税務調査
税務調査で外注費が給与と判断されるのはなぜ?区分の基準と5つの確認点
結論:外注費か給与かは、契約書や請求書の名称だけでは決まりません。実際の働き方が、自己の計算と責任で仕事を完成させる独立した事業なのか、会社の指揮監督を受けて労務を提供する働き方なのかを、個々の事実関係から判断します。
税務調査で給与と判断されると、給与としての源泉徴収に加え、外注費として控除していた消費税の見直しが必要になることがあります。業務委託契約書を作るだけでなく、契約内容と日々の運用を一致させることが重要です。
「個人へ外注費を払っているが、税務調査で給与と言われないか」「業務委託契約書と請求書があれば問題ないのか」。継続的に個人へ仕事を依頼している会社では、確認しておきたい論点です。
外注費と給与では、源泉所得税と消費税の取扱いが異なります。特に、同じ人が会社の指定した時間・場所で働き、具体的な指示を受け、時間に応じた報酬を受け取っている場合は、勘定科目を外注費としていても、実態の確認が必要です。
なぜ税務調査で外注費と給与の区分を確認するのか
源泉所得税の取扱いが異なる
給与を支払う会社は、原則として支払時に所得税等を源泉徴収し、期限までに納付します。外注先への支払は、相手が個人であっても、すべてが源泉徴収の対象になるわけではありません。原稿料、講演料、税理士等の報酬など、所得税法で定められた報酬・料金等に該当するかを確認します。
したがって、「外注費なら源泉徴収は不要」と一律に扱うことも、「個人への支払なら必ず源泉徴収する」と扱うことも正確ではありません。まず給与か外注かを判定し、外注であれば報酬の種類に応じて源泉徴収の要否を確認します。
参考:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」、国税庁「No.2793 報酬・料金等の源泉徴収義務者」
消費税の仕入税額控除が異なる
事業者が事業として外部から役務の提供を受けた場合は、原則として課税仕入れに該当します。一方、給与・賃金は消費税の課税仕入れに含まれません。
外注費として仕入税額控除をしていた支払が給与と判断されると、その控除を見直す必要があります。もっとも、外注であっても仕入税額控除を受けるには、適格請求書等保存方式の要件や経過措置を別に確認しなければなりません。
参考:国税庁「No.6355 課税売上げと課税仕入れ」、消費税法基本通達11-1-2
数値例:外注費6,600千円を給与と判断された場合
次の条件だけを置いた単純な例です。
- 個人への支払:毎月550千円(税込)、年間6,600千円
- 会社は消費税の一般課税
- 外注先は適格請求書発行事業者
- 会社は全額を課税売上げに対応する課税仕入れとして処理
外注費として控除した消費税額は、年間600千円(6,600千円×10/110)です。この支払が給与と判断されれば、給与は課税仕入れではないため、600千円の仕入税額控除を見直すことになります。
これとは別に、給与としての源泉所得税を計算します。源泉徴収税額は、支払額だけでなく、支給方法、扶養控除等申告書の提出状況などで変わるため、外注費の一定割合をそのまま源泉税とする計算ではありません。
外注費か給与かを判断する5つの確認点
国税庁は、大工・左官・とび職等について、契約だけで区分できない場合の判断要素を公表しています。建設業向けの通達ですが、契約の名称ではなく実態を総合的に見ることが分かる資料です。次の5項目のうち、一つだけで自動的に結論が決まるものではありません。
1.本人以外の人が代わりに仕事をできるか
外注先が自ら補助者や代替者を手配し、その費用も負担できる場合は、独立した事業であることを示す事情になります。
反対に、会社が指定した本人でなければ業務を行えず、欠勤時の代替者も会社が手配する場合は、給与と判断する方向の事情になり得ます。ただし、専門性や秘密保持のために担当者を限定することもあるため、この一点だけでは決まりません。
2.時間や場所についてどの程度拘束を受けるか
始業・終業時刻を会社が指定し、勤務時間や日数に応じて報酬を計算している場合は、労務提供の対価という性格が強くなります。
一方、納期までに成果物を完成させればよく、作業時間や場所を外注先が決め、作業時間が増えても報酬が増えない契約は、請負・外注の方向の事情になります。現場の安全管理や他工程との調整に必要な時間指定まで、直ちに雇用上の拘束になるわけではありません。
3.仕事の内容や方法について具体的な指揮監督を受けるか
会社が完成物の仕様や期限を示すことは、通常の発注でも行われます。問題になるのは、日々の作業手順、担当箇所、順番などを会社が具体的に決め、その指示に従って働いているかです。
外注先が仕様を満たすための工程・方法を自ら判断し、成果について責任を負っている場合は、独立した事業の方向の事情になります。
4.仕事が完成しなくても、働いた時間分の報酬を請求できるか
完成前に成果物が失われ、やり直しになった場合でも、それまで働いた時間分の報酬を請求できるなら、給与の方向の事情になります。
反対に、仕事が完成するまで報酬を請求できず、やり直しの費用や時間を外注先が負担するなら、外注先が事業上の危険を負っていると考えやすくなります。準委任など、仕事の完成を契約目的としない業務では、契約内容と役務提供の実態から別途判断します。
5.材料・機械・用具を誰が負担するか
主要な材料や機械を外注先が用意し、その購入・修理費も負担している場合は、独立性を示す事情になります。会社の設備・アカウント・備品を使い、外注先が事業用資産をほとんど負担していない場合は、給与の方向の事情になり得ます。
ただし、情報管理上、会社のパソコンやシステムを使わせる必要がある業務もあります。国税庁の事例でも、材料や用具を支払者が供与している一事だけで給与とは判断していません。
参考:国税庁「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」、同「留意点について」
契約書・請求書・開業届だけでは決まらない
業務委託契約書を作り、毎月請求書を受け取り、「外注費」で記帳していても、それだけで外注になるわけではありません。反対に、書面契約がないから直ちに給与になるわけでもありません。
国税不服審判所の公表裁決には、雇用契約書がなくても、職人の労務が独立した事業とは認められず、基本賃金や時間外勤務手当の支払基準などから給与と判断された事例があります。
また、外注先が開業届を提出している、確定申告をしている、他社とも取引している、といった事情は判断材料にはなりますが、自社との個別の取引実態を置き換えるものではありません。
調査前にそろえておきたい資料
外注先ごとに、契約と実際の運用が一致しているかを確認します。
- 業務委託契約書、発注書、仕様書、見積書
- 請求書、振込記録、報酬の計算根拠
- 納品物、検収記録、修正・やり直しの記録
- 作業日報、入退場記録、チャット・メールの指示記録
- 代替者・補助者を利用した記録と、その費用の負担者
- 材料、機械、パソコン、アカウント等の所有者と費用負担
- 事故、瑕疵、再作業、損害に関する責任分担
- 外注先が適格請求書発行事業者かどうかと、保存した請求書
契約書に「時間・場所は自由」と書いてあっても、実際には社員と同じシフトで働いているなら、説明は一致しません。逆に、現場への入場時間や情報セキュリティの制約には合理的な理由があることもあります。形式だけを整えるのではなく、実際の業務の流れを説明できる資料が重要です。
社会保険・労働法上の判断は別に確認する
税務上の外注費・給与の区分と、労働基準法上の労働者性、社会保険の被保険者に当たるかどうかは、根拠となる制度と判断目的が同一ではありません。
税務調査で給与と判断されたことだけで、他制度の結論が自動的に決まるとは限りません。一方、働き方の実態は共通するため、税務上の区分に疑問がある場合は、社会保険・労務の取扱いも社会保険労務士等と確認することが望まれます。
よくある質問
Q.業務委託契約書があれば、外注費として認められますか?
A.契約書は重要な資料ですが、それだけでは決まりません。代替性、時間的拘束、指揮監督、仕事が完成しない場合の報酬請求、材料・用具の負担など、実際の働き方を総合的に確認します。
Q.毎月同じ金額を払っていると、給与になりますか?
A.定額払いは判断材料の一つになり得ますが、それだけで給与とは決まりません。成果物、責任範囲、作業方法の裁量、再作業の負担など、他の事情と合わせて判断します。
Q.外注先がインボイス登録していれば、給与と判断されませんか?
A.適格請求書発行事業者の登録は、消費税の仕入税額控除に関する制度です。給与か外注かは、契約と役務提供の実態から判断するため、登録の有無だけで区分は決まりません。
Q.給与と判断されたら、外注費の全額が損金不算入になりますか?
A.給与と判断されたことだけを理由に、支払額の全額が直ちに損金不算入になるとは限りません。まず問題になるのは、給与としての源泉徴収と、消費税の仕入税額控除です。架空・水増し、役員への支払、過大な金額など別の問題があれば、法人税の損金算入も個別に検討します。
まとめ:契約名ではなく、仕事の任せ方を確認する
外注費と給与の区分は、「業務委託契約書があるか」「請求書を受け取っているか」だけでは決まりません。誰が時間と作業方法を決め、仕事が完成しない場合の負担を誰が負い、材料や用具を誰が用意しているかを、実態に沿って確認します。
税務調査の連絡を受けてから契約書だけを作り直すのではなく、平時に外注先ごとの契約・発注・検収・支払方法を整理しておくことが大切です。
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※この記事は一般的な税務上の取扱いを説明したものです。給与・外注の区分、源泉徴収、消費税、社会保険等は、契約と実際の働き方を確認して個別に判断します。