生成AI × 会計事務所の実務
AIは「試すもの」から「仕事を任せるもの」へ
対話型AIとAIエージェントで広がる仕事のキャパシティ
生成AIは、単なる文章作成ツールではありません。いま、会社や事務所の仕事の進め方そのものが変わる転換点に来ています。
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生成AIは、質問に答えるだけの「相談相手」から、資料整理やファイル編集などの作業まで進める存在へ変わりつつあります。当事務所でも、まず目的と守るべきルールを整理し、小さな業務から実務への組み込みを進めています。
結論から言えば、生成AIの価値は「人を不要にすること」ではありません。これまで時間や人手の制約で着手できなかった仕事を実行可能にし、人が専門判断とお客さま対応に集中できる時間を増やすことにあります。
生成AIは「便利な検索窓」ではなくなりつつある
少し前まで、生成AIは「質問すると文章で答えてくれる便利なサービス」という位置づけでした。しかし現在は、複数の資料を読み比べ、論点を整理し、文章や表の下書きを作り、プログラムや自動処理の仕組みまで組み立てられるようになっています。
重要なのは、AIの回答を眺めて終わるのではなく、実際の業務フローの中に組み込むことです。例えば、請求書や領収書の整理、月次資料の下書き、過去資料の検索、定型文書の作成といった作業をAIとクラウドサービスにつなげれば、日常業務の流れそのものを短くできます。
対話するAIから、作業を進めるAIエージェントへ
当事務所では、対話に使うClaude・ChatGPTに加えて、Claude CodeとCodexという2つのエージェント型ツールも使っています。
Claude CodeはClaudeを活用して作業を進めるツールであり、CodexもOpenAIのモデルを実際の作業につなげるエージェントです。ClaudeやChatGPTと同じ階層で比較するものではありません。当事務所では、次の2つの使い方に分けて考えています。
つまり、「相談相手として使う段階」から、「一定の作業を任せ、人が確認する段階」へ進んでいます。目的はツール同士の優劣を決めることではなく、仕事の内容に合わせて、考える工程と実行する工程を適切につなぐことです。
AIで増えるのは「作業量」よりも「実行できる仕事の幅」
生成AIを使うと、文章を速く作れるようになります。しかし、本当の変化はそこだけではありません。従来であれば外注するか、専門担当者を置くか、時間がなくて諦めていた仕事にも着手しやすくなります。
- 大量の資料から必要な情報を探し、比較表を作る
- 毎月繰り返す資料作成やデータ整理を半自動化する
- 社内マニュアルや過去の議事録を検索しやすくする
- 簡単なプログラムや連携処理を作り、転記を減らす
- 新しい企画や改善案を短時間で複数検討する
つまり、AIによって増えるのは単なる処理件数だけではありません。「これまでできなかったことが、できるようになる」という意味で、会社や事務所のキャパシティが広がります。
当事務所で実際に行っている活用例
1.ホームページのデザインと画像を標準化
既存記事15本分のサムネイルを、すべて1280×720の同じサイズ・同じデザイン方針へ統一しました。AIは画像案の作成、サイズ調整、配置確認などの裏方に活用し、記事の専門的な内容と公開の判断は公認会計士・税理士本人が確認しています。
2.Google Driveのフォルダ構成を見直す
事務所内で使用するGoogle Driveについて、必要な資料へ迷わず到達できるよう、フォルダの分け方、ファイル名の付け方、保存場所を整理しました。顧問先情報の守秘とアクセス権限を前提に、AIには機密情報そのものではなく、整理のルールや構成案づくりを支援させています。
3.毎朝の予定確認を一つの画面にまとめる
スケジュールを毎朝確認できる予定管理用の専用画面を作成し、その日の予定、事前に準備すること、空き時間などをまとめて確認できるようにしました。予定を眺めるだけでなく、「今日、何を先に確認するか」まで整理できる仕組みにしています。
いずれも、税務や経営の判断をAIへ置き換えるためのものではありません。デザインのばらつき、資料を探す時間、予定確認の漏れといった周辺業務を整え、人が専門判断とお客さま対応に集中できる環境をつくるための活用です。
中小企業の経理・バックオフィスではどう使えるか
例えば、freee、Google Workspace、生成AIを組み合わせる場合、次のような流れが考えられます。
- 資料を集める
請求書・領収書・契約書などをGoogle Driveに集約する - AIで整理する
ファイル名、保存場所、内容の要約、確認事項の候補を整理する - 会計処理につなげる
freeeへの登録候補や確認リストを作り、人が内容を確定する - 月次報告を作る
月次の数字から変化点を抽出し、報告資料の下書きを作る - 経営判断に使う
公認会計士・税理士が数字を確認し、経営者と改善策を検討する
AIだけで会計や税務が完結するわけではありません。しかし、資料の収集・整理・下書きにかかる時間を減らせれば、人が数字の意味を考え、次の一手を話し合う時間を増やせます。
専門家がAIを使うからこそ、守るべき線がある
生成AIは便利ですが、使い方を誤ると、誤った回答、情報漏えい、責任の所在が曖昧になるといった問題も起こります。当事務所では、少なくとも次の点を前提に活用しています。
- 税務・会計の最終判断は人が行う:AIの回答をそのまま申告や助言に使いません。
- 機密情報を必要最小限にする:顧問先データは原則として匿名化し、利用サービスの契約条件や学習利用の設定を確認します。税理士法上の守秘義務を前提に、入力してよい情報と扱わない情報を事前に決めます。
- 根拠資料を確認する:法令、通達、契約書、原資料などに戻って確認します。
- 小さく始めて検証する:いきなり全社導入せず、失敗しても影響の小さい業務から試します。
無駄な手作業を減らし、人が判断・対話・改善に使える時間を増やすことが目的です。
いま動く会社と、様子を見続ける会社の差
生成AIは変化が速く、「もう少し落ち着いてから導入しよう」と考えたくなります。しかし、完璧な正解が出るまで待っていると、実務で試行錯誤した経験が蓄積されません。
今すぐ大規模なシステム投資をする必要はありません。まずは、毎週繰り返している資料作成、検索、転記、定型メールなどから一つ選び、AIでどこまで短縮できるか試す。それだけでも十分な第一歩です。
この変化は一時的な流行ではなく、パソコンやインターネット、クラウドサービスが仕事に入ってきたときと同じように、働き方の前提を変える可能性があります。だからこそ、当事務所自身が先に使い、失敗も含めた知見を顧問先へ還元していきたいと考えています。
よくあるご質問
- Q.生成AIを導入すれば、経理担当者は不要になりますか?
- A.いいえ。AIは収集・整理・下書きを支援できますが、取引の背景を理解した判断、例外対応、社内調整、最終確認は人の役割です。
- Q.ChatGPTとClaudeは、どちらを選べばよいですか?
- A.用途や社内環境によって変わります。最初から両方の有料プランを契約する必要はありません。まずは無料プランまたは一つのサービスで、実際の業務を一つ試し、長文処理や社内ツールとの連携など必要性が明確になってから追加を検討する方法が現実的です。
- Q.Claude CodeやCodexは、ClaudeやChatGPTと何が違いますか?
- A.ClaudeやChatGPTは主に対話しながら考えを整理するために使います。一方、Claude CodeやCodexは、そのAIの能力をファイル編集、コード実行、ブラウザ操作などの具体的な作業につなげるエージェント型のツールです。プログラマーでなくても使える場面はありますが、最初はバックアップを取り、影響範囲の小さい作業から始めるのが安全です。
- Q.顧問契約の中でAI活用について相談できますか?
- A.はい。当事務所の税務・財務顧問のお客さまは、AI活用に関する日常的なご相談や改善案の検討を顧問報酬の範囲内でお受けしています。個別システムの開発、大規模な初期設定、継続的な運用代行などは、内容に応じて別途お見積りします。
まとめ
生成AIは、作業を速くするだけでなく、これまで着手できなかった仕事を実行可能にします。大切なのは、対話型AIとAIエージェントを目的に応じて使い分け、人が最終判断と責任を担うことです。当事務所は自ら実務で試し、得た知見を顧問先の改善へ還元します。
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