製造業の月次採算

製造業の製品別採算を月次で見る|材料費が上がったときの確認順

公開:2026年10月23日 / 執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)

全社の売上総利益が減ったとき、いきなり「値上げが必要」とは決められません。どの製品で、販売数量・販売単価・材料の使用量・評価単価の何が変わったのかを分けて確認します。

この記事では、1製品の月次採算を、販売記録・製造記録・材料の払出記録・会計帳簿へつなぐ順番を説明します。次の数値と会社は架空です。製造原価の範囲、仕掛品・製品在庫の評価、配賦方法は会社ごとに確認が必要です。

図1 4種類の資料を同じ製品・同じ月でつなぐ
01販売台帳製品コード
販売数量・単価
02製造日報完成数量
作業・歩留まり
03材料払出台帳使用数量
対象製品
04在庫・会計記録評価単価
原価・残高
製品別の月次採算表売上と対応する原価を並べ、未配賦額・仕掛品・製品在庫を別に示す

製品コード、対象月、税抜・税込、数量の単位をそろえます。直接追えない製造経費を無理に全額配賦せず、未配賦額を別に表示します。

架空例:売上が同じでも、材料費が50万円増える

製品Aを前月も当月も100個販売した例です。販売単価は1個10万円。売上・売上原価は同じ月の販売100個に対応します。説明を簡単にするため、返品・値引き、仕掛品・製品在庫の増減はなく、外注加工費とその他の製造原価は変わらないものとします。

単位:万円(税抜)

製品A・販売100個分前月当月増減
売上高1,0001,0000
材料費400450+50
外注加工費2002000
その他の製造原価1001000
売上原価700750+50
売上総利益300250△50
売上総利益率30.0%25.0%△5.0ポイント

売上高は変わらず、材料費の増加と同額だけ売上総利益が減っています。ただし、帳簿の材料費が増えたことだけでは購入単価の上昇と使用量の増加を区別できません。払出数量と、適用した材料の評価単価を確認します。

図2 材料費の増加50万円が、粗利へ与える影響単位:万円(税抜)
前月の売上総利益300
→材料費 +50使用量は同じ
評価単価が上昇
当月の売上総利益250

売上高は両月とも1,000万円です。材料費400万円→450万円、外注加工費・その他製造原価は同額という架空の前提です。

前月 200kg × 2万円/kg = 400万円当月 200kg × 2.25万円/kg = 450万円差額 200kg × 0.25万円/kg = 50万円

この仮定では、材料費の増加50万円は使用量ではなく評価単価の差で説明できます。仕入請求書の単価が上がったことと、当月の払出評価単価が上がったことは同義ではありません。 在庫の評価方法と払出記録を照合してください。

月次で確認する4つの順番

  1. 比較の前提をそろえる。 製品コード、対象月、販売数量、返品・値引き、売上と原価の対応を確認します。未完成品や売れ残った製品の原価を、販売済み製品の原価へ混ぜません。
  2. 材料の「量」と「単価」を分ける。 製造日報・材料払出台帳で使用数量と歩留まりを確認し、仕入伝票・在庫台帳で評価単価を確認します。代替材料、規格変更、廃棄・再加工も記録します。
  3. 製品別合計と会計を照合する。 製品別の材料費・外注加工費・その他製造原価の集計を、月次試算表や原価計算資料へつなぎます。仕掛品・製品在庫と未配賦額を別に示し、差を理由不明のまま埋めません。
  4. 次の行動を決める。 評価単価が上がったなら仕入条件と見積単価、使用量が増えたなら歩留まり・不良・再加工、販売単価が下がったなら値引きと契約条件を調べます。担当者と確認日を決めて、翌月に結果を見ます。

中小企業庁の採算可視化の取組事例集には、商品ごとに売上と原価を毎月集計する製造業の例があります。本記事の架空例は、その企業の実績値ではありません。

よくある質問

製品別の原価が全部分からない場合、始められませんか?

主要製品から、販売数量、直接確認できる材料・外注加工費を同じ期間で集められます。未配賦の製造経費は別に示し、その表を会計上の売上総利益と同一視しないでください。集計範囲を毎月そろえることが大切です。

仕入単価が上がった月に、製品原価も同額上がりますか?

必ずしも同じ月・同額ではありません。以前に仕入れた材料の在庫、適用する評価方法、当月に払出した数量、仕掛品・製品在庫を確認します。

粗利率が低い製品をすぐに止めるべきですか?

粗利率だけで決めません。売上総利益の金額、個別の追加対応費、設備や人員の稼働、取引先との関係、契約条件を確認します。得意先別採算の記事も参考にしてください。

月次採算を、見積りと経営判断へつなぐ

最初から全製品の精密な原価計算を目指す必要はありません。利益への影響が大きい製品を一つ選び、販売・製造・材料・会計の記録がつながるかを確認します。数値が変わった理由と、まだ分からない部分を分けて、次の見積りや仕入条件の検討に使います。

岡田健志公認会計士・税理士事務所では、現在の月次試算表と製造・販売資料から、続けられる採算管理の方法を一緒に整理します。ご相談の際は、対象製品、比較したい月、販売数量・材料払出・製品在庫をどこまで把握できるかをお知らせください。支援範囲と料金は着手前にご案内します。

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執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)。資料確認日:2026年10月23日。会社・製品・数値は架空です。実際の製品別採算は、原価計算方法、在庫・仕掛品の増減と会計帳簿との対応を確認して判断します。

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