TAX RETURN GUIDE
家賃・スマホ代は
どこまで経費にできる?
家事按分を、5項目で確認。
仕事にも私生活にも使う支出は、仕事に必要な部分を分けて考えます。大切なのは「何%なら大丈夫か」よりも、その割合をどう説明できるかです。
個人事業・副業の事業所得、業務に係る雑所得についての一般的な説明です。給与の計算や法人の経費とは分けて確認します。
1.まず、仕事・私用・兼用に分ける
支出を次の3つに整理すると、按分が必要なものを絞れます。生活費を一定割合で経費にする仕組みではありません。
業務上の必要性を確認。資産の取得などは、支出時に全額経費になるとは限りません。
日常の食費や家族の生活費など。必要経費から除きます。
自宅兼事務所の家賃や共用の通信費。業務に必要な部分を区分します。
仕事と生活の両方に関係する支出を「家事関連費」といい、業務分と家事分に分ける処理を一般に「家事按分」と呼びます。領収書があることに加え、仕事内容とその支出の関係を説明できることが重要です。
根拠:所得税法第37条・第45条第1項第1号、所得税法施行令第96条。国税庁「必要経費の知識」
2.家賃は、面積と実際の使い方から
自宅に仕事専用の部屋やスペースがある場合、床面積は判断材料の一つになります。私生活にも使う場所なら、面積だけでなく、使用時間や使い方も確認します。
計算例 A | 金額の単位:万円
10㎡
10㎡
10㎡
10㎡
面積の割合を示す模式図です。
自宅全体:40㎡
仕事専用:10㎡
月額家賃:10万円
仕事の割合 25%
10㎡ ÷ 40㎡ = 25%
= 必要経費30万円
残り90万円は家事分。1年間同じ家賃・使い方で、仕事専用10㎡を合理的に区分できるという架空の前提です。25%を推奨する例ではありません。
リビングで時々仕事をする場合は、同じ計算をそのまま使いません。
家族と共用する時間、仕事で占有する範囲などを確認します。引越しや働き方の変更があれば、期間を分けて計算することも検討します。
間取り図に仕事用の範囲を書き込み、仕事の内容・使用状況・計算式を一緒に残しておくと、後から見直しやすくなります。
本節は賃貸住宅の家賃の例です。持ち家の住宅ローン返済額を同じ式に当てはめることはできません。元本返済、減価償却、利息、住宅ローン控除などを別に確認します。
3.スマホ・ネット代は、利用状況から
仕事用と私用で回線を分けていない場合は、通話明細・使用時間・業務の内容など、利用実態を示す資料を確認します。定額料金でも、理由なく半分と決めることは避けましょう。
計算例 B | 金額の単位:万円
年間通信料12万円。業務の利用記録等から、仕事分40%と合理的に区分できると仮定します。
= 必要経費4.8万円
私用分は7.2万円。割合は利用記録等に基づく仮定であり、一律の目安ではありません。
料金に通話・通信以外のサービスが含まれるときは、内訳を先に確認します。私用の動画配信サービスや端末本体の購入代金まで、通信料と同じ割合・同じ処理でまとめないようにします。
自宅のネット回線を家族と共有する場合も同様です。単純な在宅時間ではなく、仕事にどう使っているかを記録し、その基準が支出の実態に合っているか確認します。
判断の根拠:所得税基本通達45-1・45-2。通信料の割合や上の数値例は当事務所の説明用であり、国税庁が定めた割合ではありません。
4.費用ごとに、合う基準を選ぶ
家賃を25%としたから、電気代も通信費もすべて25%になるわけではありません。費用の性質に合わせて、説明できる基準を選びます。
| 費用 | 確認する材料の例 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 家賃 | 床面積、使用時間、専用・共用の別 | 図面の面積と実際の使い方を照合する |
| 電気代 | 業務用機器の使用時間や消費電力、利用状況 | 面積の割合が電力使用にも合うとは限らない |
| スマホ・ネット代 | 明細、利用記録、業務内容、家族の利用 | 私用サービスや端末代を混ぜない |
| 車の燃料費など | 仕事の走行距離、総走行距離、訪問先 | 業務以外の移動を除き、目的を残す |
横長の表はスマホで左右にスクロールできます。上記は実態を整理するための例で、どの事業にも同じ基準が適切とは限りません。
水道代など、仕事内容との関係が乏しい費用は、自宅で仕事をしているというだけで計上しません。衣装・美容・交通費は、費目ごとの判断と記録の記事もご覧ください。
5.根拠を残して、仕事分を集計する
割合だけのメモよりも、元の金額・使い方・計算根拠をひとまとまりにして残すと、年末の確認や翌年の見直しに使えます。
保存メモの例 | 金額の単位:万円
- 対象年・費用
- 2026年分・自宅兼事務所の家賃
- 元の金額
- 月10万円 × 12か月 = 120万円
- 使い方
- 全体40㎡のうち10㎡を1年間、仕事専用で使用
- 根拠資料
- 契約書、支払明細、範囲を書き込んだ間取り図、使用状況の記録
- 計算と結果
- 10㎡ ÷ 40㎡ = 25%
120万円 × 25% = 30万円
請求書や領収書、契約書などは、このメモとは別に保存します。電子で受け取った証憑は、電子データの保存ルールも確認してください。白色申告でも、対象となる方には記帳・帳簿書類の保存が必要です。
会計ソフトで総額を登録して年末に家事分を除く方法と、仕事分を分けて記帳する方法などがあります。どこで私用分を除いたかをそろえ、同じ支出を二重に調整しないことが重要です。
収支転記ノートには、家事分を除いた金額を入力します。
上の例なら年間の経費計上額は30万円です。ツールは25%という割合の妥当性を判定しません。家事分を除いた金額に、さらに25%を掛けないようにしてください。
収支転記ノートは2025年分の収支内訳書(一般用)を基準にした集計補助です。2026年分は明細整理用。申告書の作成・送信や税額計算は行いません。
よくあるご質問
白色申告で、仕事の割合が50%以下でも経費にできますか?
業務に必要な部分を明らかに区分できれば、その部分を必要経費に算入できる取扱いがあります。所得税基本通達45-2は「主たる部分」の判定に50%超を用いる一方、50%以下でも明確に区分できる部分の算入を認めています。50%まで自動的に認められる、という意味ではありません。
家賃やスマホ代は、一律で半分を経費にしてよいですか?
一律には決められません。仕事の内容、専用・共用の状況、面積や利用記録などから業務分を区分します。他の人の割合をそのまま採用せず、自分の使い方を説明できる資料を残します。
去年と同じ割合を毎年使ってよいですか?
利用状況が同じかを確認してください。引越し、独立、家族との共用、仕事内容の変更などがあれば、割合や対象期間の見直しが必要になることがあります。税額に合わせて割合を変えるのではなく、実態の変化を記録します。
会社員の在宅勤務でも、家賃を給与から差し引けますか?
本記事の計算を、そのまま給与所得に適用することはできません。給与所得は原則として給与所得控除を用いて計算します。特定支出控除には別の対象費用・要件があり、会社員の家賃や通信費が本記事の方法で自動的に控除されるものではありません。
どこまで経費にできるか迷う方へ
仕事内容、対象年、支出の明細、仕事と私用の使い分けが分かる資料をお知らせください。資料の整理状況も伺い、ご依頼の範囲と料金を事前にご案内します。
あわせて確認したい記事
根拠・参考資料
- 国税庁 No.2210 必要経費の知識
- 国税庁 所得税基本通達45-1・45-2(家事関連費)
- 国税庁 2025年分 収支内訳書(一般用)の書き方
- 国税庁 個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について
- 国税庁 No.1410 給与所得控除
- 国税庁 No.1415 給与所得者の特定支出控除
主な根拠:所得税法第28条・第37条・第45条第1項第1号・第57条の2、所得税法施行令第96条、所得税基本通達45-1・45-2。2026年10月7日に国税庁の公表資料を確認。図と数値は説明用の架空例で、経費割合の保証や基準を示すものではありません。消費税の仕入税額控除は別途確認が必要です。