税務・確定申告
医療費控除は10万円以下でも受けられる?所得200万円未満の計算方法
※2026年10月30日現在の法令等に基づいて解説しています。
「医療費控除は、1年間の医療費が10万円を超えないと受けられない」
そう思って領収書をしまったままにしていませんか。実は、10万円を超えていなくても、医療費控除を受けられる場合があります。
その年の総所得金額等が200万円未満の方は、通常の医療費控除の計算で、10万円ではなく「総所得金額等の5%」を基準にします。対象となる医療費から保険金などを差し引いた額がこの基準を超えるか、確認してみましょう。
医療費控除の基準は「10万円」と「所得の5%」のいずれか少ない方
通常の医療費控除は、次のように計算します。
医療費控除額 = 支払った対象医療費 − 医療費を補填する保険金など − 基準額
基準額は、10万円とその年の総所得金額等の5%のいずれか少ない金額。控除額は最高200万円です。
総所得金額等が200万円未満なら、その5%が10万円より小さくなります。200万円ちょうどなら5%は10万円、200万円を超える場合の基準額は10万円です。差し引いた結果が0円以下の場合、通常の医療費控除額はありません。
出典:国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(所得税法第73条)。
例:所得150万円なら、医療費9万円でも控除の対象に
次の架空の例で考えてみます。
- その年の総所得金額等:150万円
- 自分が支払った対象医療費:9万円
- 医療費を補填する保険金など:0円
基準額は、150万円 × 5% = 7万5,000円です。
9万円 − 0円 − 7万5,000円 = 1万5,000円
この場合の医療費控除額は1万5,000円です。医療費が10万円未満でも、基準額を超えるため控除額が生じます。
ただし、1万5,000円がそのまま還付されるわけではありません。 医療費控除は所得から差し引く金額です。所得税の還付や納付額は、他の所得・控除や源泉徴収税額などを含めた申告全体で決まります。
「総所得金額等」は年収と同じではありません
判定に使うのは年収そのものではなく、税法上の「総所得金額等」です。給与だけの場合も、給与の収入金額から給与所得控除などを考慮した所得を確認します。年末調整済みの源泉徴収票では「給与所得控除後の金額」が参考になります。
ただし、給与以外にも所得がある場合や、複数の勤務先から給与を受けている場合などは、源泉徴収票1枚だけで判定できないことがあります。分離課税の所得などを含む場合も、総所得金額等の範囲を確認する必要があります。税金がかかる所得を計算するための「所得控除後の金額」とも同じではありません。
所得が分からない場合は、給与の源泉徴収票や各種所得の資料をそろえ、確定申告書等作成コーナーの計算結果などで確認してください。
家族の医療費も確認しましょう
医療費控除では、自分の医療費だけでなく、自分が支払った、生計を一にする配偶者や親族の対象医療費も合わせて確認できます。家族の医療費だからといって、自動的に誰でも申告できるわけではありません。誰が支払ったかを確認し、同じ医療費を複数人が重複して申告しないようにします。
例えば、自分が支払った本人の医療費6万円と、生計を一にする家族の対象医療費3万円を合わせると9万円です。上の計算例と同じく、総所得金額等150万円・補填金0円であれば、控除額は1万5,000円になります。
保険金や高額療養費は差し引きます
医療費を補填するために受け取った保険金や、高額療養費などがある場合は、対応する医療費から差し引きます。窓口での助成などにより実際に支払っていない金額も、支払額として含めないようにします。
例えば、対象医療費9万円に対して補填金が2万円あり、差引後が7万円になった場合、総所得金額等150万円の基準額7万5,000円を超えないため、通常の医療費控除額は生じません。
補填金が対象の医療費を上回る場合、上回った分を別の医療費から差し引くことはありません。どの医療費に対する給付か分けて確認しましょう。詳しくは医療費控除の明細書の書き方をご覧ください。
10万円以下かどうかを判断する前に確認したいこと
- 対象年の支払いか:その年の1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費を確認します。
- 控除の対象か:治療などのための費用か、個別の内容を確認します。すべての支払いが対象になるわけではありません。
- 家族の分を含められるか:自分が支払った、生計を一にする家族の対象医療費を確認します。
- 保険金などを差し引いたか:対応する医療費ごとに確認します。
- 所得を確認したか:年収と総所得金額等を混同しないようにします。
領収書などの整理には、無料の医療費整理ノートを使えます。ノートは医療費控除額を自動確定するものではありません。出力するCSVは国税庁の医療費集計フォームとは別形式で、e-Taxに直接取り込むためのものではありません。
よくある質問
医療費が10万円ちょうどなら控除は受けられませんか?
総所得金額等が200万円未満で、補填金を差し引いた対象医療費がその5%を超えれば、控除額が生じます。例えば所得150万円・対象医療費10万円・補填金0円の場合、控除額は2万5,000円です。
年収が200万円未満なら基準は必ず5%ですか?
判定に使うのは年収ではなく、総所得金額等です。給与以外の所得も含めて確認する必要があります。
会社員でも医療費控除を受けられますか?
会社員の方も、要件を満たせば確定申告によって医療費控除を受けられます。年末調整を受けた方は、源泉徴収票なども用意して申告内容を確認しましょう。
所得税がかかっていなくても、控除額はそのまま戻りますか?
いいえ。医療費控除額は税額の還付額ではありません。所得税の還付があるかは、源泉徴収などですでに納めた税額や申告全体の計算によります。住民税の取扱いも含め、状況に応じて確認してください。
市販薬のセルフメディケーション税制とは違いますか?
別の制度です。一定の要件を満たす方が対象医薬品を購入した場合の特例で、通常の医療費控除と同じ年に両方を受けることはできません。対象や計算方法を確認し、いずれを適用するか判断します。
まずは資料を整理してみましょう
医療費が10万円を超えていなくても、所得や家族の医療費によっては控除を受けられます。領収書や医療費通知、保険金の資料を集め、対象となる金額を確認してみましょう。
- 自分で進める:医療費整理ノート、医療費控除の明細書の書き方
- スマホで申告する:医療費控除をスマホで申告する手順
- 迷う点を相談する:確定申告について相談する
- 申告を依頼する:対応範囲と料金
申告依頼は、準備された帳簿・集計を基本としています。資料整理や記帳修正などが必要な場合は、資料と作業量に応じて個別にお見積りします。
確認した主な資料:所得税法第73条、国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき、医療費控除に関する手続、医療費通知に関するQ&A。