夜のお仕事と確定申告
夜のお店を掛け持ちしたら確定申告はどうする?複数店舗の収入を整理する方法
公開:2026年11月4日 / 執筆:公認会計士・税理士 岡田健志
2026年分の資料整理を想定しています。表の金額・店舗は架空の例です。
複数のお店で働いていると、「お店ごとに税金が引かれているから、何もしなくていい?」「現金と振込をどうまとめる?」と迷うことがあります。
まずは、年ごと・お店ごとに、支払いの内容と手元の資料を分けるところから始めましょう。給与なのか報酬なのか、差引前の金額はいくらか、税金とそれ以外の控除に何が含まれるかを確認します。掛け持ちしていることだけで、申告の要否が決まるわけではありません。
1.働いた先と資料を一覧にする
2026年中に働いたお店を、退店した先や短期間だけ働いた先も含めて書き出します。店名、働いた期間、支払方法と、確認できる資料を並べましょう。
| 確認すること | 整理の例 |
|---|---|
| 支払先 | A店、B店など、どこから支払われたか |
| 対象期間 | 働いた期間、明細の対象月、支払日 |
| 支払いの内容 | 給与、報酬など。分からない場合は確認待ち |
| 手元の書類 | 支払明細、源泉徴収票、支払調書の写しなど、入手できた資料 |
| 受け取った記録 | 振込履歴、現金の封筒やメモ、連絡履歴 |
給与と報酬の区分は、お店での呼び名だけで決まるものではありません。契約内容や働き方、支払内容などを確認します。一つのお店での区分を、他のお店にもそのまま当てはめないようにしましょう。
2.差引前の金額と、実際の受取額を分ける
次は、複数の支払明細をまとめるための架空の整理例です。いずれも報酬として扱うことを前提とし、明細の内訳がすべて確認できた場合を示しています。税率や経費の可否を示す例ではありません。
| 支払先 | 差引前の支払額 | 源泉徴収税額 | 税金以外の控除 | 実際の受取額 |
|---|---|---|---|---|
| A店 | 60万円 | 3万円 | 6万円 | 51万円 |
| B店 | 40万円 | 2万円 | 4万円 | 34万円 |
| 合計 | 100万円 | 5万円 | 10万円 | 85万円 |
この表では、A店の60万円から3万円と6万円を差し引くと51万円、B店の40万円から2万円と4万円を差し引くと34万円です。受取額の合計は85万円ですが、差引前の支払額の合計は100万円です。
この例の「税金以外の控除」には、送迎費や衣装代などが含まれることがあります。ただし、引かれた金額がすべて税金や必要経費になるわけではありません。明細の内訳、契約、実際の支払いと仕事との関係を確認します。同じ費用を別の領収書でも集計しないようにします。
支払額、税金、受取額の見方は、夜のお仕事の支払明細の見方で詳しく説明しています。
3.現金と振込を、明細と照らし合わせる
明細と受取記録がそろっている場合は、同じ支払いを二重に数えていないかを確認します。例えば、A店の明細にある支払額と、同じ支払いの銀行振込額を、別々の売上として重ねて集計しないようにします。両方を照合に使い、対象期間と内訳を確かめましょう。
現金で受け取った分も、封筒・明細・出勤記録・メモなどを、お店と期間に分けて保管します。振込履歴や手取り額だけで差引前の金額や源泉徴収税額が分からない場合は、推測して埋めず、お店に確認します。
受取日、働いた期間、収入を計上する年が必ず同じとは限りません。年末に働いた分を翌年受け取る場合などは、給与・報酬の区分や計上方法に応じて確認してください。現金手渡しで明細がないときの記録も参考になります。
4.書類がそろわないお店があるとき
支払いの記録を確認するため、まずは対象期間や内訳の分かる明細等をお店に尋ねましょう。給与なら源泉徴収票、報酬なら支払調書の写しなど、手元にある書類も確認します。ただし、報酬の支払調書の写しが必ず本人に交付されるとは限りません。
お店と連絡が取れない場合は、残っている振込履歴、封筒、出勤記録や連絡を店別・月別に整理し、確認できない金額は「要確認」と残します。税金の額が不明なまま、天引き額をすべて源泉徴収税額として申告しないようにしましょう。
資料が不足する場合の進め方は、収入・経費の資料がないときの整理をご覧ください。
5.給与と報酬を分け、申告の要否を確認する
複数のお店から給与を受けている場合と、給与・報酬をそれぞれ受けている場合では、確認する書類や計算が異なります。源泉徴収や年末調整が行われていても、他の所得や控除などを含めて、確定申告が必要かどうかを確認します。
年末調整された勤務先だけで確認を終えず、ほかのお店や昼の仕事など、その年の収入と所得を見落とさないようにしましょう。昼の仕事もある場合は、昼と夜の仕事を掛け持ちしたときの申告と住民税も参考になります。
給与以外の所得の金額によっては、所得税の確定申告が不要でも住民税の申告について別途確認が必要な場合があります。申告の要否を一つの金額だけで決めず、所得の種類、その他の収入や控除、自治体の案内を確認してください。
よくある質問
一つのお店は現金、もう一つは振込です。分けて申告しますか?
まずは支払先と受取方法ごとに資料を整理し、その年の所得の種類を確認します。受取方法だけで申告の要否は決まりません。同じ支払いの明細と振込記録を二重に集計しないようにしましょう。
途中で辞めたお店の分も確認が必要ですか?
はい。その年に関係する収入を確認するため、短期間や退店した先も一覧にします。給与・報酬の区分や計上年は個別に確認してください。辞めた年の申告と資料でも説明しています。
すべてのお店で天引きされていれば申告しなくてよいですか?
天引きの有無だけでは判断できません。何が引かれたか、年間の所得・控除、他の収入や年末調整の状況を確認します。還付か追加納税かも、年間の状況によります。
自分で整理する・迷う点を相談する
まずは、お店と年を分けて、明細・振込・現金の記録を整理しましょう。確定申告を自分で進める手順も参考になります。
青色申告を考えている場合は、青色申告・開業届と帳簿の確認を、税務署から書面が届いている場合は「お尋ね」が届いたときの確認をご覧ください。
給与と報酬の区分、天引きの内訳、資料が足りない場合の整理で迷う方は、夜のお仕事の確定申告・税金相談をご覧ください。申告を依頼する場合も、範囲と料金を事前にご案内します。
確認した主な資料
- 国税庁 No.2520:2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収
- 国税庁 No.2807:ホステス等に支払う報酬・料金
- 国税庁 No.2200:収入金額とその計算
- 国税庁 No.2509:給与所得の収入金額の収入すべき時期
確認日:2026年11月4日。例は架空です。所得区分や申告の要否・金額は、契約、支払いと記録の状況により異なります。