税理士・会計事務所のAI活用に

日税連のAI・クラウド活用ガイドラインを簡単に整理|税理士事務所は何をすればよい?

公開:2026年10月19日 / 執筆:岡田健志(公認会計士・税理士)

生成AIに顧問先の資料を入力してよいのか。個人向けの有料プランでもよいのか。これまで、税理士事務所での利用を判断しにくい場面がありました。

日本税理士会連合会は2026年9月、「税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドライン」Ver1.0を公表しました。一定の実務上の指針が示された一方、内容を実際の運用にどう当てはめるかは分かりにくいところがあります。そこで、小規模な税理士事務所がまず押さえたい点を簡単にまとめます。日税連の案内(会員専用)

まず、要点は四つ

  1. 顧問先の財務・税務情報や個人情報を扱うなら、基本はビジネス向けプラン。事務所が管理できる環境を選びます。
  2. DPA(データ処理契約)を締結・確認する。学習利用、保存・削除、利用者の権限も確認します。プラン名だけでは判断できません。
  3. 個人向けプランのチャットには顧問先情報を入れない。公開情報や一般論の調査など、事務所が認めた用途に限ります。
  4. AIの出力は税理士が確認する。条文・通達、OCRの読取値、顧問先へ渡す文章をそのまま採用しません。

マイナンバーを含む情報は別扱いです。ガイドラインは汎用AIへの入力を原則禁止としています。番号を含むデータを確実に取り除くか、番号を扱う専用システムを使います。

ChatGPTとClaude、どのプランを選ぶ?

顧問先情報を含む業務でチャット画面を使うなら、私は次を最初の比較対象にします。これは日税連が特定の製品を推奨しているという意味ではなく、ガイドラインの条件に沿って選ぶための目安です。

サービス最初に検討するプラン確認すること
OpenAIChatGPT Business事務所に適用されるDPA、学習利用、保存・削除、管理者・外部連携の設定
AnthropicClaude Team商用利用規約に組み込まれるDPA、学習利用、保存・削除、管理者・外部連携の設定

両プランとも、2026年10月19日時点の公式案内では実利用者2名以上が対象です。OpenAIのプラン案内/Claudeのプラン案内/AnthropicのDPA案内

条件を整えたビジネス向けチャットでは、事務所が定めた範囲で顧問先情報を扱うことを検討できます。一方、ChatGPT PlusやClaude Proなど個人向けプランのチャットでは、顧問先名、試算表、申告書、相談内容などを入力しない運用にします。「有料だから大丈夫」とは判断しません。

1名事務所なら、APIを別に契約する方法も

実利用者が1名の場合は、事務所としてOpenAI APIまたはAnthropic APIを別途契約し、DPAの適用を確認して利用する方法もあります。個人向けのChatGPT PlusやClaude Proを契約していても、APIは別のサービス・契約・課金です。個人プランを経由させるだけでビジネス向けの条件に変わるわけではありません。OpenAIのDPA/AnthropicのDPA

例えばClaude CodeをCLI(ターミナル)で使うなら、個人向けプランでログインする方法と、事務所のAnthropic APIキーで利用する方法を区別します。顧問先情報を扱う用途では後者の契約・設定を確認します。CLIを使うだけで情報の外部送信がなくなるわけではないため、読み込ませるファイルの範囲にも注意が必要です。Claude Codeの認証方法

つまり、個人向けチャットは一般情報の調査用、顧問先情報を扱う業務はビジネス向けチャットまたは商用APIと使い分けるのが分かりやすい整理です。

導入前に確認すること

顧問先情報を扱う前に、最低限、次を記録します。

  • 契約:事務所が契約主体か。利用する製品・プラン・APIにDPAが適用されるか。
  • 設定:学習利用、保存期間と削除方法、外部連携、利用者の権限はどうなっているか。
  • 顧問先への対応:AI等への入力をどう説明するか。ガイドラインが強く推奨する書面での同意をどう取得するか。
  • 確認担当:AIの回答、OCRの読取値、顧問先へ渡す成果物を誰が原資料と照合するか。

DPAを確認しても、顧問先への説明や個人情報保護法上の検討がすべて不要になるわけではありません。税理士法上の守秘義務と、個人データの委託・第三者提供の整理は、扱う情報とサービスの実態に応じて確認します。税理士法/個人情報保護委員会Q&A

まずは事務所で使っているAI・クラウドサービスを一覧にし、「何を入力するか」「どの契約で使うか」「誰が結果を確認するか」を決める。ガイドラインを実務に落とし込む第一歩は、ここからだと思います。

参照資料:日本税理士会連合会「税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドライン」Ver1.0(2026年9月25日。日税連サイトは会員専用)。各社プラン・契約情報は2026年10月19日時点。実際に利用する契約と設定は導入時に確認してください。

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