成果物と、社内で必要な作業を書く
支援を受ければ社内の作業がなくなる、という前提にはしません。入力資料の準備、試行への参加、原本確認、承認は誰が担うかを明確にします。
| 提案に含めるもの | 確認すること |
|---|---|
| 業務フローと分担 | 社内、支援先、承認者の役割が分かるか |
| 指示・出力のひな形 | 何を入力し、何を受け取るかが分かるか |
| 確認票 | 原本、件数・合計、確認待ちの扱いが決まるか |
| 操作手順と引継ぎ | 担当者が自分で操作し、保存できるか |
| 社内の参加 | 打合せ、資料準備、試行の担当が決まっているか |
成果物の見本と見積りの内容が対応するかを確認します。比較の観点はAI導入支援の選び方も参考になります。
3.費用は初期・利用料・継続・社内負担に分ける
総額だけでは、支援終了後の支出や、追加の作業を見落とすことがあります。未確定の金額は見積確認中とし、架空の安い利用料や削減額で埋めないようにします。
| 費用・負担の区分 | 記載する内容 |
|---|---|
| 初期の支援費用 | 対象業務、成果物、試行・修正・引継ぎの範囲 |
| サービスの利用料 | 利用する契約、アカウント数、費用を負担する部署 |
| 継続・保守 | 任意か必須か、相談や変更の対象、期間 |
| 追加作業 | 範囲を超える場合の見積り・事前合意の方法 |
| 社内の時間 | 担当者の打合せ、資料準備、確認、運用後の見直し |
作業時間の短縮と、実際の支出の減少は分けて説明します。費用対効果の測り方のように、準備・確認・手直しを含む同じ範囲で比べます。
4.試行後に続ける条件を、先に決める
導入を承認することと、全社に展開することを一度に決める必要はありません。まず一つの業務を試し、次へ進むための確認事項を示します。
- 通常の資料と例外で、期待する出力になるか。
- 不明な情報を、推測で埋めず確認へ回せるか。
- 担当者が原本と照合し、一連の操作を進められるか。
- 確認・手直しを含めた負担が見合うか。
- 残る課題と、運用しない条件を共有できるか。
デジタル庁は、利用場面ごとの技術検証やテストケース例を公開しています。自社の提案でも、何を確認して判断するかを具体化します。試行の記録は受入確認の記事をご覧ください。
5.稟議の末尾に、承認してほしい事項をまとめる
例えば「この対象業務・費用・担当体制で試行を始めること」を承認事項とし、全社展開や自動送信などの追加事項を混ぜないようにします。利用環境、情報の取扱い、成果物の保存先、支援終了後の権限も確認します。
提案には、対象業務、期間、成果物、費用、社内担当、試行の確認方法、次の判断時期をまとめます。補足資料として、入力元・完成形の見本、見積り、確認票の案を添えると、承認者が条件を追いやすくなります。
当事務所の料金・標準範囲、手元に残る成果物の見本も、社内で依頼内容を検討する際にご確認いただけます。
よくあるご質問
まだ効果を測れていなくても稟議できますか?
効果を確定した数値として書かず、現状、試す範囲、記録する項目、試行後の判断条件を示す方法があります。会社の承認手順に合わせて整理します。
削減できる人件費を書けばよいですか?
作業時間が減っても、支出が減るとは限りません。担当者が使える時間の変化と、実際の支出の変化を分けて記載します。
継続支援もまとめて承認が必要ですか?
会社の規程と契約によります。初期と継続の範囲・費用・任意性を分け、何を今回承認するかを明確にします。
この表をそのまま社内の様式に使えますか?
検討項目の参考として、会社の様式、承認権限、必要な情報に合わせて調整してください。法的な書式や承認の保証を示すものではありません。